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札幌高等裁判所 平成15年(行コ)1号 判決 2003年11月19日

控訴人

株式会社A

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

矢野修

髙嶋智

中村憲昭

被控訴人

札幌西税務署長 奥川裕二

同指定代理人

角井俊文

髙橋重敏

天満三樹

横田啓一

杦田喜逸

青山哲雄

小森睦誰

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求める裁判

1  控訴の趣旨

(1)  原判決(変更判決により変更された後のもの。以下同じ。)中、控訴人敗訴部分を取り消す。

(2)  被控訴人が控訴人に対し平成8年12月24日付けでした次の処分を取り消す。

ア(ア) 平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、本税額1681万5900円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分のうち同税額42万7000円を超える部分(ただし、平成10年6月29日付け裁決で取り消された部分を除く。)

(イ) 平成5年4月1日から平成6年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、本税額1753万5600円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分のうち同税額54万2500円を超える部分(ただし、平成10年6月29日付け裁決で取り消された部分を除く。)

(ウ) 平成6年4月1日から平成7年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、本税額3417万0300円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分のうち同税額25万9000円を超える部分(ただし、平成10年6月29日付け裁決で取り消された部分を除く。)

(エ) 平成7年4月1日から平成8年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、本税額4786万3600円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分及び重加算税の賦課決定処分のうち、79万4000円を超える部分

イ(ア) 平成4年4月1日から平成5年3月31日までの課税事業年度の法人特別税の更正処分のうち、本税額32万1400円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分のうち同税額1万0500円を超える部分(ただし、平成10年6月29日付け裁決で取り消された部分を除く。)

(イ) 平成5年4月1日から平成6年3月31日までの課税事業年度の法人特別税の更正処分のうち、本税額34万4500円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分のうち同税額1万0500円を超える部分(ただし、平成10年6月29日付け裁決で取り消された部分を除く。)

ウ(ア) 平成4年4月分ないし同年7月分、同年9月分及び同年10月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分

(イ) 平成4年8月分、同年12月分、平成5年11月分、平成6年2月分、同年4月分、同年10月分ないし12月分、平成7年1月分ないし同年3月分及び同年6月分ないし12月分の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分並びに平成4年8月分、平成5年11月分及び平成6年4月分の各月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし、平成10年6月29日付け裁決で取り消された部分を除く。)

(3)  訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。

2  控訴の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第2当事者の主張

本件における当事者双方の主張は、次のとおり加えるほかは、原判決の「事実」中の「第2 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、略称は、事実及び理由のいずれにおいても、原判決にならうものとする。)。

1  控訴人の主張

(1)  甲口座について

甲口座は、控訴人の簿外預金口座であると推認することはできない。

その理由は、<1> 甲口座は、平成2年2月22日に開設されているところ、同口座による運用資金の原資は、主に、平成元年10月ころから同口座開設までの間に振り出された本件手形(すなわち、Cが振り出した手形)の取立金であり、この間に振り出された本件手形の資金源が、控訴人のものであるとする証拠がないこと、<2> 多数回にわたってされているCに対する融資とこれに対応する本件口座からの出金との間にはいずれも相当の差額があるところ、その差額が、控訴人の資金によって補われたものは、平成4年6月29日及び同年7月30日にされたCに対する融資のほかにはないこと、<3> また、その差額が、甲の口座に流入した事実はないこと、<4> 平成4年6月30日に、E信用金庫手稲前田支店の控訴人の簿外預金口座から339万8671円が払い戻され、これを原資として、Dに対する融資(D手形の割引の方法による融資)がされ、同年9月に、甲口座にその手形の取立金350万円が入金されているが、この事実は、甲個人が、控訴人の簿外預金口座から資金を払い戻してD手形の割引をし、取立の段階に至って甲口座にその取立金が入金され、これによって資金の混在が生じることになったものであるが、この事実は、甲口座が控訴人の簿外預金口座であると推認する理由とはならないこと、<5> 甲は、昭和62年3月時点で7900万円の定期預金を有し、これを同年6月30日までに解約しているが、これを失ったとはいえず、また、平成3年3月末時点において、控訴人に対し5469万9093円の貸付金を有していたものであって、控訴人よりもはるかに贅沢な資金を有していたことを考慮すると、甲口座は、控訴人の簿外預金口座ではなく、甲個人の預金口座とみるべきである。

(2)  E信用金庫乙口座、丙口座及びF銀行乙口座について

E信用金庫乙口座、丙口座及びF銀行乙口座は、Lの代表取締役である戊が支配管理するものであって、これらの口座を利用してされた手形割引の結果得られた受取利息が控訴人に帰属する理由はない。

2  被控訴人の認否反論

控訴人の主張は争う。甲口座は、控訴人の簿外預金口座であると推認できるものであり、また、E信用金庫乙口座、丙口座及びF銀行乙口座は、控訴人の計算の下にあるものであって、これらの口座を利用してされた手形割引の結果得られた受取利息は、控訴人に帰属する。

第3当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の本件請求は原判決が認容した限度で理由があるが、その余は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり、改め、削り、加えるほかは、原判決の「理由」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決41頁21行目の「Q」を「Q」と改める。

2  原判決46頁18行目の「甲口座に流入し」を削る。

3  原判決47頁13行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。

「 控訴人は、甲口座は、控訴人の簿外預金口座であると推認することはできない旨主張する。

しかし、<1> Cとの間の手形割引取引は、昭和62年に開始され、平成元年調査終了時までは、控訴人がしていたものであって、控訴人が受取利息を得ていたこと(原判決41頁)、<2> 甲口座は、平成2年2月22日に開設されているところ、甲口座の開設日から平成4年11月30日までの間に、本件手形の取立金としてCからの入金が77回あったほか、D手形の取立金としてDからの入金もあったところ、Dとの間の手形取引は、控訴人がしていたこと(原判決42頁)、D手形の取立金としてのDからの入金は、この間、8回あったこと(乙第2号証)、<3> 平成4年6月30日に、E信用金庫手稲前田支店の控訴人の簿外預金口座から339万8671円が払い戻され、これを原資として、Dに対する融資(D手形の割引の方法による融資)がされ、同年9月に、甲口座にその手形の取立金350万円が入金されていること(原判決42頁)、<4> 控訴人は、平成元年10月以降のCとの間の手形取引は甲個人がしたものである旨主張するものの、甲個人がその旨の所得税の申告をしたことはないこと(弁論の全趣旨)、<5> 平成4年調査において、控訴人が多額の裏金を蓄積していたことが判明したこと(原判決43頁から44頁)、<5> 甲は、昭和62年3月時点で7900万円の定期預金を有し、これを同年6月30日までに解約しているものの、控訴人は、その資金の行方についての証拠を提出していないこと(原判決46頁)、<6> 控訴人の決算関係書類中には、甲が、平成3年3月末時点において、控訴人に対し5469万9093円の貸付金を有していた旨の記載があるものの(乙第12号証の6)、この記載は、甲がその時点で現実に処分可能な資金を有していたことを意味するものではないことなどの事実を総合勘案すると、甲口座は、控訴人の簿外預金口座であると推認するのが相当である。」

4  原判決50頁7行目の「あった。」を「あった(乙第6号証の1)。」と改める。

5  原判決55頁11行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。

「 控訴人は、E信用金庫乙口座、丙口座及びF銀行乙口座は、Lの代表取締役である戊が支配管理するものであって、これらの口座を利用してされた手形割引の結果得られた受取利息が控訴人に帰属する理由はない旨主張する。

しかし、本件手形融資が控訴人の簿外預金口座と推認される甲口座を用いて始められ、その後、順次、E信用金庫乙口座、丙口座及びF銀行乙口座が用いられてその融資が続けられたものであるところ(原判決54頁、55頁)、本件手形融資が甲口座を用いることからE信用金庫乙口座を用いることに変わった平成4年11月時点で、その資金源の保有者が控訴人からL又はその代表取締役である戊に変わったかどうかについてみるに、原審における控訴人代表者の供述及び証人戊の証言中には、その資金源約1億円について、甲がL又はその代表取締役である戊に貸与した旨の供述及び証言があるものの、その供述及び証言によっても、<1> 借用証書を作成せず、<2> 弁済期の合意をせず、<3> 利息の合意をせず、<4> 元金の返済に関する受領証その他の文書を作成せず、<5> その供述と証言とでは、元金の返済額について食い違いがあるというものであって、その供述及び証言は、これをにわかに信用することができないものであり(原判決71頁、72頁)、他に、平成4年11月時点で、その資金源の保有者が控訴人からL又はその代表取締役である戊に変わったものと認めるに足りる証拠はないから、E信用金庫乙口座、丙口座及びF銀行乙口座は、控訴人の計算の下にあるものであって、これらの口座を利用してされた手形割引の結果得られた受取利息は、やはり、控訴人に帰属するものと推認するのが相当である。」

第4結論

よって、控訴人の本件請求の一部を認容し、その余を棄却した原判決は正当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山﨑健二 裁判官 橋本昇二 裁判官 森邦明)

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