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札幌高等裁判所 平成14年(う)137号 判決 2003年9月02日

主文

原判決を破棄する。

被告人を無期懲役に処する。

押収してあるカッターナイフ1本(平成14年押第7号の3)及びカッターナイフ様の刃の破片3片(同号の6)を没収する。

理由

本件控訴の趣意は,主任弁護人笹森学及び弁護人三木明連名作成の控訴趣意書並びに主任弁護人作成の控訴趣意書の訂正報告書に,これに対する答弁は,検察官慶徳榮喜及び同徳田薫連名作成の答弁書に,それぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。

第1訴訟手続きの法令違反の控訴趣意について

論旨は,要するに,原審は,十分な審理を尽くさず拙速に審理を急いで判決を言い渡し,情状に関する事実について十分な裁判及び弁護を受けるべき被告人の憲法上の権利等を侵害したものであって,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続きの法令違反がある,というのである。

検討するに,所論は,被告人が起訴されてから原審判決までの期間や公判審理回数,審理の内容,原審弁護人の弁護活動等につき種々論難して原審の審理が不十分であったというが,所論指摘の点は,原審に審理不尽があったことを何ら根拠付けるものではない。原審は,被告人質問を実施し,原審弁護人から請求のあった被告人作成の手紙を採用し取り調べ,最低限の情状に関する審理も行っているのであって,原審に審理不尽という訴訟手続きの法令違反があったということはできず,論旨は理由がない。

第2法令適用の誤りの控訴趣意について

論旨は,要するに,本件では自首が認められるのに自首減軽をしなかった原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。

検討するに,確かに本件では自首が成立し,後述するとおりこの点は被告人の刑責を考えるに当たり重要な要素ではあるが,法定刑の最下限を下回る刑を科する場合を除き,あくまで自首減軽するかどうかは裁判所の裁量に委ねられており,本件において自首減軽をしなかった原判決に法令適用の誤りがあるとはいえない。論旨は理由がない。

第3量刑不当の控訴趣意について

論旨は,要するに,原判決は被告人に死刑を宣告したが,その量刑は,その判断の前提となる事情,すなわち本件の罪質,犯行の動機,自首した動機等に関して誤った判断,評価を下しているほか,被告人が,自首していること,真摯に反省していること,被告人に犯罪性向はなく,矯正の可能性があることなどに照らすと,重すぎて不当である,というのである。そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果も合わせて検討する。

本件に至った経緯,犯行の態様等は,概ね原判決が詳細に説示するとおりであり,その概要は次のとおりである。

被告人は,平成8年3月に高校を卒業し,地元の海運荷役会社に就職した。被告人なりに真面目に働いてはいたが,被告人の行動が緩慢であるなどとして同僚らからヘルメットの上から頭をこづかれるなどされるようになり,それが嫌であったため,そのようなことをする同僚らと同じグループで作業日程が組まれていることが分かると,当日の朝になって会社に連絡をして休むようなことがたびたびあった。このようなことなどから被告人は仕事を休みがちになっていたが,平成13年7月16日から18日まで無断欠勤したことから,同月21日会社から解雇する旨告げられ,同月31日付けで退職した。

被告人は,解雇を通告された後は,自宅の自分の部屋でアニメのビデオを見たり,テレビゲームをするなどし,家族とはほとんど顔を会わさない生活を送っていた。

犯行当日である平成13年8月8日,被告人は,甲市内に行って,ビデオを借りたり漫画本を購入しようと考えたものの,所持金がなく,また甲市内に行くには被告人がローンを組んで購入した自動車であるa車をいつも使用していたが,母親がa車に乗って出掛けていたため,母親が帰ってきたら小遣いを貰い,a車で甲市内に行こうと考え,母親の帰りを待っていた。しかし,昼過ぎになっても母親が帰宅せず,連絡をとろうとして母親の携帯電話に電話したが応答がなかったため,被告人は,通勤などに使用していた自動車であるb車を運転して約1時間ほど母親の居そうな場所を探したが見つからず,燃料もほとんどなくなったこともあって,同日午後2時20分ころ,自宅に戻ることにし,いつも駐車していたA方の北側空き地にb車を駐車した。

被告人は,駐車した際,A方前にいつも駐車しているA方の自動車がないことに気付き,同人方は留守ではないかと考えた。被告人は,母親を見つけることができず,小遣いが貰えなかったことや甲市内に出掛けるための車がないことに苛立つとともに,被告人が仕事を辞めて収入がなくなったことから,今後母親から小遣いをもらえないかもしれないと考え,ビデオを借りたり漫画本を購入するための金をどうしても手に入れたくなり,留守であると考えたA方に侵入して現金を窃取しようと決意した。

そこで,被告人は,変装のため車内にあった合羽に着替え,A方が本当に留守であるかどうかなどを確認するためA方周辺を見回り,A方で普段使っている車が2台とも家の前になく,同人方から物音も聞こえなかったので,A方は子供を含め留守であると思った。

被告人は,b車に戻り,指紋を残さないための軍手,顔を隠すための目出し帽を準備し,もし人に発見された場合相手を脅かして逃走を図るため,カッターナイフを用意し,これらをポケットに入れ,靴も履き替えた上でA方に向かった。なお,これらはいずれも被告人が仕事に使うためb車に積んでいたものであった。

被告人は,平成13年8月8日午後2時25分ころ,A方1階8畳間の鍵がかかっていない出窓から室内に侵入し原判示第1の住居侵入に及んだ。

被告人は,侵入後,目出し帽をかぶり,A方2階の居間に金目のものがあるかも知れないと思い,人がいないことを確認しようと考え,2階に上ったところ,居間の奥にある洋室のベットの上にBがいるのに気付いた。被告人は,逃げる時間を稼ぐためにBを脅そうと考え,Bに近付き,泣き出したBにカッターナイフを取り出して突きつけ,黙れなどと言って脅かしたが,Bは泣きやまず,さらに同室内にいたCとDも泣き出した。被告人は逃げ出すことにして侵入した窓に向かったが,その途中洗濯物が目に入り,とっさに下着泥棒に見せかけようと考え,下着を手に取って窓から外に逃げ出し,目出し帽を脱ぎ,b車を駐車していた前記場所まで戻った。そのとき,被告人は,人に見られていないかどうかを確認するため周囲を見回したところ,A方2階窓からBらが自分の方を見ているのに気付き,素顔を見られ,このままでは警察に捕まってしまうと考え,とっさにBらを殺害しようと考えた。

被告人は,同日午後2時30分ころ,先ほどの窓から再びA方に侵入したところ,Bが電話機の前にいるのを認め,警察か親に電話しようとしているのだと思い,これを阻止するため近づくと,Bが泣きながら,警察に電話をすると言ったので,電話をするなと怒鳴ると,Bが玄関に向かって逃げ出したことから,Bを殺すしかないと決意し,Bを押し倒し,左手でカッターナイフを取り出し,それで同児の胸を2,3回突き刺した。

Bに対する犯行の途中でカッターナイフの刃が折れたため,被告人は,これではBを殺せないと思い,包丁で刺殺することにし,A方台所から包丁を取り出し,これを手に持って戻った。その間にBは外に逃げ出した。被告人は,Bが見当たらなかったため,同児を探して玄関に向かうと階段近くに泣きながら立っていたCとDがいるのを発見した。被告人は,CとDも殺さなければならないと考え,まず,Cの胸部を包丁で数回突き刺した後,Dの胸部を数回突き刺した上,倒れたDの背中を数回突き刺したが,Cの方を見ると,Cがまだ立っていたので,さらにCの胸部,腹部等を数回突き刺すなどし,原判示第2の各犯行に及んだ。Dは即死し,Cも犯行の約1時間半後に死亡し,Bは一命をとりとめたものの,全治約1週間を要する傷害を負った。

被告人は,上記犯行後,さらにBを探していたが,家の外にBがおり,男性と話をしているのを認め,警察に通報されるかもしれないなどと考え,A方から逃走した。

被告人は,逃走途中,大変なことをしたという思いと,逃げ切れないという思いから,自首しようかと迷いながら歩いていたところ,偶然母親と出会った。母親は,直前に自宅付近で強盗殺人事件があったということを聞いていたことから,被告人に誰か見なかったかと尋ねたが,被告人が黙っていたため何気なく「あんたでないでしょう。」と尋ねた。それでも被告人は黙っていたため,母親は不安になり,もう一度尋ねると,被告人は犯行を打ち明け,母親から自首しなさいと言われたことから自首することを決意し,同日午後3時30分ころ,警察署に出頭して自首した。

本件は,2人を殺害し,1人に傷害を負わせたもので,その結果が極めて重大かつ悲惨であることは多言を要しない。本件の特異な点であり,悲惨さを際立たせているのは,被害者がいずれも幼な子であったという点である。傷害を負ったBは当時6歳,死亡した2人に至っては当時僅か5歳と2歳であったのである。被害幼児らは最も安全であるはずの自宅で兄弟姉妹仲良く留守番をしていたところ,突如乱入した被告人にいわば滅多刺しにされたものである。両親に助けを求めることもできないまま惨殺され,無限の可能性と希望に満ちた人生を僅か5年で終えざるを得なかったCと僅か2年で終えざるを得なかったDの無念さ,苦しみは想像を絶するものがある。その場面に思いを致すとき,誰もがもはや言葉を失うであろう。余りにもあわれで不憫である。Bは幸いにも一命をとりとめたが,受けた恐怖心,肉体的,精神的苦痛は殺害された幼児らに勝るとも劣らないものである上,今後容易に消し去ることのできない心の傷を負ったものである。筆舌に尽くしがたい苦しみを受けているのは被害幼児らの両親も同様である。愛情をもって育て,可愛い盛りの子供を突如奪われた両親の喪失感,悲嘆は察して余りあるものがある。原判決が説示するとおり,被害幼児らの両親の被害感情が峻烈であり,被告人の極刑を望んでいるのも親としての心情を考えればまことに無理からぬものがある。なお,後記のとおり訴訟上の和解が成立しているが,被告人の極刑を求める気持ちに変わりはない。

原判決が説示するとおり,一般に,人は,あどけない幼児を目の前にしたとき,危害を加えることをためらうものである。しかるに,被告人は,何の躊躇もなく,泣いているBをカッターナイフで突き刺し,その刃が折れたのに犯行を断念することなく,反対にBを確実に殺害しようとして包丁を持ち出してきたが,Bは見当たらず,階段付近でCとDと行き会うや同児らの身体を包丁で滅多刺しにしているのである。Cは胸腹部に11か所,背部に5か所,上肢に6か所の刺切創等を,Dは胸腹部に7か所,背部に5か所の刺切創等を負っているが,これらの傷は,被告人が多数回にわたり手加減することなく包丁で突き刺したことを示している。無垢の被害幼児3名に対し,執ように刺突行為を続けた被告人の行為は,冷酷で残虐非道の極みというほかない。

被告人は,母親が戻ってくるまで我慢することができず,ビデオを借りたりなどする金が欲しいとの気持ちだけからA方に現金を窃取する目的で侵入したものである。そして,被告人は,Bらに素顔を見られたため,このままでは警察に捕まってしまうと考え,いわば口封じのため被害幼児らの殺害行為に及んだものであって,原判決が説示するとおり,その動機は極めて短絡的,自己中心的であり酌量の余地は全くない極めて悪質なものである。弁護人は,原判決が,自由気ままな生活を守るために殺害行為に及んだと認定している点につき,被告人の当時の心理状態からしてこのような冷静かつ論理的な判断をなしうる筈はなく,本件は,極限まで緊張,興奮し,合理的判断能力を欠如した被告人が,警察に捕まることへの恐怖心から,障害を除去しようとの原初的生物的な防衛本能に近い反応によって,幼児らを殺傷した事案であり,酌量の余地が全くないとは言い切れないと主張する。確かに,被告人は,素顔を見られたことからパニック状態に陥り,とっさに被害幼児らの殺害を決意したものであって,漫画本を見たりするなどの今までの自由な生活を守りたかったなどという被告人の供述は,後付の考えで供述した可能性は否定し切れない。しかし,警察に捕まりたくないというのは,結果的には今までの生活を守りたいということにほかならないのであって,そのような考えが実際に犯行を決意した当時浮かんだかどうかは動機を評価する上で重要な要素ではなく,警察に捕りたくないとの一心で口封じのため被害幼児らの殺害を決意したという動機自体に酌量の余地がないことは明らかである。また,弁護人は,本件を強盗殺人と認定する余地はない以上,強盗殺人と同一視することは許されないという。本件では,被告人は,窃取目的でA方に侵入し,その犯行による逮捕を免れようと被害幼児らの殺害行為に及んだものであり,強盗殺人は成立しないものの,原判決は,その経緯等も考慮して刑責の重さが強盗殺人に比肩すべきものとしたものであって,強盗殺人と同一視しているものではなく,その判断に不当な点はない。

本件犯行の結果,態様,動機,被害感情等に加え,平穏な町で,白昼幼い子供が2人も殺されたという衝撃的な事件が,地域社会に与えた影響には大きなものがあることも合わせて考慮すると,被告人に最大級の非難が加えられなければならないことは論をまたない。

しかしながら,いわゆる永山判決が示すように,死刑が相当かどうか判断するには,前記の諸事情に加え,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等も考慮しなければならない。そのような事情を考慮しても,犯行の結果,特に殺害された被害者の数,犯行の態様等からみて,極刑がやむを得ないと認められる場合に,死刑の選択が許されるのである。

そこで,被告人のために酌むべき事情をみるに,まず,本件では被告人が自首している。被告人が自首を決意した時期,その理由について,弁護人は,本件犯行を反省し自責の念から母親に会う以前に自首を決意した旨主張し,検察官は,母親に説得され,逃げ切れないという思いから自首した旨主張するが,いずれの主張も採り得ない。自首を決意した理由やその時期についての被告人の供述には変遷があるが,もっとも信用できるのは自首した直後の供述である。自首調書の中で,被告人は,「大変な事をしたと後悔して,たまたま会った母親に人を刺してきた事を話し,警察署に出頭してきた。」「乙神社の公園に包丁等を捨てた後,どうせばれると思い自首しようかと迷って歩いていた時偶然母親の車が通りかかり,母親に自分がやったと正直に話し,警察の前で降ろしてもらった。」旨供述しており,これに被告人に自首するよう勧めたとの母親の供述を合わせ考慮すると,前記認定したとおり,被告人は,大変なことをしたという思いと,逃げ切れないという思いから,自首しようかと迷いながら歩いていたところ,偶然会った母親に自首を勧められ,自首することを確定的に決意したものと認められる。被告人が自首した理由,経緯は上記のとおりであるが,本件のような事案で自首するということは,極刑も予想される場に自らの身を委ねることであるから,自首した理由,経緯如何に関わらず自首したというその事実自体は犯行後の一情状として十分考慮しなければならない。

被告人は,自首後,捜査段階,原審公判,当審公判を通じて事実関係を概ね率直に供述し,自己の非を認めている。確かに,原審公判では,余り思い出したくないと述べるなど,いささか自己の犯した犯行と正面から向き合おうとしない姿勢が見受けられたが,これをもって反省の真摯さに疑問があるとするのは早計であり,少なくとも当審公判ではそのような姿勢は見受けられない。極刑が予想され,現に原判決では死刑が宣告されているのに,被告人が事実関係を概ね率直に供述しているのは,反省悔悟の念の現れということができる。当審公判廷において,被告人は,稚拙な言葉であるが,自分は悪いやつと思っているなどと現在抱いている心情をありのまま吐露し,さらに「自分も死刑になったほうがいいと思っている。」と供述している。これは決して自暴自棄になってなされた供述ではなく,そのような考えに至った理由を問われ,被告人は,「昨日,弁護士さんからCちゃんとDちゃんの写真を見せてもらいました。現場の刺されてる風景とか,そういうのを見せてもらいました。そのことについて,自分がやったことは,自分自身では死刑だと思っています。」と供述しており,自分の残虐非道な行為に思いを致し,自責の念にかられての言葉といえる。その他,被告人は被害幼児らの冥福を祈るなどしており,真摯な反省悔悟の念を抱いているのは明らかである。

幼児2人を殺害し,幼児1人に傷害を負わせたという被告人の行為が残虐非道であることは前に述べたとおりである。しかし,弁護人が指摘するとおり,時を異にして被害者複数を殺害したような場合であれば,矯正が著しく困難な犯罪性向を有しているとの評価も可能になってくるが,本件は,パニック状態に陥ったことに端を発した時と場所を同一とする犯行であり,被告人の行為態様,犯行の結果だけから被告人が矯正困難な犯罪性向を有していると断じることはできない。被告人には,これまで前科前歴はなく,本件犯行まで格段問題のない生活を送ってきている。確かに,解雇を通告された後の被告人の生活態度は怠惰というしかないものであるが,そのような生活を送っていたのは3週間ほどでしかなく,それまではいきなり休むなどいささか無責任な面はあったものの5年余りにわたり安定した職業生活を送っており,怠惰な生活が身についてしまっていたものではない。被告人の平素の行状には格別粗暴非道な点は見当たらず,26歳という年齢も考えると矯正の余地が十分残されている。

さらに,本件犯行は計画的なものとは認められない。窃取目的の住居侵入は,A方が留守であると考えとっさに思い立ったものであり,殺人は,被害幼児らに素顔を見られたことから衝動的に犯行に及んだものであって,冷静に犯罪を計画したものではなく,いわば偶発的な犯行である。なお,検察官は,住居侵入は犯行準備が極めて周到になされた計画性が強く窺える犯行であると主張する。しかし,その主張は当審弁論で突如なされたものであるほか,被告人は,準備したカッターナイフ等はもともと車内に積んであったものと一貫して供述し,検察官の尋問でも揺らいでいないのであって,検察官の主張を採用することはできない。

以上のとおり,本件の結果は極めて重大かつ悲惨であり,犯行態様は冷酷残忍で,動機に酌量すべき余地はなく,遺族の被害感情も峻烈であるが,計画性は認められないこと,自首していること,真摯な反省悔悟の念が認められること,被告人はこれまで前科前歴はなく,平素の行状にも粗暴な点はなく,著しい犯罪性向を有しているとはいえず,若年であることも考えれば矯正の余地を十分に残していること,付随的な事情でしかないが,平成15年8月21日,被告人と被害幼児らの両親の間で,被告人が被害幼児らの両親に対し合計2000万円の支払義務があることを認め,そのうち合計590万円が既に支払われ,残額については月々分割して支払うことなどを内容とする訴訟上の和解が成立していることも合わせて考慮すると,極刑がやむを得ないとまでは認められず,被告人を死刑に処した原判決の量刑は重すぎて不当であり,被告人に対しては終生被害幼児らの冥福を祈らせて贖罪に当たらせるのが相当である。論旨は理由がある。

第4よって,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により当裁判所において更に判決する。

原判決の認定した各事実に原判決が掲げる各法条を適用し,所定刑中,原判示第1の罪につき懲役刑を,原判示第2の1の罪につき有期懲役刑を,原判示第2の2及び3の各罪につきいずれも無期懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるが,第2の2及び3につき無期懲役刑を選択したので,同法46条2項本文,10条により,犯情の重い第2の2の罪の刑で処断して,他の刑を科さないこととして,被告人を無期懲役に処し,没収について同法19条1項2号,2項本文を,原審及び当審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき刑訴法181条1項ただし書をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仲宗根一郎 裁判官 小野博道 裁判官 川本清巌)

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