札幌高等裁判所 平成10年(ネ)291号 判決
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件控訴人、
同第一七二号事件被控訴人、同第一七四号事件被控訴人、
同第一七七号事件被控訴人(第一審原告)
X1
同所
同
X2
住所<省略>
同
X3
同所
同
X4
同所
同
X5
同所
同
X6
右二名法定代理人親権者父
X3
同母
X4
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件控訴人、
同第一七二号事件被控訴人、同第一七四号事件被控訴人、
同第一七七号事件被控訴人(第一審原告)
X7
同所
同
X8
住所<省略>
同
X9
同所
同
X10
同所
同
X11
右二名法定代理人親権者父
X9
同母
B
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件控訴人、
同第一七二号事件被控訴人、同第一七四号事件被控訴人、
同第一七七号事件被控訴人(第一審原告)
X12
住所<省略>
同
X13
同所
同
X14(以下、右一四名の控訴人兼被控訴人
(第一審原告)らを「第一審原告」という。)
第一審原告ら訴訟代理人弁護士
藤田美津夫
同
荒木健介
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七四号事件控訴人
(第一審被告)
Y1
住所<省略>
同
Y2
右二名訴訟代理人弁護士
小野塚聰
右訴訟復代理人弁護士
森越壮史郎
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件被控訴人
(第一審被告)
Y3
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件被控訴人、
同第一七二号控訴人(第一審被告)
Y4
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七二号事件控訴人
(第一審被告)
Y5
右三名訴訟代理人弁護士
山本隆行
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七七号事件控訴人
(第一審被告)
Y6
住所<省略>
同
Y7
住所<省略>
同
Y8
住所<省略>
同
Y9
右四名訴訟代理人弁護士
橋本智
住所<省略>
札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件被控訴人
(第一審被告)
Y10
住所<省略>
同
Y11
住所<省略>
同
Y12
住所<省略>
同
Y13
右四名訴訟代理人弁護士
伊東孝
同
水沼功(以下、右一三名の控訴人、被控訴人、
控訴人兼被控訴人(第一審被告)らを「第一審被告」という。)
主文
一 第一審原告らの控訴に基づき、原判決中第一審被告Y3、同Y10、同Y11、同Y12及び同Y13に対する請求を棄却した部分を次のとおり変更する。
1 第一審被告Y3及び同Y13は、次の第一審原告らに対し、連帯して、次の金員及びこれに対する平成八年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(一) 第一審原告X1に対し、五〇万円
(二) 同X2に対し、五〇万円
(三) 同X3に対し、一〇万〇六〇〇円
(四) 同X4に対し、一〇万〇六〇〇円
(五) 同X6に対し、一〇万〇六〇〇円
(六) 同X7に対し、一〇万〇六〇〇円
(七) 同X8に対し、一〇万〇六〇〇円
(八) 同X10に対し、四万七五〇〇円
(九) 同X11に対し、四万七五〇〇円
2 第一審被告Y10は、第一審原告らに対し、次の金員及びこれに対する平成八年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(一) 第一審原告X1に対し、五〇万円
(二) 同X2に対し、五〇万円
(三) 同X3に対し、九〇万円
(四) 同X4に対し、九〇万円
(五) 同X5に対し、五〇万円
(六) 同X6に対し、九〇万円
(七) 同X7に対し、九〇万円
(八) 同X8に対し、九〇万円
(九) 同X9に対し、五二万円
(一〇) 同X10に対し、四万七五〇〇円
(一一) 同X11に対し、四万七五〇〇円
(一二) 同X12に対し、五二万五〇〇〇円
(一三) 同X13に対し、五〇万二五〇〇円
(一四) 同X14に対し、五〇万円
3 第一審被告Y11及び同Y12は、次の第一審原告らに対し、連帯して、次の金員及びこれに対する平成八年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(一) 第一審原告X1に対し、五〇万円
(二) 同X2に対し、五〇万円
(三) 同X3に対し、一〇万〇六〇〇円
(四) 同X4に対し、一〇万〇六〇〇円
(五) 同X6に対し、一〇万〇六〇〇円
(六) 同X7に対し、一〇万〇六〇〇円
(七) 同X8に対し、一〇万〇六〇〇円
(八) 同X9に対し、一五万円
(九) 同X10に対し、四万七五〇〇円
(一〇) 同X11に対し、四万七五〇〇円
(一一) 同X12に対し、三五万円
(一二) 同X14に対し、二二万五〇〇〇円
4 第一審原告X5、同X9、同X12、同X13及び同X14の第一審被告Y3及び同Y13に対する各請求、右第一審原告らを除くその余の第一審原告ら(第一審原告X10及び同X11を除く。)の右第一審被告らに対するその余の各請求、第一審原告X1及び同X2の第一審被告Y10に対するその余の各請求、第一審原告X5及び同X13の第一審被告Y11及び同Y12に対する各請求、右第一審原告らを除くその余の右第一審原告ら(第一審原告X10及び同X11を除く。)の右第一審被告らに対するその余の各請求をいずれも棄却する。
二 第一審被告Y4に対する請求を棄却した部分についての第一審原告らの控訴を棄却する。
三 第一審被告Y1、同Y2、同Y4、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8及び同Y9の控訴をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、
第一審原告らと第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8及び同Y9との間で生じた控訴費用は右第一審被告らの負担とし、
第一審原告らと第一審被告Y4との間で生じた控訴費用は、一四分の一一を第一審原告らの、その余を第一審被告Y4の負担とし、
第一審原告らと第一審被告Y3及び同Y13との間で生じた訴訟費用については、第一、二審を通じ、第一審原告X1及び同X2との間で生じた費用の各三分の二を右第一審原告らの負担とし、第一審原告X3、同X4、同X6、同X7及び同X8との間で生じた費用の各九分の八を右第一審原告らの負担とし、第一審原告X5、同X9、同X12、同X13及び同X14との間で生じた費用全部を右第一審原告らの負担とし、その余を第一審被告Y3及び同Y13の負担とし、
第一審原告らと第一審被告Y10との間で生じた訴訟費用については、第一、二審を通じ、第一審原告X1及び同X2との間で生じた費用の各三分の二を右第一審原告らの負担とし、その余を第一審被告Y10の負担とし、
第一審原告らと第一審被告Y11及び同Y12との間で生じた訴訟費用については、第一、二審を通じ、第一審原告X1及び同X2との間で生じた費用の各三分の二を右第一審原告らの負担とし、第一審原告X3、同X4、同X6、同X7及び同X8との間で生じた費用の各九分の八を右第一審原告らの負担とし、第一審原告X9との間で生じた費用の一〇分の七を右第一審原告の負担とし、第一審原告X12との間で生じた費用の一〇分の三を右第一審原告の負担とし、第一審原告X14との間で生じた費用の二分の一を右第一審原告の負担とし、同X5及び同X13との間で生じた費用全部を右第一審原告らの負担とし、その余を第一審被告Y11及び同Y12の負担とする。
五 この判決一項1ないし3は、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 第一審原告ら
1 控訴の趣旨(札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件)
(一) 原判決中、第一審被告Y3、同Y4、同Y10、同Y11、同Y12及び同Y13に関する部分を次のとおり変更する。
第一審被告Y3、同Y4、同Y10、同Y11、同Y12及び同Y13は、第一審原告らに対し、連帯して、次の金員及びこれに対する平成八年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(1) 第一審原告X1に対し、一五〇万円
(2) 同X2に対し、一五〇万円
(3) 同X3に対し、九〇万円
(4) 同X4に対し、九〇万円
(5) 同X5に対し、五〇万円
(6) 同X6に対し、九〇万円
(7) 同X7に対し、九〇万円
(8) 同X8に対し、九〇万円
(9) 同X9に対し、五二万円
(10) 同X10に対し、四万七五〇〇円
(11) 同X11に対し、四万七五〇〇円
(12) 同X12に対し、五二万五〇〇〇円
(13) 同X13に対し、五〇万二五〇〇円
(14) 同X14に対し、五〇万円
(二) 訴訟費用は、第一、二審とも、同第一審被告らの負担とする。
(三) 仮執行の宣言。
2 控訴の趣旨に対する答弁(札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七二号事件、同第一七四号事件、同第一七七号事件)
(一) 本件控訴をいずれも棄却する。
(二) 控訴費用は、第一審被告Y1、同Y2、同Y4、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8及び同Y9の負担とする。
二 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9
控訴の趣旨(札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七二号事件、同第一七四号事件、同第一七七号事件)
(一) 原判決中第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9敗訴部分を取り消す。
(二) 第一審原告らの第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9に対する請求をいずれも棄却する。
(三) 訴訟費用は、第一、二審とも、第一審原告らの負担とする。
三 第一審被告Y3、同Y10、同Y11、同Y12、同Y13控訴の趣旨に対する答弁(札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件)
(一) 本件控訴をいずれも棄却する。
(二) 控訴費用は、第一審原告らの負担とする。
四 第一審被告Y4
1 控訴の趣旨(札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七二号事件)
(一) 原判決中第一審被告Y4敗訴部分を取り消す。
(二) 第一審原告らの第一審被告Y4に対する請求をいずれも棄却する。
(三) 訴訟費用は、第一、二審とも、第一審原告らの負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁(札幌地方裁判所平成一〇年(ワネ)第一七六号事件)
(一) 本件控訴をいずれも棄却する。
(二) 控訴費用は、第一審原告らの負担とする。
第二当事者の主張
当事者の主張は、次のように改めるほかは、原判決「事実」中の「第二 当事者の主張」のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決二二頁一行目の「市民生協」から同行目の「取得させる」までを「組合債を取得させ、市民生協が倒産したことにより組合債が無価値となり、」に改め、同二三頁六行目の次に行を改めて次のように加える。
「 なお、第一審被告Y3は、平成五年度以前は非常勤の理事であったが、市民生協の子会社であるa2株式会社の取締役の地位にあり、利益操作の相手方会社として粉飾決算に寄与したのであるから、市民生協の粉飾決算について十分な認識があったと推認される。したがって、第一審被告Y3は、平成五年以前も、適正な決算書が作成、公表されるよう監視し、粉飾決算を阻止すべき注意義務があった。」
二 同二三頁末行の「出席している。」の次に「第一審被告Y4は、平成七年五月以降常勤理事として粉飾決算に関与した。」を加え、同二四頁七行目の「報告をした。」の次に「市民生協の粉飾決算の内容は何ら複雑巧妙なものではなく、少なくとも重要な部分についてこれが粉飾決算であることを認識するためには、公認会計士のような専門知識は必要でなかった。また、市民生協が平成年代に入って粉飾をせずに毎年予算どおりの黒字を出し配当を行うことができると信じるものはないはずであり、監事らは粉飾を知って黙認していたというほかない。」を加え、同二五頁四行目の次に行を改めて次のように加える。
「 第一審被告Y4は、平成七年度の前は市民生協の参事(事業副本部長、企画室長、組活本部長)の地位にあったものであるが、遅くとも昭和六三年以降a2株式会社の監査役を務め、市民生協の粉飾決算を熟知していたのであるから、損害賠償責任を負うべきである。」
三 同二六頁八行目の「各自に対し、」の次に「原判決」を加える。
四 同三二頁末行の「因果関係がない。」の次に「また、新たに常勤理事に就任した第一審被告Y4としては、市民生協の経営状況を把握したうえで、いかなる再建方法が可能であるかを検討する必要があった。このような経営判断をすべき時期に、直ちに粉飾経理の実体を明らかにすべき注意義務を課すことは不可能を強いるものであるとともに適当なことでもなく、第一審被告Y4には注意義務違反はない。」を加え、同三三頁六行目の「義務はない。」の次に「第一審被告Y5は単に事実上の行為として会計帳簿を作成しただけであるから、この行為を法的責任の根拠にすることはできないし、この行為は市民生協の意思決定の前段階の行為であるから、注意義務違反は成立していない。」を加え、同末行の次に行を改めて次のように加える。
「(五) 過失相殺
市民生協の組合債の募集要項においては一人当たり二〇〇万円の購入が上限として示されている。ところが、第一審原告X1、同X2は各六〇〇万円、第一審原告X3、同X4、同X6、同X7、同X8は各三六〇万円、第一審原告X9は二〇八万円、第一審原告X12、同X13は各二一〇万円の組合債を購入している。上限額二〇〇万円を超える部分に相当する元本については、購入者の自己責任に基づく購入というべきであって、右元本についての右第一審原告ら主張の損害のうち、少なくとも八割以上の過失相殺がされるべきである。」
五 同三六頁八行目の「被告」から同九行目の「過失もない。」までを「各第一審被告らに関して」に改め、同三七頁一行目の「ことはない。」の次に「経理、財務その他管理部門関係の職務を把握していたことはない。」を加え、同五行目の「担当した。」の次に「経理、財務その他管理部門関係の職務は担当していない。」を加え、同一〇行目の「指摘した。」の次に「利益対策については、第一審被告Y1及び同Y7のもとで行われており、具体的な指示は第一審被告Y7から直接経理部長に対してされていた。」を加え、同行目の次に行を改めて次のように加える。
「(4) 第一審被告Y7
財務対策を積極的に指示した者であるが、利益操作は第一審原告らに対する加害行為を目的としてされたものでないことはもちろん、組合債による資金調達を目的としたものでもない。また、退任後の組合債取得者に対する損害賠償責任を負う理由はない。」
第三証拠
証拠は、原審及び当審記録中の書証及び証人等目録のとおりであるから、これを引用する。
理由
当裁判所は、第一審原告らの請求のうち、第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8及び同Y9に対する請求は、原判決主文一項のとおり、理由があるから認容すべきであり、第一審被告Y4に対する請求は原判決主文二項の限度において理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきであり、第一審被告Y3、同Y10、同Y11、同Y12及び同Y13に対する請求は、本判決主文一項1ないし3の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおりである。
第一当事者・粉飾決算の経緯等
次のように改めるほかは、原判決「理由」中「第一 事実関係」のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決四三頁四行目の「Y10」の次に「、第一審被告Y4(当審)、第一審被告Y6(当審)、第一審被告Y9(当審)、第一審被告Y8(当審)」を加える。
二 原判決五四頁一行目の「一月一月」を「一月一日」に改め、同五七頁四行目から同五八頁八行目までを次のように改める。
「1 市民生協は、本拠地の人口減少、人口増加地区への新規出店が地元商業者の反対により進まなかったこと等から、昭和五〇年代後半以降、慢性的な赤字経営に陥っていた。このため、未収金や繰延資産(開発費)等の計上、減価償却における耐用年数の変更等によって、決算上の利益を捻出していた。
2 しかし、昭和六〇年ころには、このような方法によって利益を捻出するのが困難になったので、同年度から昭和六三年度までの間、財務対策として子会社であるa2株式会社に不動産を売却し、その売却利益により赤字の補てんを図った。ところが、これによっても赤字を解消することができず、さらに大型店との競争の激化等もあって、赤字が拡大していった。
3(一) そこで、平成元年以降は、一応の合理性がある会計処理方法を逸脱し、根拠のない経理を操作して利益を捻出する粉飾決算をするようになった。基本的には、原価及び経費項目の一部を資産に計上する方法が採られ、そのために、架空リベート等の現実には回収可能性のない未収金、前渡金等の計上、繰延資産の他の資産への付け替え、さらに、多重リース契約の締結等が行われた。
このような粉飾決算は平成七年まで続けられた。
(二) 架空の資産計上をする等の粉飾決算を続けたため、決算に計上される総資産額は著しく増大した。平成二年度は七四億一六〇〇万円(一〇〇万円以下四捨五入、以下も同じ。)であったものが、平成三年度には八六億七三〇〇万円、平成四年度には九八億三五〇〇万円、平成五年度には一二二億八二〇〇万円、平成六年度には一三三億二三〇〇万円になった。
(三) 大幅な赤字を埋めるために、市民生協は組合債の発行に頼ることになり、その発行額は増大した。貸借対照表によれば、組合債による負債額は、平成二年度には三二億〇六〇〇万円であったが、平成三年度には三九億二三〇〇万円、平成四年度には四五億六一〇〇万円、平成五年度には四九億九一〇〇万円、平成六年度には五〇億七九〇〇万円となった。予算上は、これらの組合債は、新規店舗開設、既存店舗の改装、用地の取得のために発行することとされていたが、組合債による借入金は、実際には、赤字を埋める役割を果たしていた。」
三 同五八頁一〇行目の「粉飾決算」の前に「平成元年度から平成五年度までの間、」を加え、同五九頁三行目の「他の」から同八行目の「可能であった)」までを「常勤理事会に出席した他の常勤理事らは、提出された決算書類に異議を述べることはなく、常勤理事会において粉飾決算が承認、決定されていた」に改め、同九行目の「平成五年度の終了をもって」を「平成五年度事業報告がされた通常総代会の日(平成六年五月一二日)をもって理事を」に改め、同六〇頁四行目の「理事会」の前に「平成元年度以降、」を加え、同五行目の「なかった」から同六行目の「であり」までを「なく」に改め、同七行目の「粉飾決算が発見されることはなかった」を「リベート未収金の滞留等について改善勧告がされたことはあったが、粉飾決算である等経理が不正、不当であるとの指摘がされたことはなかった」に改める。
四 同六一頁三行目の「申立書によると、」の次に「事業の継続を前提とした」を加え、同行目の「資産総額は」の次に「平成七年一二月二〇日時点で」を加え、同行目から同四行目にかけての「負債総額は」の次に「同時点で」を加え、同六二頁二行目の「整理委員」の前に「和議事件の」を加え、同六三頁二行目の「七億八〇〇〇万円」の次に「(昭和六〇年度から六三年度に子会社に売却した不動産の代金債権のうち、平成八年三月四日までに回収ができなかった三億八〇〇〇万円を含む。)」を加え、同六四頁四行目の「資産合計は」の次に「平成八年三月四日の時点で」を加え、同行目の「負債合計は」の次に「同時点で」を加え、同六五頁九行目の「(1)」を「(3)」に改め、同行目の「右債権者」を「金融機関債権者及び組合債債権者」に改める。
五 同六八頁六行目の「平成三年度から」の次に「(以下、理事、監事の任期についての「年度」は、概ね、通常総代会開催時から翌年の通常総代会開催時までをいう。通常総代会開催時は、毎年、五月中旬であった。)を加え、同七一頁三行目の「七年度」を「七年五月一七日」に改め、同七二頁四行目の「決算書類」から同五行目の「であった」までを「粉飾決算である等経理が不正、不当であるという指摘はしなかった」に改め、同六行目の「できない。」の次に行を改めて次のように加える。
「 以上の認定に対して、第一審被告らは、平成元年以降の市民生協の経理は企業の継続を前提とする決算においては会計処理上許容されるものである、あるいは、市民生協の会計処理は経営状況を向上させるために行ったものであり虚偽の決算処理を意図的に策したのではないとして、違法な粉飾決算ではないと主張する。
しかし、市民生協が行った架空の資産計上等の手法は許されるものではないし、経理操作によって捻出された利益の金額が極めて高額で、しかもこのような操作を行っていた期間が長期に及んでおり、市民生協の経営は赤字が続いていたことも併せると、事業を継続することを前提としても、利益を計上するために会計上の処理を行ったのではなく、現実には巨額の損失があり、事業を継続しても利益を挙げるようになる見込みがないにもかかわらず、損失を隠蔽するために虚偽の決算報告をしたというほかなく、通常の会計処理では許容されない粉飾決算であることは明らかであるといわねばならない。」
第二本訴請求の当否
一 第一審被告らの不法行為責任
1 理事(第一審被告Y1ら、同Y3ら、同Y6ら)の責任
(一) 市民生協の理事は、組合員から市民生協の業務執行を委ねられたものであって、定款上、決算書類を作成して組合員に対してその報告をする義務があるのだから、その職務上、正しい決算書類を作成し、その報告をする義務があるのは当然である。
また、市民生協の理事は、前記認定のように市民生協の経営が多額の赤字を抱えている場合に、真実と異なり利益が生じている内容の決算を作成して公表すれば、又は、虚偽の内容の決算を見逃してこれが公表されれば、これを真実と信じて市民生協と新たな取引行為をした組合員(これと同視することができる組合員の家族を含む。以下も同様である。)が損害を受けることを予見することができたと認められる。
これらのことに、市民生協は協同互助の精神に基づき組合員の生活の改善向上を図ることを目的とするものであることも考慮すると、市民生協の理事は、虚偽のあるいは誤った内容の決算を真実と信じて市民生協と新たな取引行為をした組合員が損害を被ることがないように正しい決算処理を行う義務があり、これに反して、故意又は過失により真実と異なり利益が生じている内容の決算を組合員に報告し、これを真実と信じた組合員が組合債の募集に応じてこれを購入し、損害を受けたときは、理事はその組合員の被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。
(二) これに対して、第一審被告Y3ら及び同Y6らは、市民生協が適用を受ける消費生活協同組合法には商法二六六条の三の適用がないから、理事らの責任は市民生協に対する職務上の善管注意義務でなく、個々の具体的な第一審原告らに対する加害行為が問題になるところ、右第一審被告らは、虚偽の事実を開示して組合債の募集行為をした等の行為をしていないから、不法行為(加害行為)はないと主張する。
しかし、前記のとおり、理事は虚偽の決算報告により組合員が損害を受けることがないようにするために正しい決算報告をすべき義務があるところ、これをしなかったことが不法行為となるものであるから、加害行為がないという前記第一審被告らの主張は採用することができない。
(三) また、第一審被告Y3ら及び同Y6らは、粉飾決算がされたこと(加害行為)と、第一審原告らが組合債を購入したこと及びその組合債の元本額の償還が受けられなかったこと(結果)との間には因果関係がないと主張する。
しかし、粉飾決算がされることなく、市民生協が大幅な赤字であることが明らかにされていれば、第一審原告らは、組合債の償還に不安を覚えて、組合債の募集に応じなかったと推認されるから、粉飾決算がされたことと、第一審原告らが組合債を購入したこととの間には、因果関係があると認めることができる。そして、第一審原告らは組合債を購入したところ、その組合債の元本額の償還を全額は受けられなくなり、損害を受けたものであって、第一審原告らの組合債購入と損害との間にいわゆる事実的因果関係があることは明らかである。したがって、市民生協において粉飾決算がされたことと組合債を購入した第一審原告らが損害を受けたこととの間に事実的因果関係があることも明らかである。
もっとも、第一審原告らが組合債元本の全額については償還を受けられなかったのは、直接的には、市民生協の経営が行き詰まり、倒産したことが原因である。しかし、前記認定事実のとおり、市民生協は赤字経営が続き、実際上の損失額は巨額になっていたのであり、このような経営が続けば市民生協が倒産し、組合債を購入した組合員がその償還を受けられなくなることは予見することができたと認められるから、粉飾決算がされたことと第一審原告らが組合債の元本額の償還を全額は受けられなかったこととの間には、相当因果関係があると認めるべきである。
なお、第一審原告らのうち一部の者は、前記認定のとおり、最初に購入した組合債を期間満了時に更新している。しかし、前記認定のとおり、市民生協の組合債は自動更新することとされているし、組合債の保有者は組合員でもあることから、期間満了時に更新されることも多いと推認されるから、組合債が更新されたとしても、そのことにより、更新前の組合債の購入と、更新後の組合債の償還が受けられなかったこととの間に因果関係がないということはできない。
(四) そこで、第一審被告Y1ら、同Y3ら、同Y6らにつき、各第一審被告ごとの故意・過失の有無、各第一審被告の個々の行為によって生じた具体的な第一審原告らの損害(結果発生)を、検討する。
(1) 第一審被告Y7、同Y8
第一審被告Y7及び同Y8は、平成元年以前から平成六年五月一二日までの間、専務理事あるいは常勤理事、常務理事として、決算の作成に直接関わり、平成元年度から平成五年度までの決算について、故意に虚偽の報告をしたものである。このような粉飾決算をすれば、これを真実であると信じた組合員が新たに組合債を購入し、市民生協の倒産によって、その償還を受けられなくなることを予見することができたと認められることは前記のとおりであり、平成元年以降に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償すべき責任がある。
なお、第一審被告Y7及び同Y8は、いずれも平成六年五月一二日に理事を退任し、同日の後は決算作成に関与していない。しかし、第一審被告Y7及び同Y8がそれまでに粉飾決算をしていなければ、市民生協の財産状況が明らかにされ、同日の後においても、第一審原告らが新たに組合債を購入することはなかったと認められるし、市民生協においては、同日の後の決算も、それ以前の粉飾決算を前提とし、粉飾が継続されていたものであるから、第一審被告Y7及び同Y8は、同日の後に組合債を購入したことによる第一審原告の損害も賠償すべき責任があるというべきである。
(2) 第一審被告Y1、同Y2、同Y6、同Y9
第一審被告Y1は、平成元年以降理事長の地位にあり、同Y2、同Y6及び同Y9は、平成元年以前から平成七年度までの間、専務理事又は常務理事の地位にあったものである。
前記認定事実によれば、第一審被告Y1、同Y2、同Y6及び同Y9は、少なくとも、平成六年五月一二日に第一審被告Y7及び同Y8が理事を辞職した後は、粉飾決算であることを認識しながら、常勤理事会において異議を述べずに決算を承認、決定をしたことは明らかである。したがって、同日の後に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償すべき責任がある。
平成元年から平成六年五月一二日までは、常勤理事会において、第一審被告Y7らから粉飾決算である旨が説明されていたかどうかは明らかではない。しかし、前記認定事実のとおり、平成元年以前から市民生協は赤字経営が続き、不動産を子会社に譲渡する等の様々な処理が行われていたこと、理事長である第一審被告Y1、営業部門や管理部門の責任者である第一審被告Y2、同Y6及び同Y9はこのような会計処理をしても市民生協の経営は赤字が続いていたことを認識していたと推認されること、新規の投資は進んでいないのに決算上の総資産額が増大し、組合債発行額が大幅に増加していたこと等の事情から考えると、第一審被告Y1、同Y2、同Y6及び同Y9は市民生協の決算が粉飾であることを認識し得たものと認められる。それにもかかわらず、第一審被告Y1、同Y2、同Y6及び同Y9は、常勤理事会において決算に関して異議を述べず、決議をしていたものであって、右第一審被告らは、粉飾決算を見逃し、放置すれば、これを信じた組合員に損害を被らせることを予見することが可能であったと認められることは前記のとおりであるから、平成元年以降、平成六年五月一二日の前に、新たに組合債を購入したことによる第一審原告らの損害についても賠償すべき責任があるというべきである。
(3) 第一審被告Y3
前記のとおり、第一審被告Y3は、平成五年度までは非常勤理事であり、平成六年五月中旬、非常勤の副理事長に就任し、常勤理事会に半分以上出席していたが、平成六年八月以降は、病気のために出席しなくなったものである。
第一審被告Y3が平成六年五月中旬の前に市民生協の決算が粉飾されていることを認識していたと認めるに足りる証拠はない。また、第一審被告Y3は、平成二年六月に市民生協の子会社の取締役に就任したことが認められる(甲四七の3)が、具体的な職務は明らかでないし、市民生協の経営の実態について認識があったことを認めるに足りる証拠もない。これらの事情に第一審被告Y3が非常勤理事であったことも考慮すると、平成六年五月中旬の前は、市民生協の粉飾決算を認識し組合員が組合債を購入し損害を受けることがないようにする義務があったとは認めらない。
第一審被告Y3が出席した平成六年五月中旬ないし同年八月ころの常勤理事会においては、粉飾決算をしていることが報告されていたのであるから、第一審被告Y3は粉飾決算が行われていることを認識しながら、これを阻止しなかったものであり、平成六年五月中旬以降に組合債を購入したことによる第一審原告らの損害は賠償すべき責任があるというべきである。同年八月以降、第一審被告Y3が病気のために常勤理事会に出席することができなかったとしても、平成六年五月中旬から同年八月までの間に粉飾決算を阻止することはできたと認められ、現実には粉飾決算が継続されたのであるから、同年八月以降に取得された組合債についての損害の賠償責任を免れることはできない。
なお、第一審原告らは、第一審被告Y3が同年五月以降に粉飾決算を阻止することができたことから、同月の前に購入された組合債による損害についても第一審被告Y3に賠償責任があると主張する。しかし、同年五月以降に粉飾決算を阻止することができたとしても、それ以前に購入された組合債については、市民生協が当時すでに多額の赤字を抱えていたのであるから、元本額の償還が可能であったとは認めることはできないし、和議条件で定められた以上の償還が可能であったと認めるに足りる証拠もない。したがって、同年五月の前に購入された組合債による損害についても賠償責任があるとする第一審原告らの主張に採用することができない。
(4) 第一審被告Y4
第一審被告Y4は、平成七年五月一七日に常勤理事に就任したものであり、その後開催された常勤理事会において、粉飾決算の決定に関与したものであるから、同日以降に新たに組合債を購入したことによる第一審原告らの損害を賠償すべき責任がある。前記認定のとおり、常勤理事会に提出された資料から市民生協が違法な粉飾決算をしていたことは明白であり、第一審被告Y4が粉飾決算を阻止することが不可能であったとはいえない。
なお、第一審原告らは、同日の前に購入された組合債による損害についても第一審被告Y4に損害賠償責任があると主張するが、この主張は、前記(第一審被告Y3の責任)と同様の理由により、採用することができない。(第一審被告Y4が平成七年五月一七日の前に市民生協の参事であった当時の責任については、後に検討する。)
2 監事(第一審被告Y10ら)の責任
(一) 市民生協の監事は、組合員から財産及び業務執行の監査を委ねられたものである。また、監事は、粉飾決算を見逃せば、決算を真実のものと信じた組合員が損害を受けることを予見することは可能であったと認められる。そうだとすると、監事は、粉飾決算が行われることによって組合員が損害を受けるようなことがないように適正な監査をする義務があり、この義務に反して、故意又は過失により監査を怠り、粉飾決算を見逃し、決算を真実と信じた組合員が組合債の募集に応じてこれを購入し、損害を受けたときには、組合員が受けた損害を賠償すべき責任があるというべきである。
これに対して、第一審被告Y10らは、市民生協には商法二六六条の三のような規定がないから責任を負うことはない、粉飾決算と第一審原告らの損害等との間に因果関係がない等の主張をするが、これらを採用することができないことは、前記(理事の責任)と同様である。
(二) そこで、第一審被告Y10らが過失により監査を怠ったといえるかどうかを検討する。
証拠(甲五、三一ないし三四)によれば、北海道庁の担当者は「市民生協の粉飾決算は相当巧妙に会計操作がされていることから、公認会計士でなければ真の経営実態を把握することは困難である」旨の報告をしていること、市民生協の経理を調査した公認会計士は日本生活協同組合連合会にあてて「通常の監事監査などでは発見できない伝票操作も見られた」と報告していることが認められる。
しかし、前記のとおり、監事の職務は、会計監査ではなく、財産及び業務執行の監査であって、粉飾決算を行った会計操作の手法を発見することや経理の詳細の把握が求められているわけではない。そして、市民生協の決算は、多額の未収金、開発費等が毎年計上されたままであること、新規の投資が進んでいたわけでもないのに、総資産が毎年増大し、組合債の発行額が毎年著しく増加していたこと等の事情から考えると、監事らが常勤理事らに対して説明を求める等の調査によって、常勤理事会で決定された決算が不自然あるいは不当であると指摘することが困難であったとは認められない。ところが、第一審被告Y10ら監事は、決算書の金額が資料と一致するかどうかを確認する程度の監査をしただけで、決算が不自然あるいは不当である等の指摘をすることはなく、そのため、市民生協において粉飾決算が継続されたのであるから、第一審被告Y10らは、組合員が損害を受けることがないように適正な監査をすべき義務を怠ったというべきである。したがって、第一審被告Y10らは、適正な監査を怠ったことにより粉飾決算がされ、これを真実であると信じて組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償すべき責任がある。
(三) すすんで、第一審被告Y10らについて、それぞれが責任を負う第一審原告らの損害を検討する。
(1) 第一審被告Y10
第一審被告Y10は、平成二年度から監事に就任しているものである。したがって、決算監査を行った平成三年四月一一日(甲二三)の後に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害について賠償すべき責任がある。
(2) 第一審被告Y11及び同Y12
第一審被告Y11及び同Y12は、平成四年度から監事に就任しているものである。したがって、決算監査を行った平成五年四月九日(甲二五)の後に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害について賠償すべき責任がある。
(3) 第一審被告Y13
第一審被告Y13は、平成六年度から監事に就任しているものである。したがって、決算監査を行った平成七年四月一〇日(甲二七)の後に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害について賠償すべき責任がある。
なお、監事が就任し決算監査を行う前に取得された組合債について、損害賠償責任を負わないことは、前記(第一審被告Y3の責任)と同様である。
3 従業員(第一審被告Y4、同Y5)の責任
(一) 第一審被告Y5
第一審被告Y5は、平成二年の前から、参事職・管理副本部長の地位にあり、実際に粉飾決算の作成に当たっていたものであり、粉飾決算を行い、組合員にこれが報告されれば、真実であると信じた組合員が損害を受けることを予見することができたと認められる。したがって、第一審被告Y5は、粉飾決算をすることにより組合員に損害を与えないようにする義務があるにもかかわらず、この義務に違反したというべきであり、決算を真実のものであると信じて組合債を購入し、その償還を受けることができなかった第一審原告らの損害を賠償すべき責任があると認められる。
これに対して、第一審被告Y5は、市民生協の従業員にすぎず、担当理事の指示に基づき事務作業をしただけであり、かつ、雇用契約に基づく服務義務があるから、過失はなく、第一審被告Y5の行為と第一審原告らの損害の間に因果関係はないし、また、第一審被告Y5には期待可能性がない等と主張する。
しかし、第一審被告Y5は、参事・管理副本部長であって、現実に粉飾した決算書類を作成し、常勤理事会に出席することがある等、常勤理事に次ぐ地位にあったものであり、こうした職務、地位から考えると、職務上、粉飾決算を避けることが不可能であったとは認めがたい。したがって、第一審被告Y5には、粉飾決算をして組合員に対して損害を与えないようにすべき注意義務があったということができるし、この義務を課すことについて、期待可能性がないともいえない。また、第一審被告Y5の粉飾決算作成の関与と第一審原告らの損害の因果関係が中断される理由もない。
(二) 第一審被告Y4
第一審被告Y4は、平成元年から平成七年五月一七日まで、参事職で事業副本部長、企画室長、組活本部長に就任したものであるが、この間、市民生協の粉飾決算の作成に関与したとは認められないから、右期間における第一審被告Y4の行為をもって、粉飾決算により第一審原告らに対して損害を与えたとする不法行為があったと認めることはできない。
4 まとめ
第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8及び同Y9は、平成元年以降に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償する責任がある。第一審被告Y10は、平成三年四月一一日の後に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償する責任がある。第一審被告Y11及び同Y12は、平成五年四月九日の後に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償する責任がある。第一審被告Y3は、平成六年五月中旬以降に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償する責任がある。第一審被告Y13は、平成七年四月一〇日の後に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償する責任がある。第一審被告Y4は、平成七年五月一七日以降に組合債を取得したことによる第一審原告らの損害を賠償する責任がある。
二 第一審原告らの損害
1 第一審原告X1及び同X2
(一) 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8及び同Y9に対し
第一審原告X1及び同X2は、いずれも、右第一審被告らが理事長、専務理事、常務理事、常勤理事又は参事職管理副本部長に就任した後である平成二年五月二一日、同年一〇月一一日及び平成七年一〇月一三日に、合計六〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する一五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、それぞれ一五〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 第一審被告Y3、同Y4、同Y10、同Y11、同Y12及び同Y13に対し
第一審原告X1及び同X2は、いずれも、右第一審被告らが副理事長若しくは常勤理事に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成七年一〇月一三日に、それぞれ新たに二〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、それぞれ五〇万円の損害賠償を求めることができる。
2 第一審原告X3、同X4、同X6、同X7及び同X8
(一) 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9及び同Y10に対し
右第一審原告らは、いずれも、右第一審被告らが理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若しくは参事職管理副本部長に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成三年一〇月八日及び平成七年一〇月九日に、合計三六〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する九〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、それぞれ九〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 第一審被告Y3、同Y4、同Y11、同Y12及び同Y13に対し
右第一審原告らは、いずれも、右第一審被告らが副理事長若しくは常勤理事に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成七年一〇月九日に、四〇万二四〇〇円を加えて額面三六〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントの償還を受けられない損害を被ったから、それぞれ、右四〇万二四〇〇円の二五パーセントに相当する一〇万〇六〇〇円の損害賠償を求めることができる。
3 第一審原告X5
(一) 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9及び同Y10に対し
第一審原告X5は、右第一審被告らが理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若しくは参事職管理副本部長に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成四年四月七日及び同年六月一八日に、合計二〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、五〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 第一審被告Y3、同Y4、同Y11、同Y12及び同Y13に対し
第一審原告X5は、右第一審被告らが副理事長又は常勤理事に就任した後、及び、決算監査を行った後には、新たな組合債を購入していないから、損害賠償請求をすることができない。
4 第一審原告X9
(一) 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9及び同Y10に対し
第一審原告X9は、右第一審被告らが理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若しくは参事職管理副本部長に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成三年一一月二八日、同年一二月二一日、平成四年四月二四日、同年五月一八日、同年六月二日、同月一四日、同年八月二一日、同年一一月一〇日、平成五年四月二日、同年六月二九日、同年七月二二日、同月三一日、同年八月一二日及び同年九月三日に、合計二〇八万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五二万円の償還を受けられない損害を被ったから、五二万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 第一審被告Y11、同Y12に対し
右第一審原告X9は、第一審被告Y11及び同Y12が最初に決算監査を行った後である平成五年六月二九日、同年七月二二日、同月三一日、同年八月一二日及び同年九月三日に、合計六〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する一五万円の償還を受けられない損害を被ったから、一五万円の損害賠償を求めることができる。
(三) 第一審被告Y3、同Y4及び同Y13に対し
第一審原告X9は、右第一審被告らが副理事長又は常勤理事に就任した後、及び、決算監査を行った後には、新たな組合債を購入していないから、損害賠償請求をすることができない。
5 第一審原告X10及び同X11
第一審原告X10及び同X11は、いずれも、第一審被告ら(全員)が理事長、副理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若しくは参事職管理副本部長に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成七年七月一九日、同年八月二二日、同年一一月一日及び同年一一月二二日に、合計一九万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する四万七五〇〇円の償還を受けられない損害を被ったから、それぞれ、四万七五〇〇円の損害賠償を求めることができる。
6 第一審原告X12
(一) 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9及び同Y10に対し
第一審原告X12は、右第一審被告らが理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若しくは参事職管理副本部長に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成四年二月一日、同年三月一六日、同年一二月八日、平成五年二月一〇日、同年六月一五日、同年七月二四日、同年八月三〇日、同年一〇月八日、同年一二月二五日、平成六年二月一〇日に、合計二一〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五二万五〇〇〇円の償還を受けられない損害を被ったから、五二万五〇〇〇円の損害賠償を求めることができる。
(二) 第一審被告Y11、同Y12に対し
右第一審原告X12は、第一審被告Y11及び同Y12が最初に決算監査を行った後である平成五年六月一五日、同年七月二四日、同年八月三〇日、同年一〇月八日、同年一二月二五日、平成六年二月一〇日に、合計一四〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する三五万円の償還を受けられない損害を被ったから、三五万円の損害賠償を求めることができる。
(三) 第一審被告Y3、同Y4及び同Y13に対し
第一審原告X12は、右第一審被告らが副理事長又は常勤理事に就任した後、及び、決算監査を行った後には、新たな組合債を購入していないから、損害賠償請求をすることができない。
7 第一審原告X13
(一) 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9及び同Y10に対し
第一審原告X13は、右第一審被告らが理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若しくは参事職管理副本部長に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成三年一一月一三日、平成四年一月六日、同月一三日、同月二〇日、同年二月二六日、同年四月一一日、同月二四日、同年九月二四日、同年一一月九日に、合計二〇一万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五〇万二五〇〇円の償還を受けられない損害を被ったから、五〇万二五〇〇円の損害賠償を求めることができる。
(二) 第一審被告Y3、同Y4、同Y11、同Y12及び同Y8に対し
第一審原告X13は、右第一審被告らが副理事長又は常勤理事に就任した後、及び、決算監査を行った後には、新たな組合債を購入していないから、損害賠償請求をすることができない。
8 第一審原告X14
(一) 第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8、同Y9及び同Y10に対し
第一審原告X14は、右第一審被告らが理事長、専務理事、常務理事、常勤理事若しくは参事職管理副本部長に就任し、又は、最初に決算監査を行った後である平成四年七月三一日、同年一一月二四日、平成五年八月二三日、同年九月二五日、同年一〇月一八日、同年一二月二一日に、合計二〇〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する五〇万円の償還を受けられない損害を被ったから、五〇万円の損害賠償を求めることができる。
(二) 第一審被告Y11、同Y12に対し
右第一審原告X14は、第一審被告Y11及び同Y12が最初に決算監査を行った後である平成五年八月二三日、同年九月二五日、同年一〇月一八日、同年一二月二一日に、合計九〇万円の組合債を購入し、その二五パーセントに相当する二二万五〇〇〇円の償還を受けられない損害を被ったから、二二万五〇〇〇円の損害賠償を求めることができる。
(三) 第一審被告Y3、同Y4及び同Y13に対し
第一審原告X14は、右第一審被告らが副理事長又は常勤理事に就任した後、及び、決算監査を行った後には、新たな組合債を購入していないから、損害賠償請求をすることができない。
三 過失相殺について
第一審被告Y3らは、第一審原告のうち、限度額とされている二〇〇万円を超えて組合債を購入した者について、過失相殺の主張をする。
しかし、市民生協が組合債の募集要項に反して二〇〇万円を超える組合債を同一の組合員に発行していたものであって、これをもって、第一審原告らのうち、二〇〇万円を超えて組合債を購入した者に過失があるとはいえない。
第三結論
よって、原判決中、第一審被告Y1、同Y2、同Y5、同Y6、同Y7、同Y8及び同Y9に対する請求を認容した部分及び第一審被告Y4に対する請求を一部認容した部分は相当であり、第一審原告らの第一審被告Y4に対する控訴及び右第一審被告らの控訴は理由がないから棄却し、第一審被告Y3、同Y10、同Y11、同Y12及び同Y13に対する請求を全部棄却した部分は以上の判断と異なるから、これを変更することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大出晃之 裁判官 中西茂 裁判官 森邦明)