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札幌高等裁判所 平成17年(ネ)250号 判決 2006年5月11日

控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

サン石油株式会社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

飯野昌男

被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)

同訴訟代理人弁護士

佐藤博文

三浦桂子

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  本件附帯控訴に基づき,原判決主文第4項及び第5項を次のとおり変更する。

(1)  控訴人は,被控訴人に対し,93万円及び平成17年4月から本判決確定に至るまで,毎月25日限り33万円(ただし,毎年11月25日については,39万0200円)を支払え。

(2)  被控訴人の控訴人に対する平成18年以降本判決確定に至るまでの夏期,冬期各賞与の支払請求に係る訴えを却下する。

3  訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その4を控訴人の,その1を被控訴人の各負担とする。

4  この判決の第2項(1)は仮に執行することができる。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決中控訴人の敗訴部分を取り消す。

(2)  上記に係る被控訴人の請求を棄却する。

(3)  本件附帯控訴を棄却する。

(4)  訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

(1)  主文第1項と同旨

(2)  原判決主文第4項ないし第6項を次のとおり変更する。

ア 控訴人は,被控訴人に対し,平成17年4月から,本判決確定に至るまで,毎月25日限り33万円(ただし,毎年11月25日については39万0200円,毎年6月末日限り45万円,毎年12月末日限り48万円)を支払え。

イ 控訴人は,被控訴人に対し,200万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3)  訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人の負担とする。

(4)  仮執行宣言

第2事案の概要

次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」に記載されたとおりであるから,これを引用する。

本件は,控訴人に雇用され,重機運転手として稼働していた被控訴人が,控訴人からされた平成16年3月31日付けの普通解雇(以下「本件解雇」という。)が無効であり,不法行為にも当たると主張して,<1>控訴人に対する雇用契約上の権利の確認並びに控訴人に対し,<2>別紙未払賃金一覧表中の金額欄記載の各給与及び賞与並びにこれらに対する同表支給年月日欄記載の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,<3>平成16年10月1日から本判決確定に至るまで,毎月25日限り33万円宛の給与の支払,毎年6月末日限り45万円宛の夏期賞与及び毎年12月末日限り48万円宛の冬期賞与の支払並びに毎年11月25日限り6万0200円宛の寒冷地手当の支払,<4>不法行為に基づく損害賠償として200万円及びこれに対する解雇の日の翌日である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1  前提となる事実(争いのない事実以外は証拠等を併記)

(1)  控訴人は,ガソリンスタンドの経営,土砂・火山灰・火山礫の採取及び販売等を目的とする株式会社である。

(2)  控訴人の就業規則のうち,普通解雇及び懲戒解雇で,本件に関係のある定めは,次のとおりである(<証拠略>。なお,(四)にいう「第58条第4号」とは懲戒解雇のことである。)。

第54条 会社は次の各号の1に該当する者を解雇する。

(一) 精神若しくは身体に障害があるか又は虚弱のため業務に堪えないと認められる者

(二) 勤務成績又は能率が著しく不良で,就業に適さない者

(三) 正当な理由のない欠勤が引き続き25日以上にわたる者

(四) 第58条第4号に該当する者

(五) その他経営上の事由により会社が解雇を必要と認めた者

第61条 社員が次の各号の1に該当するときは,懲戒解雇に処する。

(八) 重要な経歴をいつわり,その他不正な方法を用いて任用されたことが判明したとき。

(3)  被控訴人は,大型特殊免許を有しており,平成8年6月1日,控訴人に雇用され,車両系建設機械等(いわゆる重機)を運転して,土砂,火山灰等の採取,運搬の業務に従事していた。

(4)  控訴人は,被控訴人に対し,毎月25日に(当日が日曜,祭日に当たるときは,その直前の銀行営業日に),昼食代1万円を含め,給与として33万円を支払い,毎年6月末日限り,夏期賞与として45万円(ただし,平成14年度までは48万円),毎年12月末日限り,冬期賞与として48万円を支払い,毎年11月25日に,寒冷地手当として6万0200円を支払っていた。(<証拠略>)

(5)  被控訴人は,幼少時に左眼を負傷しており,その視力は,右眼が1.2,左眼が0.03(矯正不能)である(<証拠略>)。

(6)  控訴人は,平成16年2月21日,被控訴人に対し,同年3月31日をもって解雇するとの解雇通知書を交付して,被控訴人を普通解雇する旨意思表示した(本件解雇)。解雇通知書には,解雇理由として,「近年視力の減退等に伴い車両の運転に支障が有り,当社業務に不適格でありますので(以下略)」と記載されていた。(<証拠略>)

(7)  控訴人は,被控訴人が,控訴人に対する雇用契約に基づく権利を有することを争っている。(弁論の全趣旨)

2  争点

<1>  本件解雇の有効性

<2>  被控訴人と控訴人との間で雇用契約の合意解除が成立したか

<3>  給与等の支払義務の有無及び額

<4>  本件解雇が不法行為を構成するか

<5>  被控訴人が本件解雇で被った損害

3  争点についての当事者の主張

(1)  争点<1>(本件解雇の有効性)について

ア 控訴人

(ア) 被控訴人は,平成8年6月1日に控訴人に採用される際,その視力障害を秘匿し,「健康状態・良好」と内容虚偽の記載のある履歴書を提出した。このことは,就業規則61条8号の懲戒解雇事由に該当する。なお,当時控訴人の専務取締役であったD(現在の(ママ)代表取締役。以下「D専務」という。)は,後記の本件事故cの後に,被控訴人から,幼少時に左眼を猫にひっかかれたため左眼の視力がほとんどない旨の説明を受け,その視力障害を初めて知った。

(イ) 重機の運転業務には,大型自動車運転業務よりも高度の能力ないし適格性を必要とする。しかるに,両眼視機能が消失した被控訴人には大型免許の取得資格がなく,したがって,被控訴人を重機の運転業務に従事させることは危険であり,被控訴人は,実際に,以下のaないしeのとおり,視力障害に起因する労災事故又は重機の破損事故等を起こした。また,被控訴人が重機を操作して行う積込作業は作業能率が悪いものである。これらのことからすれば,被控訴人は勤務状態及び業務の遂行に必要な能力が著しく不良で就業に適さないといわなければならない。

a 被控訴人は,平成9年2月12日,土砂採取現場での整地作業終了後,ブルドーザーの足回りの土砂を除去する作業中に,土砂採取跡地に転落し,右足首を捻挫した(以下「本件事故a」という。)

b 被控訴人は,平成15年12月中旬ころ,ブルドーザーの運転作業中に,同ブルドーザーの窓ガラスを破損した(以下「本件事故b」という。)。

c 被控訴人は,平成16年1月下旬ころ,大型油圧ショベルの運転作業中に,同重機の車体に穴を開けた(以下「本件事故c」という。)。

d 被控訴人は,同年2月上旬ころ,ショベルローダーの運転中に,同重機にパーキングブレーキがかかっているまま,これを見落として運転し,同重機のブレーキを破損した(以下「本件事故d」という。)。

e 被控訴人は,作業中,重機のバケツをしばしばダンプカーに衝突させた。

(ウ) 被控訴人は,以下のとおり,職場における協調性を欠いていた。

a 被控訴人は,平成15年7月,トラック3台に積込み作業をした後,何も仕事をしていなかったため,D専務が,電話で,「何かすることがあるだろう。」,「それじゃあ,給料泥棒じゃないか。」と言ったところ,立腹して,勤務終了後,同僚たちのいる前で,D専務に対し,「仕事中にわざわざ電話をかけて給料泥棒というのは,いったいどういう了見なのか。」,「何か事ある毎に,そういう子供みたいなことしか言えないのか。」と言った。

b 被控訴人は,平成16年2月19日,パワーショベルを操作して,火山灰層の表土部分を除去する作業を行っていたところ,作業方法を変更するようにとのD専務からの業務命令に従わず,他の3名の従業員のいる前で,同専務に対し,「俺はプロだ。お前みたいなど素人に何が分かる。」,「女の腐ったみたいに,いつもブツブツ言う。」,「俺は辞めるんだから,解雇通知を書面で出せ。」等と暴言を吐いた。

(エ) 本件解雇は,以上のような,被控訴人の懲戒解雇事由にあたる行為(前記(ア)),視力障害による重機運転業務の不適格性(同(イ))及び協調性の欠如(同(ウ))を理由として,就業規則54条1,2,4,5号に基づき行われたものであって,有効である。

なお,労働安全衛生法によれば,事業者には,職場における労働者の安全と健康を確保する義務があり(同法3条),労働者には,これに協力する義務がある(同法4条)ところ,本件解雇は,労働者の安全を自主的に講ずる措置としても,有効というべきである。

イ 被控訴人

(ア) 被控訴人は,控訴人の採用面接に当たり,その視力障害についてD専務に説明し,その了解を得た上で採用されたのであるから,今になって,視力障害を理由として被控訴人を解雇することは許されない。

(イ)a 被控訴人の視力障害につき,両眼の視力に大きな差があることは確かであるが,部分的に視野が狭まることはない。また,被控訴人は,一眼の遠見視力が基準に達していないことから大型免許を取得しなかったにすぎず,大型特殊免許を有し,平成16年2月12日の更新においても,通常どおりに更新されている。このように,被控訴人に視力障害があるからといって,重機運転業務に不適格であるとはいえない。被控訴人の作業能率が悪いということもない。

b 本件事故aは,単なる労災事故であって,控訴人が主張するような視力障害とは因果関係がない。また,本件事故bがあったことは認めるが,その原因は,キャタピラに挟まった木の枝や根が窓ガラスに衝突したことによるものであり,視力とは無関係な不可避的な事故にすぎない。本件事故c及びdは,被控訴人によるものではない。したがって,これらは,いずれも,被控訴人の重機運転業務の不適格性を裏付けるものではない。さらに,控訴人の主張(イ)eのような,被控訴人がしばしば重機のバケツをダンプカーに衝突させた事実もない。

(ウ) 被控訴人がD専務と口論し,反抗的態度があったからといって,そのことにより,業務を行うに当たって被控訴人に協調性が欠如していることが基礎づけられるわけではない。

(エ) 以上のとおり,控訴人が主張するような被控訴人の懲戒解雇事由該当性,業務不適格性及び協調性の欠如といった解雇理由はなく,本件解雇は,就業規則54条1,2,4,5号の普通解雇事由を具備せず,また,権利の濫用として無効である。

(2)  争点<2>(雇用契約の合意解除の成否)について

ア 控訴人

控訴人による本件解雇は,雇用契約についての合意解除の申入れの意思表示にも当たるところ,以下のような事実に照らせば,被控訴人は,これに対し,承諾の意思表示をしたというべきである。

(ア) 平成16年4月2日,被控訴人の代理人弁護士は,控訴人代理人弁護士に対し,「当方の今後の予定としては,会社に働くことを求める地位保全仮処分申立てを行わず,違法解雇による損害賠償請求訴訟を提起します。」,「近日中に保険証を返還しますので,離職票の交付をご指示願います。」と連絡してきた。

(イ) 被控訴人は,入手した離職票に基づいて,同月21日,札幌東公共職業安定所千歳出張所に雇用保険受給資格者証の交付を求め,同月28日その交付を受け,雇用保険金を受給するに至った。

(ウ) 被控訴人は,本件解雇後,同出張所から,再三にわたって,就職先を紹介して貰った。

イ 被控訴人

本件解雇が,同時に,雇用契約合意解除の申入れの意思表示にも当たるということはない。また,解雇された労働者が雇用保険で生活を維持しつつ,解雇無効を主張して争うことは通常の対応であり,雇用保険受給者には再就職に努力する義務があるから,控訴人の主張(ア)ないし(ウ)の事実は,何ら解雇の有効性を争うことと矛盾せず,被控訴人が雇用契約の合意解除についての承諾の意思表示をしたことにはならない。

(3)  争点<3>(給与等の支払義務の有無及び額)について

ア 被控訴人

本件解雇は無効であるから,控訴人は被控訴人に対し,前記1(4)のとおりの給与,夏期及び冬期の各賞与及び寒冷地手当を支払わなければならない。

なお,控訴人の従業員の賃金は,総支給額が年間ベースで固定化されており,給与のみならず賞与も実質固定給たる性格を有しており,少なくとも本判決が確定するまでに賞与の額が大きく変動する可能性はないというべきであるから,控訴人は被控訴人に対し,口頭弁論終結後本判決確定に至るまでの夏期(毎年6月末日限り45万円)及び冬期(毎年12月末日限り48万円)の各賞与も支払うべきである。

イ 控訴人

(ア) 控訴人が被控訴人による労務の提供を拒絶すべく本件解雇をしたことは,民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」に該当しないから,控訴人には被控訴人に対して労務提供の反対給付たる賃金を支払う義務はない。

(イ) 控訴人と被控訴人との間に本件解雇を巡る紛争が生じ,結果として被控訴人の労働が不能となったのは,ひとえに被控訴人の言動が原因となったものであり,控訴人もまた,その事業の遂行に支障が生じ,ために損失を被っているから,しかるべき過失相殺がなされるべきである。

(ウ) 被控訴人が受領した雇用保険金は,控訴人が支払うべき損害賠償額から,いわゆる損益相殺として控除されるべきである。

(エ) 控訴人は,平成16年9月15日,被控訴人の職場であった工事部の従業員との間で,新たに労働基準法36条の協定を締結し,これに伴い,工事部従業員の給与を改定した。その結果,被控訴人が控訴人に在籍していても,平成16年11月分以降の賃金は,基本給21万8000円,住宅手当1万円,交通費1万円となった。

(オ) 賞与は,事業成績が悪いときには支払われず,事業成績が上がったときに,これに貢献した労働者に分配・支払われるものであるから,本件解雇後の事業労働に従事・貢献しなかった被控訴人に対しては,支払われるべきものではない。

また,賞与及び寒冷地手当は,労働基準法12条,20条の平均賃金に算入されるものではないから,控訴人には被控訴人に対して賞与及び寒冷地手当を支払うべき義務はない。

(4)  争点<4>(不法行為の成否)について

ア 被控訴人

本件解雇は,不法行為も構成する理不尽かつ違法なものである。本件の事実経過及び控訴人の応訴態度は,悪意をもって又は重大な過失によって被控訴人を陥れるものといわざるを得ず,被控訴人が被った被害を補填するためには,地位確認及び賃金支払請求に止まらず,慰謝料の支払請求が認められるべきである。

イ 控訴人

被控訴人の主張は争う。

(5)  争点<5>(損害)について

ア 被控訴人

被控訴人は,違法な本件解雇の意思表示自体により精神的損害を被ったばかりでなく,労働基準監督署への相談や申告,個別的労働関係紛争処理促進法に基づく北海道労働局へのあっせん申請,弁護士への委任,労働組合への加入及び労働組合からの北海道地方労働委員会へのあっせん申請等,2次的な精神的苦痛及び非財産的な損害を被った。これらの損害を金銭的に評価すれば,100万円を下らない。

また,被控訴人は,弁護士に委任して,本件訴訟の提起,追行及び地位保全等の仮処分の申立てを行うことを余儀なくされた。その弁護士費用相当額の損害は,100万円を下らない。

イ 控訴人

被控訴人の主張は争う。

第3当裁判所の判断

当裁判所は,当審の口頭弁論終結時までの賞与の支払請求に係る訴えは適法であり,かつその限度で賞与の支払請求を認容すべきであるが,その点を除いて原審の判断は相当であり,したがって,本件控訴は理由がなく,本件附帯控訴は上記の点のみ理由があるものと判断する。その理由は,以下のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」に説示のとおりであるから,これを引用する。

1  争点<1>(本件解雇の有効性)について

(1)  使用者が労働基準法20条に基づいて行う普通解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして無効である(同法18条の2)。そして,本件のように,就業規則において普通解雇事由が列挙されている場合,当該解雇事由に該当する事実がないのに解雇がなされたとすれば,その解雇は,特段の事情のない限り,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないというべきであるから,権利を濫用したものとして,無効と解するのが相当である。

(2)  各項末尾の括弧内に掲記した証拠によれば,本件解雇に至る経緯について,以下のとおり認められる。

ア 控訴人の従業員数は,合計15名程度であり,そのうち,土砂・火山灰・火山礫の採取等を行う部門は6名である。それらのうち,4名がダンプ等の大型車両の運転業務に,1名が重機運転業務に,1名がプラント(採取した土砂の選別作業のこと。以下同じ。)現場作業に就いている。控訴人は,ダンプ等の大型車両を4台(さらに,予備として,やや小型の車両が1台ある。),大型油圧ショベルを4台,大型パワーショベルを3台,ブルドーザーを3台及びプラント作業での土砂選別機を1台保有している。(<証拠略>)

イ 平成8年6月1日ころ,被控訴人は,控訴人の採用面接を受け,重機の運転業務員として雇用された。採用面接の担当者はD専務であったが,その際被控訴人は,前記前提となる事実(5)の視力障害について告げなかった。被控訴人は,控訴人に雇用されて以降,主に建設用資材(土砂,火山灰等)の採取業務に従事した。(<証拠略>)

ウ 平成15年7月ころ,被控訴人が,火山灰を運搬用車両に積み込む作業をした翌日,D専務から,電話で,積み込んだ車両の台数が少ないとの指摘を受けた。積込みに来る車両の台数が少ないのは控訴人の営業の問題であり,重機の運転手の関与し得る事項ではないことから,被控訴人は,立腹して,勤務時間終了後にD専務に抗議し,同人との間で口論となった。(<証拠略>)

エ 平成16年2月3日,プラント現場にあったショベルローダーのパーキングブレーキが,解除されないまま何者かによって運転されたため,破損した。D専務は,被控訴人が運転して破損させたとして被控訴人を責め,これに対し,被控訴人は,言いがかりであると抗議し,両者の間で口論となった。(<証拠略>)

オ 同年2月19日,被控訴人が,パワーショベルを操作して,作業現場において,火山灰層上の表土部分を除去する作業を行っていたところ,D専務から,作業方法を変更するようにとの指示を受けた。被控訴人は,これに従わず,D専務との間で口論となり,同専務に対し,「女の腐ったようなことしか言えないのか。」等と発言した。

口論の際,D専務は,被控訴人に対し,指示に従えないのであれば会社を退職するよう求めた。これに対し,被控訴人は,D専務に対し,どうしても退職させるというのであれば,退職を求める書面を交付するよう要求した。(<証拠略>)

カ 同月21日,被控訴人は,D専務から,同年3月31日をもって解雇するとの解雇通知書を手渡された(本件解雇)。被控訴人は,その際,D専務から,解雇に同意するよう求められた。しかし,被控訴人は,解雇通知書における解雇理由が被控訴人の視力の減退となっていたため,これを拒絶した。(<証拠略>)

(3)  被控訴人は,D専務との採用面接の際に,視力障害について説明したと主張し,証拠(<証拠略>)中にも,これに副う部分がある。しかし,採用面接の際に被控訴人が提出した履歴書には,被控訴人の視力について触れられた記載はなく,健康状態の欄には「良好」と記載されている(<証拠略>)。これは,重機の運転業務員として採用されることを希望する被控訴人が,自身にとって不利益な事情である視力障害につき,自ら進んで開示するまでもないと判断したものと考えるのが自然である。そうすると,被控訴人が,履歴書に記載しなかった視力障害について,敢えて,自ら進んでD専務に説明したとは認め難い。

この点に関する被控訴人の上記主張及びこれに副う上記各証拠は採用できない。

(4)  視力障害を秘匿して雇用されたことについて

前記のとおり,被控訴人は,控訴人の採用面接を受けた際,健康状態の欄に「良好」と記載された履歴書(<証拠略>)を提出し,採用面接を担当したD専務に対して視力障害があることを積極的には告げなかったものと認められるものの,履歴書の健康状態の欄には,総合的な健康状態の善し悪しや労働能力に影響し得る持病がある場合にはこれを記載するのが通常というべきところ,被控訴人の視力障害は,総合的な健康状態の善し悪しには直接には関係せず,また持病とも直ちにはいい難いものである上,後記のとおり,被控訴人の視力障害が具体的に重機運転手としての不適格性をもたらすとは認められないことにも照らすと,被控訴人が視力障害のあることを告げずに控訴人に雇用されたことが就業規則61条(重要な経歴をいつわり,その他不正な方法を用いて任用されたことが判明したとき)の懲戒解雇事由及び同54条4号の普通解雇事由に該当するということまではできない。

(5)  視力障害を原因とする業務不適格性について

ア 被控訴人の視力は,前記前提となる事実(5)のとおり,右眼が1.2,左眼が0.03(矯正不能)である。また,証拠(<証拠略>)によれば,被控訴人の左眼の視認状況は,その角膜に白斑があるため,曇りガラスを通したようになっていると認められる。これらの事実からすれば,被控訴人が通常どおり視認し得る左方向の視野は,視力に障害がない者に比して幾分狭くなっていると認められる。

被控訴人は,専ら,重機の運転業務に従事していたのであるが,重機には,20トンもの重量を有するものもあり,かつ,その車体上部の旋回速度は,比較的高速である(<証拠略>)。被控訴人が,このような重機を運転することは,それ自体,通常の車両の運転に比して,極めて高度の危険性を内包しているといえ,被控訴人の視力障害が,かかる危険性を助長する要因となり得ることは否定できない。しかし,他方,証拠(<証拠略>)によれば,被控訴人は,控訴人での採用面接に当たり,実技試験として,控訴人の作業現場の責任者の面前で重機を運転し,その技能に問題がないと判断されて雇用されたこと,及び被控訴人の保有する大型特殊免許は,平成16年2月12日に更新されていることが認められる。なお,控訴人は,大型免許の取得資格のない被控訴人を,大型自動車運転業務よりも高度の能力ないし適格性を必要とする重機の運転業務に従事させることは危険であると主張するが,大型自動車と大型特殊自動車(重機)とでは,車両の仕様,用途ないし運転態様も,免許を受けるための適性試験の合格基準(道路交通法施行規則23条参照)も異にするのであるから,一眼につき視力障害のある被控訴人が大型免許を受けられないからといって,そのことから直ちに大型特殊免許を有する被控訴人を大型特殊自動車(重機)の運転業務に従事させることが危険であるとまでは認められない。これらからすると,被控訴人に上記のような視力障害があることをもって,直ちに,被控訴人が,重機の運転業務に不適格であるとまでは認められない。

イ そこで,さらに検討を進めるに,控訴人は,被控訴人が,その視力障害に起因して,本件事故aないしdを惹起したことから,被控訴人の視力障害による重機の運転業務について不適格であると主張する。

まず,証拠(<証拠略>)によれば,被控訴人が本件事故aを起こしたことが認められる。しかし,同事故が,被控訴人の視力障害に起因することを認めるに足りる証拠はない。

本件事故bについて検討する。証拠(乙4,7,8)によれば,平成15年12月中旬ころ,被控訴人がブルドーザーの運転作業中に,同ブルドーザーの窓ガラスが破損したことが認められる。しかし,証拠(乙7,8)によれば,この破損の原因は,ブルドーザーのキャタピラに挟まれてねじれた木の枝又は木の根が跳ね返り,窓に当たったことであると認められるところ,このような事故は,被控訴人に限らず,ブルドーザーの運転作業中に,一般的に起こり得るものであり,同事故が,被控訴人の視力障害に起因すると認めることは相当でなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

被控訴人が本件事故cを起こしたことについての証拠は,札幌地方裁判所平成16年(ヨ)第276号地位保全等仮処分申立事件(以下「別件仮処分事件」という。)におけるD専務の参考人審尋調書である乙7のみであるところ,その内容は,同人が重機に穴が空いているのを発見した際,それに前後して被控訴人が同重機に乗車していたから,被控訴人が本件事故cを起こしたと判断したというものである。しかし,当審証人Bによれば,同重機の穴はD専務がこれを発見する数か月前には既に空いていたことが認められるのであり,D専務の上記判断は合理的な根拠のないものといわなければならないから,D専務の供述は採用の限りではない。したがって,被控訴人により本件事故cが起こった事実は認められない。

本件事故dについて検討する。被控訴人が,ショベルローダーを,そのパーキングブレーキを解除せずに運転して,ブレーキを破損させたことを裏付ける証拠は,前記乙7のみであるところ,その要旨は,D専務は,本件事故dが起きた際に,被控訴人がショベルローダーを運転していたのを見た訳ではないが,被控訴人がショベルローダーの運転に不慣れであることから,ショベルローダーのパーキングブレーキ(一般的なパーキングプレーキであるレバーではなく,ボタン式となっている。)を解除せずに運転するのは被控訴人しかいないと考えたというにすぎない。その上,D専務は,乙7において,本件事故dの当時,被控訴人と同様の作業に従事していたその他の従業員のうちで,被控訴人がショベルローダーを運転しているのを目撃したと話していた者はいないとも供述している。そうすると,結局のところ,被控訴人がショベルローダーを破損したという点に関する乙7におけるD専務の供述は,客観的な裏付けを欠いており,推測の域を出ないといわざるを得ず,採用の限りではない。また,仮に,被控訴人がショベルローダーを破損させたとしても,その原因は,被控訴人が,ショベルローダーの操作に不慣れであったため,パーキングブレーキの存在又はその解除方法を知らなかったことにあると考えられ,ショベルローダーの破損と,被控訴人の視力障害には,関連性がないというほかない。

以上のとおりであるから,本件事故aないしdが,被控訴人の視力障害に起因して惹起されたと認めることはできず,控訴人の前記主張は採用できない。

ウ また,控訴人は,被控訴人が作業中に重機のバケツをしばしばダンプカーに衝突させた旨主張するところ,(証拠略),当審証人C及び同Bによれば,被控訴人は作業中に重機のバケツ等をダンプカーの荷台に接触させることがあり,その頻度は同僚のBよりも多いことが認められる。しかし,被控訴人と長年にわたって職場を同じくしていた当審証人C及び同B(かかる事実は<証拠略>及び<証拠略>により認められる。)でさえ,被控訴人が接触事故を起こしたのを見たのは3回ないし5回(証人C)又は1回か2回(証人B)だというのであるから,これらの証言を採用するとしても,被控訴人が頻繁に接触事故を起こしていたということまではできない。他に,被控訴人が重機運転手としての適格性を疑わせる程度に頻繁に接触事故を起こしていたことを認めるに足りる客観的な証拠は存在しない。

エ さらに,控訴人は,被控訴人が重機を操作して行う積込作業は作業能率が悪い旨主張するが,当審証人B及び被控訴人本人によれば,被控訴人は,日頃安全性の観点から慎重に積込作業を行うことを心がけて作業を行っており,そのために,同僚のBと比べれば作業の速度が若干遅いにすぎないものと認められる。他に,被控訴人の作業能率が重機運転手としての適格性を疑わせる程度に劣るものであることを認めるに足りる客観的な証拠は存在しない。

オ 以上からすると,被控訴人の視力障害が,重機の運転業務に関する不適格性をもたらすほどのものであるとは認められない。

(6)  協調性の欠如について

被控訴人が,D専務と度々口論していたことは,前記(2)ウないしオのとおりであるところ,被控訴人は,前記(2)オのとおり,D専務に対して,「女の腐ったようなことしか言えないのか。」等の穏当性を欠く発言をしている。しかし,被控訴人のかかる発言は,被控訴人と,被控訴人が重機を破損したとするD専務との間での個人的な感情の対立によることが窺われるのであって,直ちに,職場における被控訴人の協調性の欠如に結びつくものではない。また,その他の口論についても,被控訴人が重機を壊したとするD専務への抗議であるとか,職場での作業方法の是非に関する論争にすぎない。この外,被控訴人が,職場の他の従業員との間で口論等のトラブルを起こしていたことを認めるに足りる証拠はない。そうであれば,被控訴人の協調性が欠如しているということはできないし,仮に,被控訴人に協調性を欠いた面があるとしても,それが解雇を相当とする程度のものであったとはいえない。この点に関する控訴人の主張は採用できない。

(7)  以上のとおり,本件解雇の理由として控訴人の主張する被控訴人の業務不適格性協調性の欠如及び就業規則61条該当性は,いずれも認められず,他に,本件解雇についての合理的な理由は認められない。なお,控訴人は,労働安全衛生法3条,4条に照らし,本件解雇は労働者の安全を自主的に講ずる措置としても有効というべきである旨主張するが,労働安全衛生法は,職場における労働者の安全と健康を確保するとともに,快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法規であり(同法1条),労働者の解雇の根拠となるようなものではないから,控訴人の上記主張は独自の見解といわざるを得ず,これを採用することはできない。そうすると,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないというべきであるから,権利を濫用したものとして,無効といわなければならない。

2  争点<2>(雇用契約の合意解除の成否)について

一般に,使用者が行った普通解雇の意思表示に対して,労働者がこれを有効なものとして確定的に受け容れる意思表明をした場合,当該普通解雇の意思表示は,雇用契約の合意解除の申入れの意思表示にも当たり,これに対して,労働者が承諾の意思表示をしたと評価される場合もあり得ると解される。

しかし,控訴人が争点<2>について主張する事実のうち,被控訴人の代理人弁護士が,控訴人で働くことを求める地位保全仮処分申立てを行わず,損害賠償請求訴訟を提起する旨連絡したこと(前記第2の3(2)ア(ア))については,この連絡は,本件解雇が違法であることを前提として,その対応の方針を連絡したにすぎず,本件解雇を有効なものとして確定的に受け容れる意思を表明したものでないことは明らかである。また,解雇された労働者が,雇用保険を受給し,あるいは,とりあえず他に職を得て,当面の生活を維持しつつ,解雇の効力を争うことは通常みられるところであり,被控訴人が,雇用保険金を受給したこと(同(イ))や,公共職業安定所から就職先を紹介して貰ったこと(同(ウ))も,上記のような意思表明をしたことに当たらないというべきである。

他に,被控訴人が控訴人の合意解除の申入れに対する承諾の意思表示をしたと評価すべき事情を認めるのに足りる的確な証拠は存在しない。

したがって,本争点に関する控訴人の主張は採用することができない。

3  争点<3>(給与等の支払義務の有無及び額)について

(1)  以上のとおり本件解雇は無効であり,したがって,被控訴人は控訴人の責めに帰すべき事由によって雇用契約上の債務を履行することができなかったというべきであるから,その債務の反対給付たる本件解雇後の賃金の支払請求権を有するものというべきであり,これに反する控訴人の主張は採用することができない。

(2)  なお,控訴人は,本件について過失相殺及び損益相殺がなされるべきであると主張するが,過失相殺及び損益相殺の規定ないし法理は,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求について適用されるべきものであり,これらの規定ないし法理を賃金の支払請求について適用することはできないから,控訴人の上記主張を採用することはできない。

(3)  また,控訴人は,本件解雇後に被控訴人が所属していた工事部従業員の給与が改定され,その結果,被控訴人の給与は減額されたかのように主張するが,給与(賃金)のような労働契約の要素をなす基本的労働条件に関する事項については,個々の労働者の同意なしに一方的な不利益変更をすることは許されないというべきところ,控訴人主張の給与の改定に被控訴人が同意したことについてはその主張も立証もない。

したがって,控訴人は被控訴人に対し,本件解雇前と同一の賃金を支払うべきものといわなければならない。

(4)  しかるところ,前記第2の1前提となる事実の(4)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,本件解雇前,控訴人から,賃金として,毎月25日(当日が日曜,祭日に当たるときは,その直前の銀行営業日)に給与(昼食代を含む)33万円を,毎年11月25日に寒冷地手当6万0200円をそれぞれ受給していたことが認められる。

したがって,控訴人は被控訴人に対し,本件解雇の翌月である平成16年4月分以降の上記金額の給与及び寒冷地手当を上記の支払期限に支払わなければならない。

なお,当審の口頭弁論終結日以降の給与及び寒冷地手当の支払を求める訴えは,将来の給付を求める訴えに当たるが,控訴人の応訴態度に照らすと,あらかじめその請求をする必要があると認められる。

控訴人は,寒冷地手当は労働基準法12条,20条の平均賃金に算入されるものではないから,控訴人には被控訴人に対して寒冷地手当を支払うべき義務はない旨主張するが,本件は,固定給たる賃金の支払請求の事案であり,労働基準法12条,20条の規定は本件と何らの関係も有しないというべきであるから,控訴人の上記主張は採用することができない。

(5)  ところで,賞与について,被控訴人は,実質固定給たる性格を有していた旨主張するところ,(甲4)によれば,本件解雇当時の控訴人の就業規則(甲4)の42条には,「社員の賞与については原則として,毎年2回,6月及び12月に支給する。」旨が定められていることが認められるものの,賞与が固定給として支給されるべき旨の定めが就業規則その他の規程の中にあることを窺わせる証拠はなく,また,被控訴人が,少なくとも本判決が確定するまでに賞与の額が大きく変動する可能性はないとも主張しており,多少の変動の可能性があることを自認していることに照らすと,賞与が固定給として支給されていたとまでは認められない。

そして,上記の就業規則の規定及び弁論の全趣旨によれば,控訴人において,賞与は,控訴人の業績や被控訴人の勤務状況についての査定を勘案してその都度支給額が決定されるものと認めるのが相当であるところ,将来の賞与について,その将来の控訴人の業績や被控訴人の勤務状況をあらかじめ推認するに足りる的確な証拠は存在せず,未だ支給額は定まっていないものというほかはないから,あらかじめその請求をする必要があるとまでは認められず,当審の口頭弁論終結日以降の賞与(すなわち平成18年以降の賞与)の支払を求める訴えは,不適法といわなければならない。

他方,控訴人は,賞与は本件解雇後の事業労働に従事・貢献しなかった被控訴人に対して支払われるべきものではない旨主張するが,上記の就業規則の規定及び弁論の全趣旨によれば,控訴人において,賞与は,労務提供の反対給付たる賃金としての性格を有するものと認められるから,その責めに帰すべき事由によって労務提供を受けなかった控訴人としては,被控訴人が本件解雇後の事業労働に従事・貢献しなかったことを理由として被控訴人に対する賞与の支払を免れることはできないというべきであり,控訴人は,被控訴人に対し本件解雇後当審の口頭弁論終結日までの賞与(すなわち平成16年の夏期賞与から平成17年の冬期賞与まで)として,控訴人の業績や被控訴人の従前の勤務状況を勘案した相当額を支払わなければならないといわなければならない。

しかるところ,本件解雇後,控訴人の業績が本件解雇前に比べて悪化したことを認めるのに足りる的確な証拠は存在しないから,控訴人が被控訴人に対して賞与として支払うべき相当額は,本件解雇前の支給額と同一額,すなわち,前記第2の1前提となる事実の(4)のとおり,毎年6月末日限り支払われる夏期賞与が45万円,毎年12月末日限り支払われる冬期賞与が48万円であるというべきである。

4  争点<4>(不法行為の成否)について

前記1(5)(ウ)に認定した事実に照らすと,被控訴人の視力障害は,客観的には被控訴人の重機運転手としての適格性を疑わせる程度ではないものの,重機運転に危険性を孕ませる要因となり得ることは否定できないのであって,そのことに照らすと,視力障害による被控訴人の業務不適格性を解雇事由の一つとしてなされた本件解雇は,権利を濫用したものとして無効ではあるものの,事業者の判断としては強ち無理からぬものがないとはいえず,これが被控訴人主張のごとく,控訴人によって被控訴人に対する不法行為を構成するような故意又は過失をもってなされたとまではいえないし,また,弁論の全趣旨によって明らかな控訴人の応訴態度等に違法な点があるともいえない。

したがって,不法行為に基づく損害賠償を求める被控訴人の請求は,争点<5>につき判断するまでもなく,理由がないものといわなければならない。

5  まとめ

以上によれば,被控訴人の請求は,原審が認容した雇用契約に基づく権利確認,原判決別紙未払賃金一覧表中の金額欄記載の各給与及び賞与の請求並びにこれらに係る遅延損害金の支払,平成16年10月分から平成17年3月分までの毎月33万円の各賃金,平成16年冬期賞与48万円及び同年の寒冷地手当6万0200円(合計252万0200円)の支払,平成17年4月分から本判決確定に至るまでの毎月33万円の給与の支払,平成17年から本判決確定に至るまでの毎年6万0200円の寒冷地手当の支払のほか,平成17年夏期賞与45万円及び冬期賞与48万円(合計93万円)の支払を求める限度で理由があるから認容し,平成18年以降の夏期及び冬期各賞与の支払請求に係る訴えは不適法であるからこれを却下し,その余の請求は理由がないからこれを棄却すべきものと認められる。

第4結論

よって,本件控訴は理由がないから棄却し,本件附帯控訴は一部理由があるから原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤紘基 裁判官 北澤晶 裁判官 石橋俊一)

(一審判決別紙) 未払賃金一覧表

<省略>

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