札幌高等裁判所 平成16年(行コ)4号 判決 2004年8月25日
控訴人 A株式会社
代表者代表取締役 甲
訴訟代理人弁護士 佐々木泉顕
同 中原猛
同 沼上剛人
被控訴人 札幌東税務署長
出村政治
指定代理人 田口治美
同 桂井孝教
同 天満三樹
同 市川光雄
同 杦田喜逸
同 青山哲雄
同 小森睦雄
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 控訴人の平成10年12月1日から平成11年11月30日までの事業年度に係る法人税について、被控訴人が平成13年12月21日付けでした、更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
3 被控訴人は、控訴人の平成10年12月1日から平成11年11月30日までの事業年度に係る法人税の減額更正を行え。
4 訴訟費用は、第1、第2審とも、被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は、法人税額算定の基礎とされた保険金収入は控訴人に帰属するものではないことを理由に、控訴人が被控訴人に対し、国税通則法23条2項1号に基づいて法人税の更正請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ、被控訴人が同請求については更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をしたので、控訴人が、被控訴人に対し、同処分の取消し及び職権による減額更正を求めた事案である。
原審は、職権による減額更正を求める部分を不適法として却下し、その余の請求を棄却したので、控訴人が控訴の趣旨記載の裁判を求めて控訴した。
2 前提事実、争点及びこれに対する当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の「1 前提事実」、「2 争点及びこれに対する当事者双方の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決2頁18行目「(乙1、2)」を「(乙1)」に改める。
(2) 原判決3頁4行目から5行目「同月27日、原告に送達された(乙3)」を「同日原告に発送された(乙2)」に改める。
(3) 原判決3頁11行目の末尾に「なお、本件公正証書には執行受諾文言はない。」を加える。
(4) 原判決3頁20行目の「(乙5)」を「(乙4、弁論の全趣旨)」に改める。
(5) 原判決4頁1行目「同裁決書、同月26日、原告に送達された」を「原告は同月26日、その裁決書謄本の送達を受けた」に改める。
第3 判断
1 当裁判所も、控訴人が控訴の趣旨第3項のとおりの減額更正を求める請求は不適法であり、本件通知処分は適法であると考えるが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから、これを引用する。
2 なお、控訴理由について、付言する。
(1) 控訴人は、「公正証書による和解あるいは法律関係の確認は、国税通則法23条2項の『判決と同一の効力を有する和解その他の行為』に含まれることは明らかである」とし、その理由として、国税通則法23条2項の「判決と同一の効力を有する」とは、「判決と同一の証明力を有する」と解釈すべきである旨主張するが、控訴人のこの主張は明文に反する独自の見解であり、採用できない。
(2) 控訴人は、「通知処分の違法は、行政庁が減額更正すべき義務があるにもかかわらず、その義務を履行しないことに基づいているのであるから、処分が取り消された結果、行政庁のなすべき行為の内容は、更正の請求書のとおりであることは明白であって、本件請求は適法である」と主張するが、原判決も指摘するとおり、被控訴人の第一次判断権に属する事項につき、裁判所が介入することは許されないから、控訴人のこの主張も採用しない。
3 まとめ
よって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文とおり判決する。
(裁判長裁判官 末永進 裁判官 森邦明 裁判官 杉浦徳宏)