札幌高等裁判所 事件番号不詳〔2〕 判決
主文
被告人等を各懲役五年に処する。
被告人金子貞男、同岸本信保、同山後哲夫、及び同高山英昭に対し原審における未決勾留日数中各六十日を被告人中川修に対し同三十日を右各本刑に算入する。
訴訟費用は全部被告人等の連帶負担とする。
理由
被告人金子貞男は海軍一等兵曹、同岸本信保及び同山後哲夫の兩名は海軍二等兵曹、同高山英昭は海軍上等兵曹、同中川修は陸軍特別幹部候補生としていづれも戰時中軍籍にあつたが、終戰後日本共産党の行動が日本の再建を妨害していると考へて、かねてから反共運動に従事していたものであるが、被告人等は氏名不詳の同志一名と共に昭和二十二年十一月十三日夜札幌市南五条西三丁目の被告人山後哲夫方で右運動に資する目的のため、同市南三条西三丁目日本共産党北海道地方委員会事務所を襲つて同党の情報を蒐集することについて謀議しこれがため暴力を用ひるもやむをえないと考へここに右情報資料を強取しようと決意し共謀の上被告人金子貞男は木刀一振及び麻繩二筋を携へ高山英昭はマフラーで覆面し翌十四日午前一時頃相共に被告人山後哲夫方を出て前記委員会事務所に赴き氏名不詳の同志一名を見張のため階下に残して被告人等五名は三階の同事務所に侵入し、被告人金子貞男、同山後哲夫及び同高山英昭は事務所の宿直員西尾正二及び橫田茂の兩名の手足を麻繩にて縛りつけさらにその場にあつた布地、マフラー等で猿轡をはめ抵抗しようとする右西尾正二に対し被告人金子貞勇は手拳及び木刀で、被告人中川修は平手でそれぞれその頭部、顔面等を殴打して同人に約二週間の安静を必要とする右頭部筋膜下血腫、鼻骨部、左顔面部打撲傷、左眼球結膜下出血及び兩手根骨部擦過創を負はし、その間被告人中川修及び同岸本信保は右事務所内を物色して書類庫等から同委員会書記長西館仁保管の中央指令綴一册外書類印鑑等数十点を強取したものである。
(証拠説明省略)
法律によると、被告人等の判示所爲のうち、住居侵入の点は刑法第百三十条、第六十条に強盜致傷の点は同法第二百四十条前段第六十条に各該当するところ、住居侵入と強盜致傷とは手段結果の関係があるので、同法第五十四条第一項後段、第十条により重い後者の罪の刑に従ひその所定刑中有期懲役刑を選びその所定の刑期範囲内で処すべきところ、犯罪の情状憫諒すべきものがあるので、同法第六十六条、第七十一条、第六十八条第三号により、酌量減軽した刑期範囲内で被告人等を各懲役五年に処し、刑法第二十一条を適用して原審における未決勾留日数中被告人金子貞男、同岸本信保、同山後哲夫及び尚高山英昭に対しては各六十日を、被告人中川修に対しては三十日を右各本刑に算入すべく、訴訟費用は旧刑事訴訟法第二百三十八条に従ひ全部被告人等の連帶負担とする。
そこで主文のとおり判決する。(昭和二四年一〇月一日札幌高等裁判所第四部判決)