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札幌高等裁判所 平成16年(行コ)12号 判決 2005年3月17日

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人北海道警察本部長が控訴人に対し原判決別紙開示請求文書目録記載の文書について平成13年12月27日にした公文書一部非開示決定(違反者に係る部分を除く。)を取り消す。

(3)  被控訴人北海道公安委員会が控訴人に対し平成15年8月1日にした原判決別紙開示請求文書目録記載の文書につき被控訴人北海道警察本部長がした平成13年12月27日付公文書一部非開示決定についての審査請求に係る裁決を取り消す。

(4)  訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人ら

主文同旨

第2事案の概要

次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。

1  原判決2頁20行目の「違反者の氏名に係る部分」を「違反者に係る部分」と改める。

2  同5頁8行目の末尾に改行して以下のとおり加え,同頁9行目の「カ」を「キ」と,同頁17行目の「キ」を「ク」とそれぞれ改める。

「カ (公文書の不存在の通知)

第17条 実施機関は,開示請求に係る公文書が存在しないときは,開示請求があった日の翌日から起算して14日以内に,当該公文書が不存在である旨の通知をするものとする。」

3  同6頁5行目の「交付日時欄」の次に「(この欄は,交通反則通告書では告知年月日欄と表示され,取締り原票では告知日時欄と表示されている。)」を,同頁7行目の「交通事件原票」の次に「,取締り原票及び告知報告書・交通法令違反事件簿」をそれぞれ加え,同頁12行目の「この欄は」を「(6)及び(7)の欄は」と改める。

4  同7頁4行目の「住所,」を削除する。

5  同9頁10行目の末尾に改行して以下のとおり加える。

「すなわち,本件原処分は,公開対象とされる文書の存在を前提に法定の非開示事由が存在するか否かを判断し,法定の非開示事由の存在を認めて本件公文書の一部について非開示としたものである。これに対し,被控訴人本部長は,本訴においては,本件公文書は本件条例で公開対象とされる文書に当たらないとの理由を追加して主張している。しかし,開示請求された公文書が公開対象とされる文書に当たらない場合は,文書不存在として本件条例17条に基づいて通知すべきなのであるから,被控訴人本部長は本件公文書が開示対象となる文書に当たるか否かについて第1次的な判断権を行使していないことは明らかである。公開対象とされる文書の存在を前提に法定の非開示事由の存否を判断するについては,その存否の理由,根拠事実を差し替えることは認められるが,法定の非開示事由が存在するとしてされた本件原処分の取消訴訟において,被控訴人本部長の第1次的な判断権が行使されていない公開対象とされる文書に当たらないとの理由を追加することは,取消訴訟の訴訟物の範囲を超えるものであって許されない。」

6  同10頁2行目の末尾に改行して以下のとおり加える。

「なお,控訴人は,開示請求文書が公開対象とされる文書に当たらない場合は,文書不存在として本件条例17条に基づく通知をすべきである旨主張するが,本件条例の適用除外文書であれば,その旨の理由を付した文書非開示決定をするのであり,控訴人の主張は失当である。」

7  同12頁3行目の末尾に改行して以下のとおり加える。

「なお,本件公文書には違反者の供述書部分が存在するが,これについて刑事訴訟法198条2項,4項及び5項所定の手続はなされていないから,本件公文書が細分化できない一つの「訴訟に関する書類」であるとすると,本件公文書は全体として違法性を帯び,違憲の疑いすらある。」

8  同12頁15行目の末尾に改行して以下のとおり加える。

「なお,本件公文書の違反者の供述書部分は違反者の意思に基づき違反者自らが作成したものであって,刑事訴訟法322条1項所定の供述書に当たるから,刑事訴訟法198条2項,4項及び5項の手続は問題とならない。」

第3当裁判所の判断

当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。

1  原判決15頁14行目の末尾に改行して以下のとおり加える。

「なお,控訴人は,開示請求文書が公開対象とされる文書に当たらない場合には,文書不存在として本件条例17条に基づく通知がされるべきであることを前提に,被控訴人本部長が本訴において本件公文書が公開対象とされる文書に当たらないとの理由を追加することは許されない旨主張するが,本件条例17条の開示請求に係る公文書が存在しないときとは,その文言に照らし,開示請求に係る公文書が物理的に存在しない場合をいい,開示請求に係る公文書は存在するが,それが本件条例41条の定める本件条例の適用除外文書である場合には,本件条例14条で開示等の決定をすべきであると解するのが相当である(そのように解したからといって開示請求者には何らの不利益もないことは明らかである。)。したがって,控訴人の主張は理由がない。」

2  同15頁20行目の冒頭から同頁24行目の「同公文書は」までを以下のとおり改める。

「刑事訴訟法53条の2に規定する訴訟に関する書類とは,被疑事件・被告事件に関して作成又は取得された書類であると解するのが相当であるところ,交通事件原票及びその付属書類である本件公文書は,刑事事件である道路交通法違反事件を処理するために作成されるものであるから,全体として被疑・被告事件に関して作成された書類であることは明らかである。本件公文書は,」

3  同17頁7行目の末尾に改行して以下のとおり加える。

「また,控訴人は,本件公文書には違反者の供述書部分が存在するが,これについて刑事訴訟法198条2項,4項及び5項所定の手続はなされていないから,本件公文書が細分化できない一つの「訴訟に関する書類」であるとすると,本件公文書は全体として違法性を帯び,違憲の疑いもある旨主張する。しかし,交通事件原票は,反則金不納付等により事件を検察庁に送致する場合に検察庁に送られるものである(乙8)ところ,交通事故原票のうち違反者の供述書部分は,その形式からして,違反者が自らの意思に基づき自ら作成したものであることは明らかであるから,当該事件が刑事裁判に移行した場合には刑事訴訟法322条1項所定の供述書となり得るものであり,交通事故原票の違反者の供述書部分が訴訟に関する書類に当たることは明らかである。そして,当該部分が訴訟に関する書類である限りにおいては,本件原処分の取消訴訟である本件においては,交通事件原票の違反者の供述書部分が控訴人が主張するように刑事訴訟法,憲法に違反するかどうかについて判断するまでもないものというべきである。」

第4結論

よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官 北澤晶 裁判官 石橋俊一)

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