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札幌高等裁判所 平成12年(ネ)423号 判決 2001年6月14日

控訴人

同代表者代表役員

同訴訟代理人弁護士

本田勇

被控訴人

同代表者法務大臣

森山真弓

同指定代理人

佐久間健吉

田野喜代嗣

三浦達也

若松薫

有田利雄

阿部浩一

沖村幸夫

木村邦博

田中晃二

小森睦雄

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人は控訴人に対し、118万2400円及び内金83万2400円に対する平成9年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3)  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

(4)  仮執行宣言

2  被控訴人

主文同旨

第2事案の概要

次のとおり付加、訂正するほか、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決8頁1行目の「行事なのである。」の次に「すなわち、これまでの家制度又は古来からの伝統が色濃く残る宗門家の結婚については、控訴人が檀家と共に新郎ないし親族に代わって結納を贈る特殊な事情ないし慣習があるのであり、」を加える。

2  同9頁3行目から4行目の「収入となるから、源泉徴収の余地がなく、」を「収入となるところ、控訴人は、その額を把握していないから源泉徴収することができず、これを果たそうとすれば、控訴人と甲との所得配分に関する合意を当事者の意思に反して変更しなければならなくなる。しかし、このことは国が国民の私的自治を制約することになるのであり、不当である。また、」に改める。

3  同16頁7行目の「本件差押えは」の次に「裁量権の濫用が一見明白な」を加える。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も、本訴請求は理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」に説示のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決26頁2行目から3行目の「会される」を「解される」に改める。

(2)  同26頁3行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「控訴人は、甲から源泉徴収することは控訴人と甲との間の所得配分に関する合意を変更しなければならなくなって、私的自治を侵すことになるから不当である旨主張するのであるが、問題は、客観的かつ実質的にみて本件結納金が源泉徴収をすべき給与所得になるか否かなのであり、これが肯定される以上は、控訴人と甲の間でどのような合意をしようとも、控訴人に源泉徴収義務が生ずることになるのである。税法上、源泉徴収すべき給与所得となるにもかかわらず、源泉徴収しないこととする旨の私人間の合意(控訴人の主張によっても、直接的にはこのような合意ではないものの、その合意を尊重するということは、結果的にこのような合意をしたことと同視しうる。)に優越的効力を与えることはできないというべきである。」

(3)  同26頁8行目の「宗派に」を「宗派ないし宗教法人と」に改める。

(4)  同27頁末行の冒頭から28頁4行目の末尾までを次のとおり改める。

「国税徴収法は、国税滞納処分における財産差押えの通則として48条1項で超過差押えを禁止しているが、債権の差押えについては、その例外として63条で原則として債権全額を差し押さえなければならず、全額を差し押さえる必要がないと認めるときはその一部を差し押さえることができると規定している。

その趣旨は、債権については、第三債務者の支払能力や対抗を受ける抗弁権の存否、他の債権者の有無等により債権の実質的な価値が定まるから、徴収職員が予め債権の実質的な価値を把握することが困難であり、そのため、どの程度の債権を差し押さえれば現実に徴収が可能となるかを知ることができないために、全額差押えを原則としたものであり、ただ、予め徴収職員が債権の実質的な価値を把握できるような場合には、例外的に一部差押えもすることができることとしているものと解される。したがって、債権差押えの範囲を全額とするかその一部とするかは、原則として徴収職員の自由裁量行為というべきであり、上記のような観点から特に裁量権の濫用になると認められない限りは、その行為を違法ということはできない。」

(5)  同29頁2行目の「いえないけれども、」の次に「前記のとおり」を加え、3行目の「謳っていることに」を「謳っている趣旨に」に改める。

2  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 前島勝三 裁判官 竹内純一 裁判官 石井浩)

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