札幌高等裁判所 平成23年(ネ)230号 判決 2011年10月20日
主文
1 本件各控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第3当裁判所の判断
2 控訴理由にかんがみ、以下、付言する。
(1) 控訴人らは、鳥獣駆除に関する業務委託契約は、a部会と被控訴人との間に締結されたものではなく、控訴人ら(鳥獣保護法9条8項の従事者)と被控訴人(同法9条1項の被許可者)との間に締結されたものであり、控訴人らと被控訴人との法律関係は、両者の間の準委任契約によって形成されたものであり、この法律関係は、民法等の一般原理による規律に服するものであるところ、本件における行為1及び行為2は、かかる規律に反し、違法であると主張する。検討するに、a部会と被控訴人との間にヒグマ駆除に関する業務委託契約の存在することは前示(原判決3、4頁)のとおりであり、また、鳥獣保護法の関係規定及び証拠(甲1ないし3、乙1、2、14、15、20、21、26、証人A)を総合すると、鳥獣駆除に関し、控訴人らと被控訴人との間で、準委任契約に類似する契約が成立していたとみるのが相当であるが、従事者の選定については、前示(原判決14、15頁)のとおり、被控訴人が極めて広い裁量権を有していたと認めるべきであり、前記認定事実の下で、被控訴人が控訴人らに対し従事者証の返納を求めたことが裁量権の逸脱であるということはできないから、上記のような契約関係が成立していたことが、行為1及び行為2の違法性を基礎付ける根拠とはなり得ない。
(2) 控訴人らは、被控訴人は、鳥獣保護法上、捕獲したヒグマを食用に供してはならないという義務を従事者に課することができないにもかかわらず、同義務に違反したことを理由として控訴人らに従事者証の返還を求めた行為は違法であり、また、被控訴人及びその担当者は、控訴人らに対し、食用禁止義務違反を理由に従事者証の返還を求める一方で、同様に食用禁止義務に違反したb部会会員に対して何らの措置も講じないのは、平等原則に反し違法であると主張する。検討するに、確かに、鳥獣保護法は、捕獲した鳥獣を食用に供することを禁止していないが、被控訴人が鳥獣駆除に関する業務を委託する場合に、従事者に食用禁止義務を課することが、鳥獣保護法の立法趣旨に反して合理性を欠くものであるということはできないから、その違反を上記委託の解除の一事由とすることは何ら問題ないというべきである。また、b部会会員に関する上記主張事実の詳細を認定するに足りる証拠はないが、同会員がヒグマを食した事実があったとしても、委託を解除するか否かについての判断は、関係する諸事情を総合的に判断をした上で決定すべきものであるから、同事実から、直ちに、控訴人らに従事者証の返還を求めることが平等原則に反する違法な行為であるということはできない。
(3) 控訴人らは、他にもるる主張するが、控訴人らの主張はいずれも採用することができない。
第4結論
以上によれば、原判決は相当であり、本件各控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上哲男 裁判官 中島栄 佐藤重憲)