大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 平成19年(ラ)21号 決定 2007年4月10日

札幌市中央区南1条西1丁目2番地

抗告人

株式会社キャネット

同代表者代表取締役

●●●

同代理人支配人

●●●

北海道紋別市●●●

相手方

同訴訟代理人弁護士

大窪和久

主文

本件抗告を棄却する。

理由

1  本件抗告の趣旨及び理由は,別紙即時抗告申立書(写し)のとおりである。

2  当裁判所も,相手方の本件文書提出命令申立ては理由があると判断する。その理由は,原決定「事実及び理由」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。

抗告人は,原決定別紙記載の文書(以下「本件文書」という。)を所持していないとして,種々理由をあげて原決定を論難する。しかしながら,Eは,株式会社山栄の代表取締役であり,ワイド信販の屋号で貸金業を営む者であるところ,大阪地方裁判所平成16年(わ)第7426号等事件の被告人質問において,「そしたら,山栄以外の,今度,あなたの事業に使っている会社についてちょっとお尋ねするんですけれども,まず,どんな会社をあなたは管理しておられるわけですか,山栄以外で。」という質問に対して,「山栄以外・・・・・北海道に,金融でローンの店でキャネット,<以下略>」と,さらに,「これ(札幌キャネット)も全部あなたが出資して管理しているということになるんですか。」という質問に対して,「はい。」と供述していることは,当裁判所に顕著である(当裁判所に係属する当庁平成18年(行コ)第15号事件の甲第10号証20頁,29頁)。この事実によれば,株式会社山栄,ワイド信販及び抗告人は,いずれもその実権はEが握っており,商号や屋号を適宜使い分けているにすぎないものというべきである。そうすると,相手方の借入先が株式会社山栄やワイド信販から抗告人に代わったからといって,貸付業務の実質においては何ら変更はないものと推認するのが相当であるから,抗告人は本件文書を所持していると認めることができる。そして,上述したところからすると,本件本案訴訟の乙第11号証の1及び2は到底信用することはできず,法形式上は,原決定が説示するとおり,株式会社山栄及びワイド信販が相手方に対して有する債権を抗告人に譲渡したものと認定するのが相当である。したがって,抗告人の主張は理由がない。

また,抗告人は,相手方の本件文書提出命令申立ては権利の濫用である旨主張するが,相手方が本件文書の所持者は抗告人であると主張して,本件文書提出命令申立てをすることは権利の濫用の誹りを受けることではない(仮に,抗告人が本件文書を所持していると認められなければ,本件文書提出命令申立てが却下されるだけのことである。)。したがって,抗告人の主張は理由がない。

3  よって,原決定は相当であり,本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 伊藤紘基 裁判官 北澤晶 裁判官 中川博文)

即時抗告申立書

抗告人 〒060-0061

札幌市中央区南1条西1丁目2番地

本案事件被告(反訴原告)

株式会社キャネット

代表者代表取締役 ●●●

相手方 〒●●●

北海道紋別市●●●

本案事件原告(反訴被告)

●●●

(送達場所)〒094-0004

北海道紋別市本町4丁目

紋別ひまわり基金法律事務所

上記相手方代理人弁護士 大窪和久

旭川地方裁判所紋別支部平成17年(モ)第21号文書提出命令申立事件ついて、平成18年12月28日付旭川地方裁判所紋別支部がなした抗告人に対する文書提出命令の決定(平成19年1月10日抗告人受領)は、事実誤認であること明らかであり、以下のとおり即時抗告を申し立てます。

抗告の趣旨

1.原決定を取り消す。

2.相手方(被抗告人)の申立を棄却する

との決定を求める。

抗告の理由

第1.抗告人は、本件について訴外株式会社山栄や訴外ワイド信販から債権譲渡を受けておらず、当該文書の所持者ではない。

1.文書の所持者とは、

「裁判所の提出命令に従おうと思えば従うことができる者,すなわち,自らの意思で文書を裁判所に提出しようと思えば,提出することができる者(それにもかかわらず,提出しなかった場合には,不利益なり制裁なり受けてもやむを得ないということができる者)でなければならないから,提出命令の要件としての「所持」とは,直接占有と間接占有のいずれであってもよいが,いずれの場合も,社会通念上,文書をその支配領域下においており,いつでも自らの意思のみに基づいて提出することができることを意味するを解すべきである。(門口正人民事証拠法大系第4巻各論Ⅱ書証〔4〕文書提出命令(d)文書の所持者92頁)」

この解釈に照らせば、社会通念上、当該文書をその支配領域下において、いつでも自らの意思のみに基づいて提出することができる者は、訴外株式会社山栄並びに訴外ワイド信販こと●●●さんであることが明らかであり、これを看過して、申立人である相手方の断片的かつ曖昧な記憶と補助事実にみて、抗告人が当該文書の所持者として断定された原決定は破棄を免れないものとおもえます。

2.文書提出命令の申立には、当該対象文書の存在が前提とされ、

「相手方が申立書記載のような文書は作成していない,あるいは所持したことがないと主張する場合には,申立人において,相手方は当該文書を作成するのが通常であること,当該文書を現実に見たことがあること,相手方が所持している事情などを主張立証する必要がある。(前記同書 文書の存在・所持に関する審理174頁)」

この前提から、本来申立人に立証義務あるところ、抗告人から当該文書の所持者でないこと(特に債権譲渡を受けていないとする事実)を証すため、同訴外らに照会(乙11の1)を求め、同訴外らからの回答書(乙11の2)を受け、これらを提出するにいたりました。

対して相手方は、作為を加えた報告書(甲32,33)をもって乙11の1・2の真否を争うとされました。

(1) そこで抗告人は、相手方代理人の報告書(甲第32,33)それ自体虚偽である疑いが強く、別訴<1>(基本事件釧路地裁網走支部平成18年(ワ)第8号原告●●●)平成18年12月27日口頭弁論席上において別紙(<1>事件準備書面6)のとおり質したところ、相手方代理人は、訴外山栄代表者宅を訪れていなかったことを認めました。

尚、<1>事件においての書証は乙第10号証(本件乙11の1)乙第11号証(本件乙11の2)同一のものであり、これに照らして検討ねがいます。

(2) これは、別訴<2>(基本事件釧路地裁北見支部平成18年(ワ)第22号原告●●●)における文書提出命令申立却下決定理由に判示された「なお,抗告人(当該事件相手方)は,原審が抗告人の申請に係る山栄の代表者●●●の証人尋問を採用しないままになした原決定には審理不尽の違法があると主張するが,一件記録によれば,抗告人は,平成18年10月3日の原審口頭弁論期日において,●●●の所在が不明であるとの理由でその証人尋問の申立を撤回しており,原審はこのような訴訟の経過を踏まえて,同年12月6日に原決定をしたことが明らかであるから,抗告人の上記主張には理由がないものといわなければならない。」のとおり、相手方代理人が、訴外山栄代表者●●●氏を所在不明とした点についてこれを質したものでありますが、相手方代理人は、訴外山栄代表者を証人として申立を行っておきながら、この証人宅を訪れなかったことについて、「個人宅だから行かなかった」と意味不明な言い訳しか述べませんでした。これは、民訴規109条に反するものであり、正当な理由として認められるものではありません。

そこで別訴<1>受訴裁判官は、訴外山栄代表者への文書送付嘱託を行うこととされました。

(3) 原決定は、このような相手方代理人の作為による報告書(甲32,33)によって、乙11の1・2について疑義を抱かせるに導かれ、結果として抗告人が文書の所持者として断定されるにいたっております。

上記のとおり、相手方代理人が、訴外株式会社山栄代表者宅を訪れなかった事実が露呈したのは平成18年12月27日であり、原決定がなされたのは翌日付の平成18年12月28日であります。

したがって、乙11の1・2の真正に疑いあることを前提とした判断の原決定は事実誤りであること明白です。

3.原決定は、相手方代理人弁護士が務める同種事案として係争中の、前示別訴<1>、別訴<2>事件を事実認定判断の一つとしてされておりますが、別訴<1>の事件については、受訴裁判官の判断により訴外株式会社山栄代表者へ送付嘱託することとなり、次回期日平成19年2月7日と定められ、今のところ相手方の文書提出命令申立は採用されておりません。

また、<2>の事件については、既に札幌高等裁判所平成18年(ラ)第144号文書提出命令申立棄却(原審・釧路地裁北見支部平成18年(モ)第78号文書提出命令却下)決定がなされ、平成18年12月27日の経過をもって確定しております。

抗告人は、これら別件事案はもとより、本件についても、同訴外もしくは訴外ワイド信販との間に債権譲渡の契約を行った事実はありません。

したがって、当該各文書を自己の支配下にする者は事実上同訴外らであることが明らかであり、そもそも相手方は同訴外らに開示請求を行うことにより、容易に相手方の実体的権利の実現をはかることが可能であったことからすれば、抗告人に対する文書提出命令は唯一の証拠とする法理から逸脱し、本来却下を免れないものとおもえます。

そこで、原決定の誤った判断について、以下具体的に進めます。

(1) 相手方の陳述(記憶)によれば、同訴外らいずれから「新しく追加借入をする場合には,キャネットから借入を行うようにして下さい。」との電話での連絡を受けたとする内容になっております。

そうであれば、「新しく追加借入をする場合には,」と限定した案内にすぎず、またこのような案内をもって債権譲渡の表示であるとする錯誤は生じません。

(2) 抗告人は、立替払いを含む契約であることに相手方が合意したものと信頼してきました。

そして相手方も、平成16年1月6日の契約について「私がキャネットに対し,電話で追加融資をお願いしたところ,(甲14)」と、自ら資金需要にあって抗告人に申込したことを認めておられます。

(3) これらを前提に、原決定では「申立人が,電話で新たな借入の申込をしてきた際に,山栄への立替払いを依頼してきた,その際,債務額も自己申告した旨主張するが,申立人には自主的にそのようなことを依頼して借入先を変更する必要性は何ら認められず,」と判断されるにいたっておりますが、<1>相手方は同訴外らからの追加借入の期待を失ったこと、<2>相手方は資金需要(具体的事実は後述)にあったこと<3>その後の抗告人との第二、第三契約にいたっていることからも、むしろ相手方に借入先を変更する必要性があったというものであります。

(4) ところで、貸金業者には、利用者の利益の保護を図るべくその責任を負っており(法第13条過剰貸付の禁止・金融庁事務ガイドライン3-2-1等)、これら規則の範囲内においては、貸金業者それぞれ自主的な独自の基準を設けて運営されております。

この見地から、同訴外らには、相手方に対しての貸付け(貸増し)にかかる基準が設けられていたはずであり、その貸付判断も貸金業者によって異なるもので(例えば借入件数の上限を定めている場合や当該利用者の返済能力に照らす等)、同訴外らがその後に廃業している事実からも、これまでとは違う厳しい判断基準を設けていても不自然ではなく、相手方に対しては、追加融資に応えられないとする判断から、そのような案内がなされたものとおもえます。

(尚、相手方は同訴外らと限度額を定めた包括的な契約にあったと主張しておりますが、そのような事実すら明らかになっておりません。また、抗告人には、資金需要者の不正利用を防ぐ必要性と、相手方にこの審査基準を知る権利もないことから、抗告人の具体的審査基準については証しません。)

(5) 他方、訴外山栄は少なくとも平成15年9月18日付で別の顧客に対して貸付けを行っていた事実(添付書類1 抗告人が同訴外から別件債権譲渡を受け、その後破産にいったた事案)もあり、訴外山栄が顧客を選別して貸付け業務を行っていたことも明らかであります。

(6) そこで検討すると、相手方は「断れば新たな借入もできず取り立てされると思いましたので従うしかない(甲14)」と述べておりますが、要は、同訴外からの融資を断られたものにすぎず、自らの資金調達を優先する状況にあったからこそ、同訴外からの案内に導かれ、抗告人への申込にいたったものであり、「今から考えれば内容的におかしい点はありますが,私は,当時お金を借りる弱い立場にありましたので,その事についてその時点では文句を言うことはなかったのだろうと思います。(甲38)」と、本件立替払いの部分についての同意を否定しておりますが、抗告人は、相手方が立替払いを含む契約について同意したものと信頼し(第一契約についての貸付判断は、訴外山栄を含む8社の借入があったことと、初めての取引ということもあって)合計金30万円の金銭消費貸借契約締結にいたったのでありますから、相手方が自らの資金調達を優先させ、後になってそれが真意でなかったとの主張は、相手方にこれを惹起した帰責性、あるいはそれが虚偽の意思表示とされなくとも、真意ではないままに虚偽の外観を漫然と存続させたという点で、抗告人の信頼を裏切っていることに違いはなく、相手方のこのような言い訳は保護されるに値しないはずです。

(7) また、原決定は「一般に消費者金融の債務者が自己のその時点での利息等を含めた債務額を正確に把握していることは稀であり,申立人がこれを相手方に申告することは困難である」と判断されておりますが、むしろ一般的に考えたならば、債務者は電話連絡などでその時点での債務額を容易に確認することができ、債務者が債務額を把握することが困難な状況などほとんど考えられません。

いずれにしても、相手方が資金を要していたことや同訴外らからの借入が期待できない以上、新たな借入に対応しうる貸金業者を必要とするものであり、かつ訴外山栄を含む8社の貸金業者から借入していた事実からも、抗告人を今後の借入先として期待を抱くものといえます。

(8) 何より、相手方が実体的権利の実現を真摯に目的とするならば、相手方代理人は訴外山栄代表者宅について少なくとも平成18年7月26日付同訴外の登記簿謄本入手によって把握していたのだから、この時点で同人宛に書面送付等の方法によって事実確認をすべきであったのに、未だこれを行わず今日にいたっております。

4.相手方代理人作成の報告書を前提とした、同訴外らが営業していないとする判断について

(1) 貸金業者の営業とは、顧客に対する貸付業務を指すものであり、貸金業規制法第44条に定める見なし貸金業者としての在り方を異にするものであります。

前者は、営業(貸付業務)を行うにあたって法14条貸付条件等の掲示、法15条貸付条件の広告等に拘束され、これらに則った外観を呈してなければならないが、貸金業者として廃業した後者は、貸付業務を行わず、かかる広告等も要さずことから一般的な貸金業者としての外観とは異なるものであります。

(2) むしろ、同訴外らが登録上の所在地の債権者として、取引結了にかかる対応を行っていることに何ら疑いを抱く点はなく、そこに郵便受箱(相手方作成報告書添付写真)が存在する以上、仮事務所等で管理を行っていることも十分に考えられるものであり、そうでなければ、そもそも郵便受箱が存在する理由がありません。(例えば、同業者である抗告人の見地から、債務者が借入の契約について家族に秘密にする場合も少なくなく、また債務者が行方不明の場合等も考えられ、こうした債務者らに、廃業した貸主が移転したことを知りうることはできず、取引の安全からも登録上の本店所在地を表示しなければならないといった事情も十分考えられます。)

そして、そうであったからこそ乙11の1・2の受送達が奏功したものであり、これもまた相手方代理人の作為による報告書によって導かれた誤った判断の一つといえます。

(3) ここで重要なことは、同訴外らが貸金業者として営業しているか否かではなく、相手方と取引のあった債権者として法第44条に基づいて権利行使あるいは義務履行にあたっているか否かということであり、この点について抗告人は、客観的事実として訴外ワイド信販が権利行使にあたっている事実(乙第3の1・2)を示しました。にもかかわらず、原決定ではこの顕著な事実を採らずして、相手方が書証として提出した訴外ワイド信販からの一方的な通知とみられる(平成16年3月1日付で債権の全部を抗告人に譲渡した旨の書面)ものを採用し、これを前提とした上で、「債権譲渡の時期が顧客によって異なる点について矛盾している」と結論付けられました。

さらに、原決定では、この乙第3の1・2の事実について何ら触れることなく、「何人もの顧客に係る債権譲渡を受けたのであれば,当然にそれについての契約書等を作成しているものと考えられ,これを提出するなどして債権譲渡の時期等について立証することも可能であるのに,その点について立証を行っていない。」とされておりますが、このことは、相手方代理人が、訴外●●●さんの件について債権譲渡契約書を拝見したいと抗告人に求めたところ、原審裁判官は、「●●●さんは本件とは関係がない」と相手方の求めを斥けられ、抗告人は、こうした訴訟指揮に従って訴外●●●さんの債権譲渡契約書が心証形成に必要ないものと信じておりましたので、原決定の本文に対しては不本意という他ありません。

5.背景事実

(1) 抗告人との初回契約時、相手方は他社8件総額金280万円の債務を抱えていた。

(2) 相手方は、抗告人に他社借入件数5社総額金250万円と過小申告した。

(3) 相手方は、借入希望額を金30万円とした。

(4) 相手方は、独身、無職の両親と同居であった。

これら事実から、相手方が資金需要先を求めていたことは明らかであります。

それも約1年の間に抗告人から三度の借入を受けていることからも、相手方にとって抗告人は他の貸金業者と比べて有益があったものであり、原決定の「申立人には自主的にそのようなことを依頼して借入先を変更する必要性は何ら認められず,」とは、相手方の陳述に偏った表面上の事実背景しか捉えていないものとおもえます。

また、相手方は抗告人との契約から約1年の間に、少なくとも2社の貸金業者との契約を結了しているのに、総債務額が金344万円に増えていました。この、債権者数が減って総債務額が増えているといった事象は、相手方は他にも立替払いの契約を行っていて、いわゆる他社一本化等の契約により債権者数が減じたものと考えられ、相手方にはこうした立替払いによる契約の経験があったのに、今さらになって、手元に金38,795円しか受けていないから立替払いであることは知らなかったなどという真意否定は信用性に乏しいものとおもえます。

仮に、相手方が訴外株式会社山栄への返済を望んでいなかったのであれば、借入希望額を金30万円としているのに、訴外山栄への残債務立替払いを除く金38,795円しか相手方口座に振込まれていないのだから、相手方にとって借入希望額に満たないことになり、それが訴外山栄との継続的取引という認識であったとしても、借入希望額の金30万円とは別の問題であります。

むしろ、訴外山栄への返済と、自己の資金として必要とした合計額が金30万円であったからこそ借入希望額と合致するものであり、また、抗告人との第二契約時における与信審査では、抗告人を含め7社、第三契約時における与信審査では、抗告人を含め6社に減じていた一方、総債務額は金344万円と初回契約時から約60万円も増えていた事実にみれば、前述したとおり相手方は抗告人を資金需要先として必要としていたことが明白であります。

第2.相手方の開示要求の濫用

最高裁第三小法廷平成6年(受)第965号(平成17年7月19日言渡)「貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。」

この考えから、相手方は訴外株式会社山栄代表者から事実確認及び取引履歴を求めることは容易でありながら、また相手方代理人が京都市まで出向き、あえて同人宅を訪れなかったことにみれば、相手方の抗告人に対する文書提出命令申立は申立権の濫用であるという他なく、かつ信義則上開示義務を負うのは同訴外らにあること明白で、当該文書を所持しない抗告人に事実上も法的にもこの義務を負っておりません。

そして、その文書の所持者を抗告人と断定した点については、相手方代理人の作為によって導かれたものでありますから、あらためて審理を願いたく、抗告の趣旨にいたります。

添付書類

1 金銭消費貸借契約書、破産・免責申立書

(平成15年9月18日時点で訴外山栄が積極的に営業(貸付)していた事実)

2 別訴釧路地方裁判所網走支部係争中の被告(抗告人)準備書面5

(尚、全20ページ、内5ページであり基本事件で陳述書等によって明白となっている事情を除く部分については、別訴原告に対して配慮し、一部内容を伏せております。)

3 釧路地方裁判所北見支部判決正本

札幌高等裁判所判決正本

(相手方代理人が同種事案北見事件として文書提出命令申立却下、棄却判決正本)

4 意見書、履歴事項全部証明書

(相手方代理人が平成18年7月26日時点で訴外株式会社山栄代表取締役●●●宅住所を知っていた事実)

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例