札幌高等裁判所 平成18年(ツ)13号 判決 2006年12月12日
東京都新宿区西新宿8丁目2番33号
上告人
三和ファイナンス株式会社
同代表者代表取締役
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北海道●●●
被上告人
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同訴訟代理人弁護士
宮原一東
主文
1 本件上告を棄却する。
2 上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告理由について
1 上告人は,利息制限法所定の制限利率を超過して支払われた利息についての不当利得返還請求権は,法律の規定によって発生する債権であって,商行為によって生じた債権ではないから,本件に適用されるべき民法704条にいう利息の利率は民法404条の定める年5分とすべきである旨主張する。
ところで,民法704条が悪意の受益者に利息の付加返還義務を負わせるのは,通常・最小限の損害賠償をさせる趣旨であり,これを別の側面からみれば,損失者にその程度の損害があるということは,その利得物からは通常その程度の付加利得が生ずる可能性があり,利得者も通常それを得ているはずであるから,それも返還させる趣旨であると解される。
このように,民法704条が定める利息の付加返還義務が利得物についての付加利得を考慮したものであるとすると,利得者が利得物を営業のために利用したと認められる場合には,現に利得物から生じた付加利得の利得物の価額に対する割合が年6分を下回るものであるといった特段の事情のない限り,上記の利息の利率は,年6分の商事法定利率によるべきものといわなければならない。
しかるに,原審が適法に確定したところによると,上告人は貸金業法所定の登録を受けて貸金業を営む株式会社であるから,商行為である本件各貸付の義務の履行として被上告人から受領した利息制限法所定の制限利率を超過した利息を自己の営業のために利用し,商事法定利率の割合による運用利益をあげているというのであるから,本件においては,民法704条所定の利息の利率は商事法定利率年6分を適用すべきである。
所論引用の最高裁判所昭和55年1月24日第一小法廷判決(民集34巻1号61頁)は,不当利得返還請求権の消滅時効期間に関するものであり,また,最高裁判所昭和35年6月30日第一小法廷判決(裁判集民事42号741頁)は,不当利得返還請求権の遅延損害金に関するものであるから,いずれも本件とは事案を異にするものであり,適切ではなく,所論は採用することができない。
2 よって,本件上告は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 伊藤紘基 裁判官 北澤晶 裁判官 石橋俊一)