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札幌家庭裁判所 昭和58年(家ロ)2001号 審判 1983年6月07日

申立人 中田清子

事件本人 中田一三

未成年者 中田三枝子

主文

上記当事者間の本案審判が確定するまで、事件本人の未成年者中田三枝子に対する親権の職務執行を停止し、申立人をその職務代行者に選任する。

事件本人は、申立人の前項の職務執行を妨害してはならない。

理由

申立人は主文同旨の審判を求めるので、検討するに、本案記録によれば、申立人と事件本人は昭和四六年四月八日婚姻し、同年七月五日長男真男を、昭和四七年六月二九日長女三枝子(本件の未成年者)をそれぞれもうけたが、昭和四八年八月から別居し、その後昭和五三年五月八日に至り上記二児の親権者をいずれも事件本人(父)と定めて協議離婚したこと、申立人は別居後二児のうち未成年者のみを引取つてその監護養育に当り、離婚後も事件本人と格別のトラブルもなくそのまま養育を続けて現在に至つたが、昭和五七年八月下旬ころ事件本人から突然電話で未成年者を引取りに行く旨一方的に申し渡されたことから、同月三〇日札幌家庭裁判所に親権者変更の調停を申し立てたこと、しかし事件本人は四回にわたつて開かれた調停期日に一度も出頭せず、同事件は昭和五八年六月二日調停不成立により審判手続に移行したことが認められる。

ところで、本件の疎明資料によれば、未成年者は乳児期から既に一〇年近い期間申立人一人の手で養育され、この間心身とも健康かつ順調に生育し、母子関係は良好であり、現在の生活環境に十分適応していること、事件本人は未成年者を今直ちに引取つても実父母ら親族の相当高度の協力なくしてはこれを養育できる状況にないが、その協力をとりつけたふしは全然窺えないこと(むしろ一時の感情にかられ申立人を威嚇する手段として行動している疑いが濃厚である。)、さらに事件本人は自分が親権者であることを奇貨として本案事件係属中の昭和五八年五月三一日ころ○○町役場に出向いて敢えて未成年者の住所異動(同町からの転出届)の手続をしたのみか、来る同年六月一〇日には未成年者の在籍する小学校からの転校手続を断行するかの如き旨を公言し、上記養育の現状を全く無視して未成年者の引取りを強行しようとしていること、このため申立人は同町から未成年者の児童扶養手当の支給を打切られる危機にさらされており、申立人ら母子の生活侵害の事実すら発生していること、事件本人は直情径行で粗暴な性癖を有し、未成年者の乳児期にそのみけんに縫合の医療措置を要するほどの怪我をさせたこともあること、未成年者は現在事件本人の許に引取られることを望んでいないことが認められ、以上の疎明事実を総合すると、本案審判の執行を保全し事件の関係人の急迫の危険を防止するため、事件本人の親権者として職務執行を停止させ、かつ、未成年者の養育の現況を本案審判確定まで維持保存する必要があると認めることができ、その停止期間中は申立人をその職務代行者に選任するのが相当である。よつて、当裁判所は参与員○○○○及び同○○○○の各意見を聴いたうえ、本件保全処分の申立を認容することとし、家事審判法一五条の三、同規則七二条、七四条、五二条の二を適用して、主文のとおり審判する。

(家事審判官 田中宏)

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