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札幌高等裁判所 平成13年(ネ)287号 判決 2003年4月17日

控訴人

江別市

同代表者市長

小川公人

同訴訟代理人弁護士

門間晟

被控訴人

甲山太郎

甲山花子

被控訴人ら訴訟代理人弁護士

上田文雄

長田正寛

米屋佳史

大久保誠

菅野直樹

石川和弘

田端綾子

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決中,控訴人の敗訴部分を取り消す。

(2)  被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

(3)  控訴費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人

主文同旨

第2  事案の概要

本件は,甲山一郎(以下「一郎」という。)の両親である被控訴人らが,一郎が控訴人に開設する江別市立江別総合病院(以下「江別総合病院」という。)に入院して治療を受けたものの死亡したのは,江別総合病院の医師が,一郎が低酸素血症により全身の臓器が低酸素状態に置かれたことに看過し,適切な検査及び治療を実施しなかった過失によるものであるなどと主張して,控訴人に対し,その治療行為についての債務不履行又は不法行為に基づき,被控訴人甲山太郎について2836万4708円,被控訴人甲山花子について2736万4708円の各損害賠償金及びこれらに対する一郎死亡の日である平成6年1月6日から支払済みで民法所定の年5年分の割合による遅延損害金を支払うように求めた事案である。

1  前提となる事実(争いのない事案は証拠を掲げない。)

(1)  当事者

ア 被控訴人甲山太郎は,一郎の父,被控訴人甲山花子は一郎の母である。一郎には,被控訴人らのほかに相続人はいない。

イ 控訴人は,北海道江別市において,江別総合病院を開設管理している地方公共団体である。

(2)  江別総合病院における一郎の診療経過

ア 一郎は,平成5年4月27日,江別総合病院において出生し,その後も江別総合病院において検診を受けていた。一郎は,生来の漏斗胸(胸骨及びそれに付着する肋軟骨,肋骨の一部が脊柱に向かって漏斗状に陥凹するもの。甲8)であった。一郎は,平成5年9月27日から同年10月3日まで,喘息性気管支炎のため,江別総合病院に入院し,退院後も江別総合病院に通院し,継続して治療を受けていた。江別総合病院における一郎の担当医は,乙川次郎医師(以下「乙川医師」という。)であった。

イ 一郎は,平成5年12月23日午後8時10分ころ,喘鳴及び発熱のため,江別総合病院に入院した。入院時,一郎には喘鳴及び陥没呼吸が認められ,乙川医師から,喘息性気管支炎との診断を受けた。乙川医師は,同月28日,症状が軽快したとして一郎を退院させた。

ウ 一郎は,退院後も発熱が続き,平成6年1月1日に39.4度の高熱となり,咳が多発し,呼吸も苦しいような状況になった(乙5,6)ため,同月2日,江別総合病院を受診し,同日午後11時20分ころ乙川医師の指示により再入院した。

エ 江別総合病院は,平成6年1月4日,一郎の胸部正面及び側面のレントゲン写真を撮影した。しかし,その後も,一郎の症状は軽快せず,高熱,喘鳴及び陥没呼吸の症状が持続していた。

オ 一郎は,平成6年1月6日午後1時50分ころ,チアノーゼを呈し,容態を急変させた。江別総合病院は,同日午後1時55分ころ,一郎に対し,酸素マスクにより3リットルの酸素投与を開始した。一郎は,同日午後2時30分ころ,呼吸不安定となり,意識低下を来たし,心拍数は230台にまで上昇した。江別総合病院は,同日午後2時34分ころ,一郎に対して初めて血液ガス検査を実施したところ,酸素ガス分圧は70mmHg,炭酸ガス分圧は45.7mmHg,血液酸性度は7.101であった。一郎には,同日午後3時55分ころ,眼球が上転し,頭部を細かく左右に動かす痙攣様の動きが認められた。同日午後6時25分ころ,再び眼球上転,四肢硬直が認められた。一郎は,その後心停止に至り,同日午後7時29分,死亡した。

2  争点

(1)  一郎の死亡原因

ア 被控訴人らの主張

(ア) 一郎は,平成6年1月2日の再入院時からすでに低酸素血症の状態にあり,同月6日午後1時50分には重篤な低酸素血症の状態に陥っていた。このような長時間にわたる呼吸困難もしくは呼吸不全に伴う低酸素血症により,一郎の全身の臓器は低酸素状態におかされ,その結果,一郎は,低酸素脳症による心不全(心筋障害)及び循環器障害を起こして死亡した。その論拠は,次のとおりである。

① 一郎は,江別総合病院に再入院した平成6年1月2日から6日まで,常時,顔色不良で鼻口周辺の色が白っぽく又は蒼白で,陥没呼吸が持続しており,低酸素血症の徴候を示していた。

② 一郎には,同月6日午後1時50分,口唇にチアノーゼが出現しているところ,チアノーゼは,低酸素血症がかなり進行してから生ずる所見であり,チアノーゼ出現時の動脈血酸素分圧は20ないし30mmHgであったと推測することができる。その後,午後1時55分に酸素マスクにより大量の酸素を投与されて40分後にやっと動脈血酸素分圧が70mmHgに回復していることからみても,チアノーゼ出現時は20ないし30mmHgの酸素分圧であっとことが明らかである。

③ 一般に,呼吸不全による低酸素血症の定義は,室内気吸入時の動脈血酸素分圧が60mmHg以下とされているから,上記チアノーゼ出現時に一郎が呼吸不全の状態にあったことは明らかである。

④ 低酸素血症は,臓器の低酸素状態をもたらし,破壊・虚血・壊死によって臓器に直接的に障害するとともに,障害によって生じた物質によって更に二次的に臓器障害が引き起こされる。一郎も,低酸素血症による呼吸不全を基礎に,最終的には不可逆的な低酸素脳症,心不全をきたして死亡したものと合理的に推測することができる。

(イ) 控訴人の主張(ウイルス性心筋炎による死亡に対する反論

① ウイルス性心筋炎においては,心電図上,ST波上昇が高頻度で現れるところ,一郎の心電図上にはST波上昇の所見は認められなかった。

② ウイルス性心筋炎の急性期には約70パーセントの頻度で心拡大が認められ,重症例では心拡大に加え,肺うっ血が出現するのが一般であるところ,一郎には心拡大及び肺うっ血の徴候はいずれもなかった。

③ 劇症性のウイルス性心筋炎においては細胞懐死を伴うから,CPK(クレアチンホスホキナーゼ,筋肉の代謝に必要となる筋肉中の酵素であり,心筋が懐死すると血液中に漏れ出て血中の数値が急激な上昇を示す。)の値は5000ないし6000IU/lの数値となるところ,一郎のCPK値は,平成6年1月6日午前9時15分の時点で5611IU/lにすぎず(正常値は30ないし170IU/l),これはいまだ細胞壊死は発生していなかったことを示しているから,一郎は,劇症性ウイルス性心筋炎ではなかったことが明らかである。

④ 控訴人は,一郎の死亡原因としてウイルス性心筋炎を主張しているが,江別総合病院の医師は,一郎が危篤状態になった後にCPKの計測を行っていない。また,心筋炎の判断に不可欠な心エコー写真を撮影していないことをはじめとして,一郎の危篤後に心筋炎を疑って検査を行った形跡も,心筋炎を前提にして,強心剤の投与や心室性頻拍を前提とする抗不整脈剤の投与,電気的除細動等の措置を実施した形跡もない。さらに,同日午後6時ころ,丙田医師が被控訴人らに対して一郎の病状等について説明した際にも,心筋炎については全く触れられていなかった。

イ 控訴人の主張

(ア) 控訴人の主張

一郎の死亡直前の症状に照らすと,一郎はウイルス性心筋炎に罹患し,これによる心不全により死亡したものと推定すべきである。その論拠は,次のとおりである。

① 一郎の心拍数は,平成6年1月6日までは,正常値の範囲内にあったが,同日午後の容態急変後,同日午後2時30分には,1分間に220という頻脈発作と判定し得るほどの異常な心拍数を示し,以後,同日午後6時25分の心停止に至るまで,常に1分間に200以上の心拍数を示しており,これは心機能に何らかの障害が発生したことを推測させる。

② 診療録には,同日午後2時30分,「心拍数230台で,QRS幅ややwideに」と記載され,心電図解析によれば,同日午後4時30分,QRS時間が0.132秒(正常値は0.12秒)と計測されている。QRS時間は,心室の収縮活動に要する時間を意味し,その時間が延長すること(このような頻脈をWQTという。)は,心室の電気伝導系に異常が発生したことを示している。

③ 同日の容態急変後,一郎にたびたび出現した眼球上転,四肢硬直,痙攣の諸症状は,ウイルス感染による脳炎,心筋炎に起因するものであると推測させる。

④ 血清中のCRP値は,ウイルス感染の場合に比べ,生体細胞を破壊しやすい細菌感染の場合の方がより大きい値を示す(細菌感染の場合,3ないし4mg/dl以上の数値を示すのが通常である。)ところ,同日の血液検査によれば,一郎のCRP値は1.0mg/dlにすぎなかった。

⑤ 一郎に入院中投与された抗生剤(リカマイシン及びケフドール)は,効果を現していなかったから,一郎は,ウイルス感染を起こしていたものと推測できる。

(イ) 被控訴人らの主張に対する反論

被控訴人らが主張する,一郎は低酸素血症に基づく低酸素脳症による心不全(心筋障害)及び循環器障害を起こして死亡したとするのは,次の理由により失当である。

① 小児の場合,低酸素血症は,動脈血酸素分圧が40ないし70mmHg以下の場合をいうから,70mmHgの数値を示していた一郎は低酸素血症ではなかった。

② 呼吸困難又は呼吸不全に伴う低酸素血症によって心不全が起きるのは,呼吸が完全に途絶し(肺に対する酸素供給の途絶又は肺による酸素ガス交換機能の全面的不能),又は血流が完全に途絶し(脳や心臓に対する血液による酸素供給途絶),肺や心臓に酵素が供給されなくなった場合のみである。呼吸困難又は呼吸不全の程度では,少なくとも間歇的な呼吸はされているので,肺のガス交換機能が全面的には停止せず,脳や心臓に酵素が供給されており,心不全になることはない。

本件程度の低酸素状態で,全身の細胞が機能しなくなり,心不全が起こることは,医学的にあり得ない。

③ 全身が同一程度の低酸素血症にさらされると,一番はじめに現れるのは脳障害であるところ,一郎は,平成6年1月6日午後1時50分に心障害がはじめて出現し,その2時間5分後である午後3時55分に眼球上転,頭をふるわせるなどの脳障害が生じているから,一郎の死亡原因は,低酸素血症による心不全(心筋障害)及び循環器障害と考えることはできない。

(2)  控訴人(医師)の過失

ア 被控訴人らの主張

(ア) 一郎に起きていた低酸素血症の背景となった病態が,喘息であったのか,気管支炎であったのか,気管支性肺炎であったのか,肺炎であったのかなど,その病態を確定診断することは不可能であるが,そのいずれの病態であったとしても,一郎に起きていた低酸素状態に対して酸素投与などの措置を講じ,一郎の体力・免疫力・生命力の低下を防ぎさえしていれば,一郎を救命できたものであるから,それをしなかった江別総合病院の医師に診療上の過失があったことは明らかである。

(イ) 一郎は,再入院時である平成6年1月2日,38.8度の高熱を発しており,脈拍数が156/分,呼吸数が72/分であり,喘鳴,陥没呼吸及びチアノーゼが認められ,呼吸状態が悪化し,湿性咳も出ており,初回の入院時に比べて症状が悪化していた。このように,発熱と呼吸困難により入院し,その後症状が解消されないまま退院させた患児の症状が初回の入院時よりも悪化し,数日後に再入院を余儀なくされるに至った場合,担当医師は,初回の入院時の診断を再検討し,上記のような再入院時の症状に鑑み,患児が低酸素血症に罹患していることを疑診し,直ちに血液ガス分析検査,経皮酸素モニター,胸部レントゲン写真撮影等の検査を実施して低酸素血症罹患の有無ないし程度を診断し,ガンマグロブリン,副賢皮質ホルモン剤,気管支拡張剤等を投与するとともに,患児の呼吸困難状態及びこれに伴う低酸素血症を改善するため,酸素テント収容,酸素マスク装着,人工呼吸器装着等の方法により呼吸管理措置を緊急に実施すべき注意義務があった。

しかるに,乙川医師は,一郎の症状を軽視し,喘息性気管支炎に過ぎないと診断して,血液ガス検査,酸素分圧測定,胸部レントゲン写真撮影等の検査を怠ったため,一郎が低酸素血症に罹患していたことを看過し,一般的に処方される守備範囲の広い抗生剤や解熱剤を漫然と投与したに過ぎず,上記のような適切な検査及び治療を怠った。乙川医師は,医師としての注意義務を尽くしていれば,一郎が低酸素血症に罹患していることを把握できた上,適切な検査,治療及び呼吸管理措置を行うことにより,一郎の死亡を回避することが可能であった。

イ 控訴人の主張

一郎の死亡原因はウイルス性心筋炎であるところ,ウイルス性心筋炎は,現在の医学では特異的に有効な治療方法はなく,輸液,安静,対症療法等により自然回復を待つ以外に方法がなく,控訴人はこれらの対症治療法を十分に行っていた。したがって,控訴人の治療行為に過失はない。

(3)  被控訴人らの損害

(被控訴人らの主張)

ア 逸失利益 2072万9417円

平成6年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・男子労働者全年齢平均の年間賃金は549万1600円であり,生活費として50パーセントを控除し,就労可能年数を18歳から67歳までとして,ライプニッツ係数により中間利息を控除すると,一郎の逸失利益は,2072万9417円となる。

(計算式)

549万1600円×0.5×(19.239−11.6895)

イ 慰謝料 2500万円

一郎の死亡により一郎に発生した精神的損害に対する慰謝料としては,2500万円が相当である。

ウ 相続

被控訴人らは,一郎の死亡により,それぞれ上記ア及びイの逸失利益及び慰謝料の2分の1である2286万4708円の損害賠償請求権を相続により取得した。

エ 葬儀費用 100万円

被控訴人甲山太郎は,一郎の葬儀を行い,100万円を下らない葬儀費用を出捐した。

オ 弁護士費用 900万円

被控訴人らは,被控訴人ら訴訟代理人弁護士に本件訴訟の追行を委任し,弁護士費用を支払う旨約した。その相当な費用は被控訴人各自につき450万円である。

第3  争点に対する判断

1  前提となる事実,証拠(甲1ないし8,乙1ないし7,31,証人乙川次郎,同丙田三郎,同丁谷四郎,被控訴人甲山花子)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

(1)  一郎は,平成5年4月27日,江別総合病院において出生し,その後も江別総合病院において検診を受けていた。一郎は,生来の漏斗胸であった。一郎は,平成5年9月27日から同年10月3日まで,喘息性気管支炎のため,江別総合病院に入院し,退院後も江別総合病院に通院し,継続して治療を受けた。江別総合病院における一郎の担当医は,乙川次郎医師であった。

(2)  一郎は,平成5年12月21日から,咳及び喘鳴の症状のため,「○○小児科」及び「△△小児科」に通院して治療を受けたが,症状が改善されなかった。そこで,同月23日午後8時10分ころ,喘鳴及び発熱の症状を訴えて江別総合病院を受診した。一郎を診察した乙川医師は,肺の空気の入りは普通であるが,喘鳴が顕著で,陥没呼吸が認められるとし,喘息性気管支炎と診断し,一郎を入院させることとした。入院時の一郎の体温は35.8度であったが,同日午後9時30分ころには38.0度に上昇した。

(3)  乙川医師は,同月24日,一郎の入院時検査として,血液検査,CRP検査(炎症性の病気の有無の鑑別検査で,炎症や組織崩壊があると陽性の反応が出る。)及び生化学検査を行い,胸部正面のレントゲン写真を撮影した。その結果,白血球数は9800/μl,CRP値は0.1mm/dlであり生化学検査にも異常は認められなかった。また,乙川医師が,同日,一郎を診察したところ,喘鳴及び陥没呼吸が認められ,機嫌は悪く,体温は36.0度から37.5度の間で推移していた。しかし,一郎は,夕方には機嫌がよくなり,夕食をほぼ全量摂取した。

同月25日,乙川医師が一郎を診察したところ,喘鳴及び陥没呼吸は認められたものの,発熱は軽減していた。同日中,一郎は,機嫌よく動きは活発で,夕食も全量摂取した。同月26日及び27日中,一郎は,喘鳴及び陥没呼吸が認められたが,機嫌もよく食欲もあり,体温も平熱ないし微熱の状態であった。同月28日の一郎の状態も同様であった。そこで,乙川医師は,一郎を退院させることとし,同日午後,一郎は退院した。

(4)  ところが,一郎は,退院後も発熱が続き,平成6年1月1日に39.4度の高熱となり,咳が多発し,喘鳴が認められたので,江別総合病院から処方を受けていた解熱剤を使用したものの,熱が下がらなかったため,同月2日午後10時45分ころ,江別総合病院を再度受診した。夜勤の医師からの報告及び要請に基づき,乙川医師は,自宅から江別総合病院に赴き,同日午後11時20分ころ,一郎を診察し,顔色不良,喘鳴,陥没呼吸及び咽頭の発赤を認め,再入院を指示した。再入院時における一郎の体温は38.8度,脈拍数は156/分,呼吸数は72/分,白血球数は1万3700/μlであった。

乙川医師は,一郎を既往症である喘息性気管支炎と診断し,一郎に対し,座薬の解熱鎮痛剤,内服用の抗炎症剤,維持用の輸液,気管支拡張剤,鎮咳剤,去痰剤,消炎剤,内服用の抗生剤,静注用の抗生剤(感染の疑診と感染予防のため)を投与するように指示し,このうち内服剤については同月3日から,それ以外については当日から,同月6日までの間,一郎に対して継続して投与された(乙6)。

再入院時の一郎は,顔色不良で不機嫌に泣いており,湿性咳,喘鳴があり,聴診器でギューグー音が聴かれ,鎖骨窩及び心窩部に陥没呼吸が認められる状態であった。

(5)  乙川医師は,同月3日,一郎を診察したところ,顔色不良で熱が持続しており,喘鳴及び咽頭発赤が認められ,前日に比べで症状の変化は認められなかった。同日の一郎の体温は,37.0度(午前3時)から39.4度(午後9時)間で推移した。

同月4日も熱が持続しており,顔色不良,喘鳴及び陥没呼吸が認められ,機嫌はあまり良くない状態であった。同日の一郎の体温は,35.9度(午前4時)から39.7度(午後6時)の間で推移した。

江別総合病院は,同月4日,一郎の胸部正面及び側面のレントゲン写真を撮影した。胸部レントゲン写真の正面像は,左右の肺門部に境界が不鮮明で淡い斑状の陰影が認められ,左肺の心陰影の左側の縁が,上記陰影により不明瞭になっており,側面像は,肺門部の気管支周辺に陰影が認められ,横隔膜の陰影が不明瞭で,肺の中央部にくさび形の白い陰影が存在した(甲5の4,5,乙12,証人己田)。その後も,一郎の症状は軽快せず,顔色不良,高熱,喘鳴及び陥没呼吸の症状が持続していた。

一郎は,同月6日午前6時15分,体温が40.0度まで上昇した。乙川医師は,同日午前,一郎の白血球数,CRP値の検査を実施し,その結果,白血球数は1万0700/μlと平成5年12月24日の検査時点より若干増大し,CRP値は1.0mg/dlで,これも前同日の検査時点より増えていた。なお,同日午前9時15分の時点でのCPK値(クレアチンホスホキナーゼ,筋肉の代謝に必要となる筋肉中の酵素)は561にすぎなかった。

(6)  一郎は,同日午後1時50分ころ,突然顔色不良に陥り,口唇にチアノーゼを呈し,同日午後1時55分ころには,陥没呼吸が顕著になり,肺への空気の入りが非常に悪化したため,乙川医師は,一郎に酸素マスクを装着し,3リットルの酸素投与を開始し,酸素テントに収容した。また,一郎に対し,副腎皮質ホルモン剤,気管支拡張剤及び去痰剤の投与を開始した。さらに,心拍モニターを装着して心電図の管理を開始した。

乙川医師は,同日午後2時30分ころ,心電図上,一郎の脈拍数が230台であり,QRS幅(心室の収縮活動に要する時間)がやや広くなったことを確認した。また,一郎の胸部正面レントゲン写真を撮影し,この結果,両肺野に陰影が認められること,心肺比が50.8パーセントであり,心拡大所見が認められないことを確認した。両肺野の陰影について,乙川医師は,肺炎による陰影,又は疾患を原因とする鬱血による陰影を疑ったが,明確な判断はできなかった。

乙川医師は,同日午後2時34分,一郎に対し,初めて血液ガス分析検査を実施した。その結果,一郎の酸素分圧は70mmHg,炭酸ガス分圧は45.7mmHg,血液酸性度は7.101であり,低酸素状態にあり,血液が酸性に傾いていることが認められた。

(7)  一郎は,同日午後3時55分,眼球を上転させ,頭を震わせるようなけいれん症状を呈した。乙川医師は,同日午後3時57分,一郎に対し,2回目の血液ガス分析検査を実施した結果,一郎の酸素分圧は153.1mmHg,炭酸ガス分圧は41.6mmHg,血液酸性度は7.186であり,酸素分圧は回復したが,血液酸性度はさほど改善されていないことが認められた。

一郎は,同日午後4時20分ころ,QRS時間が0.132秒と計測され,正常とされる0.12秒より若干長い数値となった。また,午後4時39分ころ,心電図において,不正脈が現れ,心拍数は235/分となり,同日午後4時50分ころ,眼球上転,四肢硬直の症状が出現した。乙川医師は,酸素分圧が改善しているにもかかわらず,一郎の症状が改善しないことから,一郎の症状を喘息発作のみでは説明できないと考え,脳症による痙攣を疑い,同日午後4時55分ころ,抗けいれん剤アレビアチンを一郎に投与したが,四肢硬直の症状は持続していた。乙川医師は,同日午後5時25分ころ,一郎に対し,アレビアチンを投与するとともに,強心剤セジラニドを投与したところ,一郎の四肢硬直はある程度改善された。

乙川医師は,同日午後5時58分,一郎に対し,3回目の血液ガス分析検査を実施した。その結果,一郎の酸素分圧は117.3mmHg,炭酸ガス分圧は37.7mmHg,血液酸性度は7.245であり,酸素分圧が良好であり,炭酸ガス分圧も正常値まで下がっているが,血液酸性度はさほど改善されていないことが認められた。

(8)  丙田三郎医師は,同日午後6時ころ,被控訴人甲山太郎に対し,一郎の病状について説明を行った。このとき丙田三郎医師は,同年1月2日の入院時,一郎の症状は単純な喘息性気管支炎であったが,同月4日の胸部レントゲン写真の所見では,一郎は気管支炎に加えて一部肺炎に罹患していると考えられたため,2種類の抗生剤を投与して,肺炎の治療を行っていたこと,一郎の症状はウィルス感染であるので,ガンマグロブリンという薬しか効果がなく,それを同月6日から投与していること,同日昼に一郎の病状が急変した際,一郎はチアノーゼ,呼吸困難及びアシドーシス(酸性血症)を起こしていたが,現在は血中の酸素濃度が上昇し,炭酸ガス濃度が下降しているので,一郎の症状が単純な喘息又は肺炎によるものであるとすると,危機状態は脱しているが,一郎が脳炎を起こしている可能性があり,その場合には予後が悪くなる危険もあるので,現在経過を観察している旨の説明を行った。

一郎は,同日午後6時25分ころ,眼球上転,四肢硬直の症状が出現し,心拍が停止した。乙川医師は,心臓マッサージ,挿管,電気ショック等の蘇生措置を行ったが,午後7時29分,一郎は死亡した。

なお,被控訴人らが拒否したため,一郎の解剖は行われなかった。

2  争点(1)(一郎の死亡の原因)について

(1)  そこで,一郎の死亡原因について,まず被控訴人らが主張する低酸素血症による心不全(心筋障害)及び循環器障害の可能性,次に控訴人が主張するウイルス性心筋炎の可能性の順に,検討する。

(2)  被控訴人らが主張する低酸素血症による心不全(心筋障害)及び循環器障害の可能性について

証拠(甲17ないし20,乙32)及び弁論の全趣旨によれば,低酸素血症による心筋障害,多臓器不全についての医学的知見は,次のとおりである。

ア 血液中の酸素の量が正常より少ないことを低酸素血症といい,成人と小児の場合(新生児(出生から4週間までの子のことをいう。)を除く。),80mmHgより少ない酸素分圧がその基準となる。低酸素血症により,肺血管抵抗の上昇,多血症による血液の粘度の上昇,心拍出量の増加など心臓に対する負担が増加し,血圧は一般に上昇し,頻拍が生ずる。重症な低酸素血症の場合,上記に加え,心収縮力の低下,伝導障害という循環器系への影響を及ぼし,再重症の場合には心停止にまで至る。チアノーゼは,低酸素血症がかなり進行してから生じる。

イ また,動脈血の酸素分圧が60mmHg以下の場合が呼吸不全と定義され,酸素吸入が必要であるとされる。

ウ 多臓器不全とは,肝臓,腎臓,心臓,肺臓,脳等の生命維持臓器が二つ以上同時に,あるいは連鎖的に障害されていく,急性で重篤な病態をいう。

呼吸不全は,急性,慢性にかかわらず,他臓器の障害を伴う。呼吸不全の診断は,病歴の聴取と身体所見の把握により呼吸不全を疑い,動脈血液ガス分析を施行することで可能となる。

以上の医学的知見に基づいて検討すると,乙川医師がはじめて一郎に酸素投与をはじめた平成6年1月6日午後1時50分ころの44分後である午後2時34分時点での一郎の酸素分圧は70mmHgであったことが認められるから,一郎は,酸素投与前はそれより低い酸素分圧であって,低酸素血症の状態にあり,その状態がある程度の時間継続していたと推認できる。そして,上記1の認定のとおり,一郎には,同日午後1時50分,口唇にチアノーゼが出現していたのであるから,その時点における動脈酸素分圧はチアノーゼの出現時における動脈酸素分圧である16ないし49mmHg程度であった(甲18,160頁)と推認することができる(甲15,16,18)。

そして,上記のとおり,動脈血酸素分圧が60mmHg以下のときは呼吸不全とされているから,平成6年1月6日午後1時50分の時点で一郎が呼吸不全の状態にあったことは明らかである。

そうすると,一郎は,重篤な低酸素血症による呼吸不全のため,多臓器不全の状態に陥り,その結果心不全を起こし死亡するに至ったとする被控訴人らの主張は,上記医学的知見及び上記認定事実と矛盾するところもなく,その可能性を一応是認することができるというべきである。

これに対し,控訴人は,全身が同一程度の低酸素血症にさらされると,一番はじめに現れるのは脳障害であるところ,一郎は,同日午後1時50分に心障害がはじめて出現し,その2時間5分後である午後3時55分に眼球上転,頭をふるわせるなどの脳障害が生じているから,一郎の死亡原因は,低酸素血症による心不全(心筋障害)及び循環器障害とは考えられない旨主張する。

しかしながら,控訴人が主張する,眼球上転,頭をふるわせるなどの症状の原因は,脳障害に限られるものではないし,他に,一郎において,脳障害よりも心障害が先行して生じていたことをうかがわせる証拠はないから,控訴人の上記主張は,その前提となる事実が認められず,採用できない。

また,証人戊野五郎は,低酸素血症によって心筋に障害を与え,心不全に至る症例はほとんどない,一郎に1月4日以降,ある程度の呼吸困難が生じていたとは考えられるが,それが心筋に障害を与え,心不全を引き起こした可能性は低い旨証言する。

しかしながら,上記証言の内容は具体的な論拠が示されていないばかりか,根拠とする「ある程度」とはどの程度であるのか明確でないから,上記証言の結論部分については,直ちに採用することができない。

以上のとおり,被控訴人が主張する,低酸素血症による多臓器不全に基づく心不全(心筋障害)によって一郎は死亡したとの可能性を一応是認することができるものというべきである。

(3)  次に,控訴人が主張するウイルス性心筋炎の可能性について検討する。

証拠(乙7,8,15ないし18,20ないし26,31(枝番号を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,心筋炎及びウイルス性心筋炎についての医学的知見は,次のとおりである。

ア 心臓が炎症過程にある状態を心筋炎といい,その原因としては,臨床的には感染が大半を占め,感染の原因としてウイルス,リケッチア,真菌,寄生虫などが知られている。欧米や日本における心筋炎の多くはウイルスによるものである。

イ 急性心筋炎は,何らかの病因により心筋に炎症性障害を来たし,しばしば心外膜にも炎症が波及する疾患である。無症候であるもの,軽度の感冒様症状にとどまるもの,急速進行性に致死性不整脈やポンプ失調を生じて心原性ショックに陥り,容易に心性危機に瀕し,ときに死亡する劇症型心筋炎まで多彩な病態を呈する。

ウ 急性心筋炎においては,急性期には約70パーセントの割合で心拡大が認められ,重症例では心拡大に加え,肺うっ血や胸水が出現するのが一般的である(乙26)。心筋炎に特異的な心電図所見はないものの,ST-T波の異常(特に,ST上昇や陰性T波)などが高頻度で現れる(乙16,17,26)。重症例では,QRS幅(心室の収縮活動に要する時間のことであり,時間が長くなることは,心室内伝導系に異常があることを意味する。)が延長した伝導障害など高度の心筋障害所見が主体である。

そこで,以上の医学的知見を前提にして,控訴人が一郎の死亡原因として主張するウイルス性心筋炎の可能性について検討する。

上記1認定のとおり,一郎の血清中のCRP値が1月6日午前の時点で1.0mg/dlに達していたこと,同日午後2時30分ころ,心電図によれば,一郎の心拍数が1分間に230に達していたこと,QRS幅がやや広めになったこと,一郎は,同日中,たびたび眼球上転させ四肢硬直し,痙攣を起こしていたことなどの事実が認められる(乙6,7)。

しかしながら,以上の諸事実は,一郎の心機能に何らかの障害が生じていたことを推測できるにとどまり,それが,低酸素血症による心機能の障害によるものなのか,ウイルス性心筋炎によるものなのかを決する有力な資料とまではいえないというべきである。そして,次に検討するとおり,一郎がウイルス性心筋炎に罹患していたこととは相反する下記事実が認められる。

すなわち,ウイルス性心筋炎においては,心電図上,ST波上昇が高頻度で現れる(上記医学的知見)ところ,一郎の心電図上にはST波上昇の所見は認められなかった(証人丁谷四郎,証人戊野五郎)こと,ウイルス性心筋炎の急性期には約70パーセントの頻度で心拡大が認められ,重症例では心拡大に加え,肺うっ血が出現するのが一般的である(上記医学的知見)ところ,一郎には心拡大及び肺うっ血の徴候はいずれもなかった(乙6,証人丁谷四郎,証人戊野五郎)こと,激症性ウイルス性心筋炎においては細胞壊死を伴うから,CPK(クレアチンホスホキナーゼ,筋肉の代謝に必要となる筋肉中の酵素であり,心筋が壊死すると血液中に漏れ出て血中の数値が急激な上昇を示す。)の値は5000ないし6000IU/lとなる(弁論の全趣旨)ところ,上記1認定事実のとおり,一郎のCPK値は,平成6年1月6日午前9時15分の時点で561IU/lにすぎず(正常値は30ないし170IU/l,乙31),強い心筋炎が起こった状態ではなく,あっても軽度のもので(甲14),これはいまだ細胞壊死は発生していなかったことを示していることに加えて,江別総合病院の医師は,何ら一郎にウイルス性心筋炎が発症したと誤診した検査,治療を実施していないこと(証人戊野五郎,弁論の全趣旨),以上の事実が認められる。

以上の事実を総合すると,一郎がウイルス性心筋炎に罹患していたと認めるには大きな疑いが残るというべきである。

(4)  まとめ

以上検討のとおり,一方で,被控訴人が主張する,一郎の低酸素血症に起因する心不全(心筋障害)による死亡の事実の可能性を一応矛盾なく是認でき,他方で,一郎がウイルス性心筋炎に罹患していたと認めるには大きな疑問が残ること,他に一郎の死亡原因が見当たらないことを併せ考えると,一郎は,低酸素血症による心不全(心筋障害)及び循環器障害に陥って死亡したものと認めるのが相当であるといわなければならない。

3  争点(2)(控訴人(医師)の過失)について

上記認定事実によれば,一郎は,再入院時である平成6年1月2日,38.8度の高熱を発しており,脈拍数が156/分,呼吸数が72/分であり,喘鳴,陥没呼吸及びチアノーゼが認められれ,呼吸状態が悪化し,湿性咳も出ており,初回の入院時に比べて症状が悪化していた。このように,発熱と呼吸困難により入院し,その後症状が解消されないまま退院させた患児の症状が初回の入院時よりも悪化し,数日後に再入院を余儀なくされるに至った場合,担当医師は,初回の入院時の診断を再検討し,上記のような再入院時の症状に鑑み,患児が低酸素血症に罹患していることを疑診し,直ちに血液ガス分析検査,経皮酸素モニター,胸部レントゲン写真撮影等の検査を実施して低酸素血症罹患の有無ないし程度を診断し,ガンマグロブリン,副腎皮質ホルモン剤,気管支拡張剤等を投与するとともに,患児の呼吸困難状態及びこれに伴う低酸素血症を改善するため,酸素テント収容,酸素マスク装着,人工呼吸器装着等の方法により呼吸管理措置を緊急に実施すべき注意義務があった。

しかしながら,乙川医師は,一郎の症状を軽視し,喘息性気管支炎に過ぎないと診断して,一郎の再入院時,血液ガス検査,酸素分圧測定,胸部レントゲン写真撮影等の検査を怠ったため,一郎が低酸素血症に罹患していたことを看過し,一般的に処方される守備範囲の広い抗生剤や解熱剤を漫然と投与したに過ぎず,適切な治療を怠ったものである。乙川医師は,医師としての注意義務を尽くしていれば,一郎が低酸素血症に罹患していることを把握できた上,適切な検査,治療及び呼吸管理措置を行うことにより,一郎の死亡を回避することが可能であったというべきである。

そうすると,乙川医師に医師として適切な検査及び治療を実施しなかった過失があることは明らかで,この乙川医師の過失と一郎の死亡との間に相当因果関係のあることも明らかといわなければならない。

4  争点(3)(被控訴人らの損害)について

(1)  逸失利益 2103万5926円

一郎は,死亡当時0歳であったところ,その就労可能年数は,18歳から67歳までの49年間であると認めるのが相当であり,基礎収入については,生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性がないと認めるべき特段の事情も見当たらない(なお,一郎は,生来の漏斗胸であったが,そのことのゆえに,一郎が上記の平均賃金を得られない蓋然性があると認めることはできない。)から,一郎の死亡時である平成6年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者全年齢平均賃金の年収557万2800円と認めるのが相当である。そこで,生活費として50パーセントを控除し,ライプニッツ係数を用いて中間利息を控除すると,一郎の死亡当時における得べかりし利益は,次の計算式により算出される2103万5926円(円未満切り捨て。以下同じ。)と認めるのが相当である。

(計算式)

557万2800円×(1−0.5)×7.5495

(ライプニッツ係数)

67年間の係数19.2390

18年間の係数11.6895

19.2390−11.6895=7.5495

(2)  慰謝料 2000万円

一郎の年齢,死亡に至る経緯,死亡の態様,控訴人側の過失の態様等諸般の事情を考慮すると,一郎の死亡による慰謝料は,2000万円と認めるのが相当である。

(3)  相続

被控訴人らは,一郎の死亡により,それぞれ上記逸失利益及び慰謝料を合計した4103万5926円の2分の1に相当する2051万7963円の損害賠償請求権を相続により取得した。

(4)  葬儀費用 100万円

弁論の全趣旨によれば,被控訴人太郎が一郎の葬儀費用を支出した事実を認めることができ,その額は100万円が相当である。

(5)  弁護士費用

本件事案の内容その他訴訟の審理経過及び認容額等に照らすと,控訴人の不法行為と相当因果関係のある被控訴人らの弁護士費用は,それぞれ250万円と認めるのが相当である。

5  以上によれば,被控訴人らの請求を原判決主文掲記の限度で認容し,その余の請求を棄却した原判決は相当であるから,本件控訴はいずれも理由がないものとして棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官・坂本慶一 裁判官・甲斐哲彦及び同・石井浩は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官・坂本慶一)

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