札幌高等裁判所 平成18年(行コ)5号 判決 2008年2月28日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2事案の概要
次のとおり原判決を補正し,当審における主張を追加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,一審原告Aは,平成18年1月30日死亡し,Bが訴訟手続を承継した。
1 原判決の補正
(1) 原判決14頁15行目の「新認定基準は,」の次に「業務による明らかな過重負荷が加わることによって,血管病変等がその自然的経過を超えて著しく増悪し,脳・心臓疾患が発症した場合にはじめて,業務起因性を肯定しようとするものであるから,」を加える。
(2) 同16頁9行目から10行目にかけての「C課長」を「融資課長C」と改める。
(3) 同17頁16行目の「前記のとおり,」を削除する。
2 当審における主張
(1) 控訴人
ア 脳動脈瘤の脆弱化には,それに拮抗する修復過程が存在するため,日常生活や過労による一過性の血圧上昇に由来する血管病変が生じても修復され,くも膜下出血に至らないのが通常であり,くも膜下出血の発症に至るのは,月の時間外労働が100時間以上の過重労働が続き,修復機構より血管病変の大きさが相対的に大きくなり,それが続いたような場合に限られる。しかるに,亡Dの場合は,決して上記のような著しい過重労働の状態ではなかったし,発症前には1日7ないし8時間の十分な睡眠時間や週2日の休日が確保されていたのであり,その程度の負荷が最終的にくも膜下出血を発症させるということは,医学的にみてあり得ない。
イ 厚生労働省からの依頼を受けた医師を中心とした専門家集団による検討結果を取りまとめた「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」(以下「専門検討会報告書」という。)に即して,亡Dの睡眠等の休息について検討すると,亡Dの発症前6か月間における亡Dの各1日の非拘束時間は,別表1の「1日単位の非拘束時間」欄のとおりである。専門検討会報告書の手法にしたがって,これから食事等生活に必要不可欠な時間として5.3時間を控除した残りの自由時間は,同表「1日の非拘束時間マイナス食事等時間(5.3時間)」欄のとおりであり,それから更に専門検討会報告書が必要とする睡眠時間である7.5時間を控除して残りの時間を計算すると,同表「1日の拘束時間マイナス食事等時間マイナス睡眠時間(7.5時間)」欄(以下「余暇時間」という。)のとおりとなる。余暇時間がゼロ以上であれば,通常の日常生活を送り,かつ,疲労の回復に必要とされる睡眠時間を確保することが十分果たされていることを示す。
亡Dの発症前6か月間における各月の各日をみると,余暇時間がマイナスとなる日のうちマイナス30分を超える日は7日であり,その他は数分程度のマイナスであり,ほとんどは余暇時間が数時間以上あり,10時間を超える日も全体の26%となっている。
この実態を専門検討会報告書の医学的知見に照らせば,亡Dには勤務による疲労を回復するために十分な時間が確保されていたことが明らかであり,亡Dの業務が疲労を蓄積させるものであったとはいいがたい。
ウ 被控訴人の主張ウは争う。
亡Dが本件システム統合後に自宅で事務取扱要領等の習得に努めていた形跡はない。
また,仮に亡Dが常態的に所定の始業時間の25分前に出勤していたとしても,亡Dに具体的な業務命令が発せられ,かつ,早出残業により処理しなければならない業務があったことの客観的証拠は何ら存在しない。そもそも,始業時刻より前に出勤することは,通勤のために乗車する列車時刻等の事情があることからすると,一般的に極めて当然のことであり,25分間という業務を行うには長いとはいえない時間は,かかる列車時刻等の事情により生じた単なる始業時までの個人的な時間と認められる。
(2) 被控訴人
ア 控訴人の主張アは争う。
控訴人の主張アは専門検討会報告書を蔑ろにする手前勝手なものである。
イ 同イは争う。
控訴人は,専門検討会報告書の手法によって亡Dの余暇時間を算出したと主張するが,業務による直前のあらゆる疲労を回復するために睡眠時間7.5時間で足りるか疑問があるうえ,平均値である食事等の時間を用いて具体的事案を処理することはその労働者の実際の拘束時間を離れて余暇時間を断定することになり不相当といわざるを得ない。
しかし,専門検討会報告書の手法を用いても,亡Dの発症前6か月の余暇時間は別表2の「余暇時間(補正後)」となり,土曜日たる就業日を除くほとんどの就業日で1時間以上のマイナスであり,平成12年2月から5月までについては土曜日を含む全就業日の1日平均でマイナス1時間以上,同年1月及び6月はそれぞれマイナス50分,マイナス45分程度であり,専門検討会報告書の考え方による適切な睡眠時間7.5時間は確保されていない。なお,同表の作成に当たっては,出勤のために自宅を出発した時刻から退勤時刻までの時間,E支店内外でなされたE支店従業員による懇親のための時間,帰宅に要する時間(JRを利用した場合は40分,タクシー利用の場合は20分),持ち帰り残業時間(平成12年5月8日までは1日2時間,同日以降は1日1時間)を拘束時間とした。
ウ 亡Dは,毎朝8時15分に出勤した後,制服への着替えや銀行員としての身だしなみを整えるなど業務に密接な事務をし,あるいはスムーズな事務移行のための体制を整えながら始業に備えたのであるから,8時15分から8時40分までの25分間は労働時間として認めるべきである。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の本訴請求は理由があると判断する。その理由は,次のとおり補正し,当審における主張に対する判断を追加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正
(1) 原判決19頁22行目から23行目にかけての「課長のC(以下「C課長」という。」を「調査役のF(C課長は,」と,同23頁3行目の「18」を「18ないし21,23」とそれぞれ改め,同頁4行目の「59,」の次に「67ないし69,」を加え,同頁7行目の「コ」を「サ」と,同頁19行目の「事務システム本部」を「本部」と,同24頁9行目の「37」を「38」と,同頁12行目から13行目にかけての「事務システム本部」を「本部」とそれぞれ改め,同頁17行目の「同年5月8日に」の次に「「システム統合スケジュールⅢ」(乙8の134頁)により各営業店で一斉に」を,同頁23行目の「109頁」の次に「,38」をそれぞれ加える。
(2) 同24頁23行目の末尾に改行して以下のとおり加え,同頁24行目の「ケ」を「コ」と,同25頁2行目の「コ」を「サ」とそれぞれ改める。
「ケ 本件システム統合後も,本部から事務処理についての指示,営業店からの照会に対する回答,端末機使用に際しての注意事項等が営業店に送られた(甲19,20,67ないし69)。また,本件システム統合後,顧客から通帳の取替えに時間がかかりすぎるし対応が悪いなどのクレームが少なからず寄せられた(甲21)。」
(3) 同29頁5行目の「平成12年9月末」を「平成11年9月末」と,同30頁23行目の「システム本部」を「本部」とそれぞれ改める。
(4) 同30頁24行目の「E支店」から同頁25行目の「行うなどしていた。」までを「E支店の従業員は同マニュアル習得のため,基本的に全員が休日出勤(4月1日を除く土曜日)をして勉強会を行うなどしていたこと,」と改める。
(5) 同31頁18行目の末尾に改行して以下のとおり改める。
「 しかし,前記認定のとおり,本件システム統合後も,本部から事務処理についての指示,営業店からの照会に対する回答,端末機使用に際しての注意事項が営業店に送付され,また,顧客からもクレームが少なからず寄せられたことに照らすと,本件システム統合に伴う通帳切替え等の事務処理の遅れ,新システムに不慣れなこと等に伴う様々な問題が生じ,E支店の営業課長であった亡Dにはかなりの精神的ストレスが生じていたことは明らかである。」
(6) 同33頁6行目の「原告に目撃されており」を「目撃しており」と,同頁7行目から8行目にかけての「原告に目撃されていること」を「目撃していること」とそれぞれ改め,同頁8行目の「本件システム統合」の次に「等」を,同頁10行目の「及ぶ。」の次に「このうち店舗統廃合に関するものが468枚,平成12年1月以降に作成されたものであることが明らかな本件システム統合に関するものが135枚である。」をそれぞれ加え,同頁16行目の「いわゆるゴールデンウィークの期間中に」を「平成12年4月には」と改める。
(7) 同34頁8行目から9行目にかけての「さらには,上記添付資料(乙21)」を「一般に営業店の支店長の判断で本部の指示に反する内容の指示を支店の従業員に発することができるとは考えがたく,ましてや,本件システム統合の重要性を考慮すると,営業店の支店長の一存で本部の指示に反する習得の範囲を定めるようなことはおよそあり得ないと考えられること,さらには,乙21」と改め,同頁13行目の「(乙8の78頁),」の次に「G銀行からの回答書(乙53),本件システム統合時に営業店の支店長ないし副支店長であった者が作成した陳述書(乙54ないし65),H支店長作成の陳述書(乙66),C課長作成の陳述書(乙67),本件システム統合時E中央支店営業調査役であった者が作成した陳述書(乙68),」を加える。
(8) 同35頁4行目の末尾に以下のとおり加える。
「また,前記認定のとおり,本件システム統合後も本部から事務処理についての指示等が出され,現に亡Dの死後,自宅から本件システム統合等に関する研修資料やマニュアル類の写しが多量に見つかっていること等を総合すると,亡Dは本件システム統合後も持ち帰り残業を行っていたというべきであるが,残業時間を推認する資料はない。」
(9) 同37頁末行の「2月ころからは」を「4月,5月ころには」と改める。
(10) 同38頁1行目から2行目にかけての「同僚行員の送別会を欠席したり,」を削除し,同頁5行目の「診断されるなどしており」を「診断され,同年7月18日夜には娘のところに電話をし,その週末に一緒に行くことにしていた花火大会には疲れがとれないのでいけないと断るなどしており」と改める。
(11) 同39頁21行目の「109頁,乙8の」を「乙8の230頁ないし」と改め,同頁24行目の末尾に改行して以下のとおり加える。
「エ I病院院長J医師は,意見書(乙51)において,①発症直前から前日までの間に特別に異常な出来事があったとは考えられず,発症前1週間の労働実時間は43時間10分と通常程度であり,発症前から概ね6か月間にわたって業務と発症との関連性が高いと評価される1か月あたり80時間以上の時間外労働をしておらず,職場の統廃合の問題で長期間にわたって精神的ストレスがあったが,ストレスによって具体的に血圧の上昇等を含む身体的変調が長期にわたって認められる具体的な臨床症状が非常に乏しいことから,そのストレスが亡Dのくも膜下出血を引き起こすほどのストレスになったかははなはだ疑問である,②亡Dの持ち帰り残業を考慮すると平成12年5月までの4か月間は1か月あたり概ね45時間以上の時間外労働をしているところ,1か月あたり45時間を超える時間外労働は長時間になればなるほど業務と発症との関連性が徐々に高くなるとされ,また,職場の統廃合の問題で長期間にわたる外的ストレスに曝されていたことは事実であるが,同年代の同僚に比べて亡Dが特段に強いストレスを受けていたとは考えられず,それによる血圧上昇等の長期間にわたる恒常的な身体的変調は認められない,③1か月あたり45時間を超える時間外労働が4か月にわたって行われ,さらに統廃合によって精神的ストレスに曝されていたとしても,それは基本的に長期間の退行性変化によってもたらされる動脈硬化症が誘因の脳梗塞や脳出血の発症に適応されるべきものであって,突然に脳動脈瘤破裂によって引き起こされるくも膜下出血とは区別されなければならないとして,亡Dの場合は業務とくも膜下出血の間には相当因果関係は認められず業務上の疾病に当たらないとしている。
オ K短期大学学長L医師は,意見書(乙52)において,①亡Dの時間外労働時間をみると,発症前6か月の間,1か月当たり17時間40分から56時間50分であり,いずれもリスクが生じるといわれる80~100時間(新認定基準)に達した月はなく,発症日に向かって漸次短くなっており,十分疲労が回復し,蓄積を生じないとされる概ね1日7時間の睡眠は確保される時間的余裕はあったというべきである,②亡Dには長期間にわたり続けてきた銀行業務のほかには個人的にストレスを蓄積する理由は見あたらず,飲酒の機会は多く精神的にも余裕があったことから,亡Dの嚢状脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血発症は,相当以前より有した嚢状脳動脈瘤が自然経過のなかで破裂したとみることが医学的に自然かつ合理的である。
カ M大学院教授N医師は,意見書(甲112)において,①亡Dは,長時間仕事に拘束された生活を長期間にわたって強いられ,食事等の時間や睡眠時間を削る生活を余儀なくされており,そのことによって心身に強い疲労の蓄積が起こっていたことが推認される,②本件システム統合という大事業は,全行的に労働の質量の増大とそれにともない心身への加重負担をもたらしたが,亡Dは,不慣れな営業部門の本件システム統合作業をその半ばから担当し,他の行員以上に大きな努力を強いられることになり,疲労の蓄積を進行させたと考えられる,③現に勤務する支店を廃止する方針が亡Dを精神的に一層追い込んだ,これらにより亡Dの健康状態の破綻が起こったとしている。
キ O医師は,「Dさんのくも膜下出血の業務起因性の考察」と題する意見書(甲113)において,亡Dには死亡前6か月間において業務に起因する多くの過重負荷要因があり,このような過重労働環境のために,嚢状脳動脈瘤発生と悪化を促進させる高血圧がしばしば生じ,また,過重労働による血圧安定機能の低下が,嚢状脳動脈瘤の修復力を低下させ,嚢状脳動脈瘤の破綻(くも膜下出血)へと突き動かしたとしている。
ク P大学教授Q医師は,「D氏のくも膜下出血死亡に関する意見」と題する意見書(甲129)において,亡Dは,営業課長への異動や研修によって帰宅時間が遅くなるなど家事に支障をきたすことになり,本件システム統合にかかわる時間外労働や持ち帰り残業が増加し始めた平成12年2月ころからは疲労蓄積が目立ち始め,さらに,3月から5月にかけては過労状態が強まり,角膜潰瘍などで眼科に通院していること,本件システム統合が終わり,時間外労働が減少した後も,過労によると思われる身体不調は継続し,欠席したことがない労働組合女性部大会に出ないで自宅で休んだり,楽しみにしていた孫との出会いも少なくなったりするなど,日常生活にも著しい支障をきたす状態にまでいたり,くも膜下出血発症まで継続していたことは明らかであること,上記角膜潰瘍はくも膜下出血の前駆症状だった可能性が大きいことなどから,本件システム統合作業での長時間残業に起因した心身のストレスが脳動脈瘤とその附属血管の拡張を生じ,約3か月という長期間の警告症状を経て,発症直前の支店統合の発表から受けた情動ストレスが脳動脈瘤破綻の誘引になったとする。」
(12) 同40頁5行目の「R医師」を「S医師」と改める。
(13) 同41頁16行目の「,同T」を削除する。
(14) 同42頁20行目から21行目にかけての「1日当たり多くても2時間を限度とする」を「本件システム統合までは1日当たり多くても2時間を限度とする。本件システム統合後は時間数は明らかではないものの,持ち帰り残業が行われていた」と改める。
(15) 同44頁4行目の「落ち着いたところで」を「落ち着いたものの,本件システム統合に伴う通帳切換え等の事務処理の遅れ,新システムに不慣れなこと等に伴う様々な問題が生じ,亡Dにはかなりの精神的ストレスが生じていたのであり」と改め,同頁12行目の「なお,」から同頁14行目の末尾までを以下のとおり改める。
「このことは,亡DがG銀行労働組合女性部の定期大会に参加したものの,体調不良のため途中で退席したり,花火大会に行くとの娘との約束を疲れがとれないとの理由でキャンセルしたことなどに照らしても明らかである。なお,本件システム統合前の一時期を除けば,休日は確保されており,また,亡Dの家計簿(乙8の166ないし180頁)によれば,亡Dには,平成12年1月以降,外食・飲酒の機会,日帰りないし1泊で温泉に出かける機会,娘のところに遊びに行く機会が少なからずあったことが認められるが,これらはストレス解消,気晴らし等のために行われたとみる余地もあるから,これらの機会があったからといって亡Dが疲労蓄積状態になかったということはできないし,上記認定の事実に照らすと,これらの機会も,亡Dの精神的緊張の状態を緩和させるのに十分であったとまでは認められない。」
(16) 同45頁2行目の「なりうるものであること」の次に「(乙3)」を加え,同頁18行目の末尾に以下のとおり加える。
「また,J医師の意見書(乙51)は,本件疾病の発症と業務との関連性を否定しているが,亡Dが多い月には80時間を超える時間外労働をしていた可能性があることを考慮に入れていないから上記認定を左右するものではなく,L医師の意見書(乙52)も,本件疾病の発症と業務との関連性を否定しているが,亡Dの疲労が十分回復していたことを前提とするものであって,その前提において誤るものというべきである(なお,同意見書は,慢性疲労・精神的緊張がくも膜下出血に直接関連しうるという科学的研究成果を見出すことはできなかったとするが,この部分は「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」<乙3>に照らし採用できない。)。」
2 当審における主張に対する判断
(1) 控訴人の主張アについて
U大学名誉教授V医師作成の意見書(乙49,69,71,72,74)には,くも膜下出血の発症に至るのは月の時間外労働が100時間以上の過重労働が続き,それが続いたような場合に限られる旨の控訴人の主張に沿う記載がある。しかしながら,このV医師の見解は明らかに専門検討会報告書の見解と異なっているのであり,到底採用の限りではない。なお,V医師は,専門検討会報告書は,念のために月の時間外労働時間が60ないし80時間の人では,長期間ないし短期間の負荷要因として,時間外労働以外に不規則な勤務,拘束時間の長い勤務,出張,特に時差のある海外出張が多いもの,交替制ないし深夜勤務,精神的緊張を伴う業務(危険な業務,過大なノルマのある業務,納期の決められている密度の高い業務,異常なトラブル,労使紛争の業務など)について調べる必要性を示唆したが,これは,月の時間外労働時間が45時間を超えると直ちにリスクが高まるとの誤解を避け,該当者が月45時間以上の時間外労働時間の者に通常考えられないほどの負荷要因が加わった場合に考慮すべきものとして付け加えたものである旨述べる(乙49の14頁)が,専門検討会報告書は,「言うまでもなく,業務の過重性は,労働時間のみによって評価されるものではなく,就労態様の諸要因も含めて総合的に評価されるべきものである。」と述べている(乙3の109頁)のであって,V医師の述べるような限定は付していないのであるから,上記V医師の見解は採用することができない。
したがって,控訴人の主張アは理由がない。
(2) 控訴人の主張イについて
控訴人の主張する亡Dの余暇時間は,持ち帰り残業を考慮することなく算定されたことが明らかであるから,この点において既に控訴人の主張イは失当というほかない。
なお,本件においては被控訴人の主張イを検討しなくても被控訴人の請求を認容することができるから,この点についての判断はしない。
(3) 被控訴人の主張ウについて
乙13によれば,亡Dは,始業時間前に業務をしたときには時間外勤務記録簿にその旨記載していたことが認められるのであり,このことに照らすと,始業前に出勤しても時間外勤務記録簿に記載のないときには,早出残業をしたと認めることはできない。
したがって,被控訴人の主張ウは理由がない。
第4結論
よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 北澤晶 裁判官 中川博文)
裁判長裁判官伊藤紘基は,転補のため署名押印することができない。裁判官 北澤晶
別表1Dタイムスケジュール
file_2.jpgi (TORO es it sn = HRA ioe cco ln ha - lm =. Moa T im cee <i oc] cole =I ae Soe HI214 2400 | 1842 HI212. 2400 | 1842 HI213) 100.4% 2400 | 1842 3400 HZ 1120 | 602 | -128 13.00 | 1.03 HI215 1440 | 022 | 152 1440 | 157 HIZ16 vat | 082 | 122 rato | 1.44 HI217, 1540 | 1022 | 252 HI218 2400 | 1842 HIZ19) ages | 740 | 1052 | 2400 | 1842 4254 HI2.1.10 2400 | 1842 IZA. 1500 | o42 | 212 1500 | 1.67 HI2.1.12 1540 | 1022 | 252 1540 | 1.88 HI2113 1540 | 1022 | 252 1540 | 1.88 HI2.1.14 1540 | 1022 | 252 HI2.115 2400 | 1842 e540 | 788 HI2.116 116.7% 2400 | 1842 31mg | 16942 HI2417 HI2.118 HI2.1.19 12.120 Hi2121 HI2.1.22 12.123 i os a | es ine HSE file WEEE mi Ee a, i, a mn, Hn mare
別表2省略