札幌高等裁判所 平成16年(行コ)19号 判決 2005年6月16日
控訴人 甲
同訴訟代理人弁護士 林裕司
被控訴人 小樽税務署長
加藤敏夫
同指定代理人 澤井知子
同 甲賀一郎
同 天満三樹
同 市川光雄
同 行場孝之
同 房田達也
同 山田昌弘
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が控訴人の平成10年分の所得税について平成14年2月22日付けでした更正のうち総所得金額1342万7093円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(審査裁決によって取り消された総所得金額3万5994円、過少申告加算税1000円の部分は除く。)を取り消す。
(3) 被控訴人が控訴人の平成11年分の所得税について平成14年2月22日付けでした更正のうち総所得金額1265万3186円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。
(4) 被控訴人が控訴人の平成12年分の所得税について平成14年2月22日付けでした更正のうち総所得金額1514万5757円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。
(5) 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2事案の概要
次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決4頁8行目から9行目にかけての「簡易な簿記の方法及び記載事項により記録し」を「所得税法施行規則第56条第1項ただし書、第58条第1項及び第61条第1項の規定に基づき、これらの規定に規定する記録の方法及び記載事項、取引に関する事項並びに科目を定める件(昭和42年8月31日大蔵省告示第112号。以下「大蔵省告示」という)の定める簡易な記録の方法及び記載事項により記録(以下「簡易方式による記録」という。)をし」と、同頁13行目の「簡易な簿記の方法で記録されている」を「簡易方式による記録」とそれぞれ改める。
2 同6頁8行目から9行目にかけての「小口現金出納帳」の次に「、控訴人の収入、経費について日々の取引を整理した補助帳簿」を加える。
3 同7頁10行目の「確認できず」を「確認できないし、当審において書証として提出された補助帳簿(甲21、22)は原判決後に作成されたものと推測され」と改める。
4 同8頁13行目の「加えたものである」を「加えたものであり、これらの業務を行うためにBに管理人としてG(以下「G」という。)を置いている」と、同頁16行目の「加重なものであるから」を「加重なものであり、不動産管理会社では管理人を置いて本件管理業務を行うことは通常はないから」と、同頁22行目の「合理性はない」を「合理性はなく、管理人を置いているCについては、管理人を置いている同業者と比準しなければ実態と著しくかい離することは明らかである。」とそれぞれ改める。
5 同9頁5行目の「必要はないのであるから、」の次に「管理人を置いている同業者と比較しなければ実態と著しくかい離するとの控訴人の主張は理由がなく、」を加える。
第3当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決11頁9行目、同頁14行目及び同頁18行目の各「簡易な簿記の方法」をいずれも「簡易方式による記録」と改める。
2 同13頁10行目の「、並びに」から同頁23行目の末尾までを以下のとおり改める。
「並びに大蔵省告示が定めている。具体的な備付帳簿及び記載事項について、同施行規則58条1項は、仕訳帳、総勘定元帳及びその他必要な帳簿を備え、財務大臣の定める取引に関する事項、すなわち、大蔵省告示の別表第一各号(不動産所得に係る取引に関する事項については、別表第一第二号)の表の第一欄に定めるところにより記載しなければならないと規定している。また、正規の簿記(一般的には複式簿記)の原則に従う記録のみならず、簡易方式による記録でもよいが、この場合には大蔵省告示の別表第一各号(不動産所得に係る取引に関する事項については、同別表第一第二号)の表の第二欄に定めるところにより記載しなければならないと規定している。」
3 同13頁25行目の「正規の簿記及び簡易の簿記」を「正規の簿記の原則に従う記録及び簡易方式の記録」と改める。
4 同14頁6行目から7行目にかけての「簿記の原則に従って、整然、かつ、明瞭に記録された帳簿」を「正規の簿記の原則に従って、整然と、かつ、明瞭に記録された帳簿、あるいは簡易方式による記録による帳簿」と、同頁12行目の「G(以下「G」という。)」を「G」とそれぞれ改める。
5 同15頁末行の末尾に改行して以下のとおり加え、同16頁1行目冒頭の「ウ」を「エ」と改める。
「ウ 補助帳簿について
控訴人は、当審において、控訴人の収入、経費について日々の取引を整理した補助帳簿を作成していた旨主張し、甲第21号証及び甲第22号証(補助帳簿)を提出する。しかしながら、前記認定のとおり、控訴人に対する税務調査から原審に至るまで、控訴人がどのような帳簿書類を作成していたかが問題とされていたのに、甲第21号証及び甲第22号証は当審になって初めて提出されたこと、原判決は後記エに認定のとおり、控訴人の総勘定元帳(甲12、13)では平成11年分及び同12年分の家賃及び駐車場代、平成11年分及び同12年分の修繕費、平成12年分の雑費について、個別の各取引ごとの取引年月日、支払先、金額等が明らかとはならない旨判示しているところ、甲第21号証及び甲第22号証には原判決が指摘した上記勘定科目だけが記載されていることに照らすと、甲第21号証及び甲第22号証は、原判決が言い渡された後に作成されたものと推認できるのであり、控訴人の主張は採用できない。」
6 同16頁9行目から10行目にかけての「家賃及び駐車場代(コード番号「4111」の勘定科目)」を「家賃及び駐車場代(コード番号「4111」及び「4112」の勘定科目)」と改め、同頁12行目の「明らかとはならない」の次に「(平成12年分においては、家賃と駐車場代との区別すらされていない。)」を加える。
7 同19頁12行目の「加えたものであるから」から同頁13行目の末尾までを「加えたものであり、その業務を行うために管理人を置いているから、本件管理業務や管理人を置いていることを反映していない抽出基準は合理的ではなく、実態と著しくかい離する旨を主張する。」と改める。
8 同21頁21行目の末尾に改行して以下のとおり加える。
「 なお、上記のとおり、Gは主としてBの管理人として勤務しているところ、同人がCから支払を受ける給与は月額8万円ないし9万円にすぎず(証人G)、しかも、上記のとおり、同人は食材納入やメニュー作成などの食事提供に関する業務、コピー機や自動販売機に関する集金業務など控訴人が管理料を支払うべき業務とは評価できないものにも従事していたことに照らすと、Cが管理人を置いていることについてはこれを比準同業者の抽出基準に反映させなければならない程の特別な事情ということはできず、入居者管理料割合の平均値を求める過程で捨象される程度のものにすぎないものと解するのが相当である。」
第4結論
よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 伊藤紘基 裁判官 北澤晶 裁判官 石橋俊一)