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札幌家庭裁判所室蘭支部 昭和58年(少)290号 決定 1983年6月20日

少年 K・D(昭四三・一〇・三生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、

第一、単独又は別表記載の各共犯者と共謀のうえ、同表記載の日時、場所において、同表記載の各被害者所有にかかる各被害品を窃取し

第二、A、Bと共謀のうえ、昭和五八年二月一〇日午前一一時ころ、金品窃取の目的で室蘭市○○○町×丁目×番××号C子方裏口ドアを同所付近にあつた合鍵で開け、同所から屋内に侵入したうえ、同女方において、同女所有にかかる現金三万六〇〇〇円及び財布二個(時価合計八〇〇円相当)を窃取し

第三、A、Bと共謀のうえ、昭和五八年二月一〇日午前一一時三〇分ころ、金品窃取の目的で室蘭市○○○町×丁目×番×号D方茶の間ガラス戸を開け、同所から屋内に侵入したうえ、同人方において、同人所有にかかる現金一三万五〇〇〇円及び財布一個(時価一〇〇〇円相当)を窃取し

たものである。

なお、本件送致事実中、少年がAと共謀のうえ、

一  別表7記載の日時、場所において、E子所有にかかるコハク石及び宝石ケース各一個を窃取し

二  同表12記載の日時、場所において、F所有にかかるバツク一個、貯金通帳二冊、定期証書一枚及び国民年金手帳一冊を窃取し

たとの事実については、これらの各事実を認めるに足るだけの証拠が存しないので、いずれも非行なしと判断する。

(法令の適用)

上記第一の別表1、2の各事実は、刑法六〇条、二三五条に触れ、同3ないし17の各事実は同法六〇条、二三五条(ただし、同13は同法二三五条)に、上記第二、第三の各事実のうち、住居侵入の所為は同法六〇条、一三〇条に、同窃盗の所為は同法六〇条、二三五条にそれぞれ該当する。

なお、少年は、上記第一の別表1、2の各非行当時は一四歳未満であつたが、検察官から事件が送致され、当裁判所がこれを受理した時は既に一四歳に達していたものである。

ところで、少年法三条二項は、現に一四歳未満の少年に対しては人格の成熟がなお十分でなく、かつ、非行性が矯正しやすいところから、保護者の意思を尊重して年少少年にふさわしい児童福祉機関による措置を優先させることとしたものと解するのが相当である。また、触法少年につき、一四歳に達した後も児童福祉機関による先議を必要とすれば、虞犯少年との権衡を欠くことになるし、少年法二七条の二第一項においても触法少年と虞犯少年とを区別していないのである。

以上によれば、現に一四歳に達している少年に対しては、都道府県知事等から事件の送致がなくても、家庭裁判所はその少年に対して審判権を有するものというべきである。

(処遇の理由)

本件各非行は、少年が中学校入学後、窃盗、シンナー吸入、不良交友、家出、長期間の怠学などの各種非行を繰り返すうち、ゲーム代等欲しさに、単独又は他の少年と共謀のうえ、多数回にわたり空巣等を、その間何度も補導されたにもかかわらず、次々と敢行してきたもので、その動機、手口、態様はいずれも悪質かつ大胆なものである。

また、少年は、限界級の知能(IQ=七三)で、全く学習意欲に欠け、現在中学校にはほとんど登校していないばかりか、全体的に未熟かつ自己中心的で、欲求のおもむくままに行動しているところ、非行仲間との結びつきも強く、窃盗は常習化、固着化しており、罪障感も極めて稀薄であることなどからすると、早急に規範意識の高揚を図るとともに基本的な生活習慣を身につけさせなければ、再非行の危険性は極めて高いといわなければならない。

ところで、少年の保護者は、非行仲間との接触防止等の理由で少年に対し登校しなくてもよいとする一方、家庭では放任的であるなど、少年に対する指導、監督能力はほとんど期待できない現状にあり、要保護性の極めて高い少年に対し在宅で矯正を図ることは極めて困難であるといわざるをえない。

以上の諸事情を考慮すると、少年を初等少年院に送致して、専門的見地から規範意識の高揚を図るとともに、義務教育課程を履修させ、かつ、集団生活を通して規則正しい健全な生活習慣を養成することが必要である。

よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 揖斐潔)

別表<省略>

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