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札幌高等裁判所 平成24年(ネ)478号 判決 2013年5月17日

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別紙当事者目録記載のとおり

主文

1  本件各控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  控訴人ら各自と被控訴人らとの間で、控訴人ら各自が被控訴人株式会社Y1との雇用契約上の地位を有することを確認する。

3  被控訴人らは、控訴人ら各自に対し、連帯して100万円を支払え。

第2事案の概要

1  本件は、被控訴人株式会社Y1(平成17年7月1日変更前の商号は「株式会社a」。以下、商号変更の前後を問わず「被控訴人Y1社」という。)との間でそれぞれ期間の定めのある雇用契約を締結し、契約社員として複数回契約を更新していた控訴人らが、被控訴人Y1社から、期間満了後の更新を拒絶し雇止めする旨告げられ、同社との間の雇用契約を合意解約して被控訴人Y2株式会社(以下「被控訴人Y2社」という。)へ転籍する旨の意思表示をしたことにつき、①被控訴人Y1社による雇止めは許されず、被控訴人Y2社へ転籍する旨の控訴人らの意思表示は錯誤により無効である、又は詐欺ないし強迫による意思表示として取り消すと主張して、被控訴人らに対し、控訴人ら各自が被控訴人Y1社との間で雇用契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、②被控訴人Y1社は、控訴人らを雇止めできないことを知りながら、被控訴人Y2社と共謀の上、控訴人らに雇止めする旨告げて、被控訴人Y2社への転籍に応じさせ、精神的損害を与えたと主張して、被控訴人らに対し、債務不履行又は不法行為に基づく控訴人ら各自への慰謝料の連帯支払を求めた事案である。

原審は、控訴人らの請求のうち、被控訴人Y2社との間において控訴人ら各自が被控訴人Y1社との雇用契約上の地位を有することの確認を求める訴えについては、いずれも確認の利益がなく、不適法であると判断して、却下した上で、被控訴人Y2社に対するその余の請求及び被控訴人Y1社に対する請求については、控訴人らと被控訴人Y1社との間の雇用契約は、いずれも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になっていたとはいえず、また、控訴人らが契約が更新されるとの合理的な期待を抱いていたともいえないから、解雇に関する法理が類推適用されるとは解されず、雇止めできないことを前提とする控訴人らの請求はいずれも理由がないなどと判断して、棄却したところ、控訴人らが各敗訴部分を不服として控訴した。

2  前提事実、争点及び争点に対する主張は、次のとおり補正するほかは、原判決書「事実及び理由」欄の第2の1ないし3に記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決書2頁20行目の「原告C(以下「原告C」という。)」を「控訴人X1(旧姓C、以下「控訴人X1」という。)」と改めた上で、以下、理由中の判断も含めて「原告C」を「控訴人X1」と改める。

(2)  原判決書4頁3行目及び23行目の「同日」をいずれも「同年4月1日」と改める。

(3)  原判決書5頁23行目の「被告Y2社から」を「被控訴人Y2社との間で」と改める。

(4)  原判決書6頁1行目の「平成21年10月末」を「平成21年10月30日(金曜日)」と改める。

(5)  原判決書6頁3行目の「末」を削る。

(6)  原判決書6頁20行目の「通知をした」の次に「(なお、控訴人らの通知書(甲35ないし37(書証<省略>))では、控訴人らと被控訴人Y2社との間の各雇用契約は「貴社の説明を事実と錯誤して交わしたものであり、私の本意とは異なりますので、貴社の契約社員としてのこれまで通りの契約更新手続きを速やかに行うことを求めます。」と記載されている。)」を加える。

(7)  原判決書6頁24行目冒頭から7頁14行目末尾までを次のとおり改める。

「 控訴人らは、契約上の地位の確認請求について、請求原因として、まず、①控訴人らが被控訴人Y1社との間でそれぞれ平成22年3月31日までの期間の定めのある雇用契約を締結したことを主張した上で、上記各契約の期間が既に満了していることから、②(a)上記各契約は期間の定めのない契約と実質的に異ならない、又は(b)控訴人らはそれぞれ雇用の継続について合理的な期待を有していたので、解雇に関する法理が類推適用され、更新拒絶には、解雇の場合と同様に、これを正当化する客観的で合理的な理由が必要であるところ、被控訴人Y1社が上記各契約を更新しなかったことを正当化する客観的で合理的な理由はないから、上記各契約の更新拒絶はできないと主張する。これに対し、被控訴人らは、抗弁として、①(a)上記各契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならないとはいえず、(b)控訴人らがそれぞれ雇用の継続について合理的な期待を有していたともいえないので、解雇に関する法理は類推適用されないと主張するほか、②上記各契約につき更新拒絶を正当化する客観的で合理的な理由があること、③控訴人らと被控訴人Y1社との間では、控訴人らが被控訴人Y2社に転籍する旨の合意が成立していることから、いずれにせよ、上記各契約は終了していると主張する。さらに、控訴人らは、転籍合意に対する再抗弁として、(a)錯誤による無効又は(b)詐欺若しくは(c)強迫による取消しを主張し、被控訴人らは、錯誤の再抗弁に対する再々抗弁として、控訴人らの重過失を主張する。

したがって、控訴人らの債務不履行又は不法行為に基づく慰謝料請求を含めた本件全体にわたる争点は次のとおりとなる。」

(8)  原判決書7頁22行目冒頭から23行目末尾までを次のとおり改める。

「(8) 債務不履行又は不法行為の成否

ア 債務不履行又は違法行為の有無(争点8)」

(9)  原判決書8頁6行目冒頭から8行目の「締結しており」までを次のとおり改める。

「ア 控訴人X1は、平成16年9月1日、控訴人X2は、平成17年1月5日までに、控訴人X3は、平成16年6月7日、それぞれ被控訴人Y1社との間で雇用契約を締結した後、雇用契約の更新を重ねており(給与体系等を変更するに当たっての合意解約も含む。)」

(10)  原判決書8頁10行目の「労働契約」を「雇用契約」と改め、以下も同様とする。

(11)  原判決書9頁12行目の「△△センター」を「△△センタ」と改める。

(12)  原判決書11頁25行目の「一貫」を「一環」と改める。

(13)  原判決書12頁2行目の「否定する」を「否定される」と改める。

(14)  原判決書12頁26行目の「合意した」を「同意し、ここに転籍合意が成立した」と改める。

(15)  原判決書13頁4行目の「同意した」の次に「ものというべきであるから、ここに転籍合意が成立した」を、6行目の「同意した」の次に「ので、ここに転籍合意が成立した」を、7行目の「存在については」の次に「裁判上の」をそれぞれ加える。

(16)  原判決書13頁21行目の「適用」を「類推適用」と改める。

(17)  原判決書13頁24行目の「合理内容」を「合意内容」と改める。

(18)  原判決書14頁8行目の「転籍」の次に「に同意する旨」を加える。

(19)  原判決書14頁24行目の「徴求されていた」の次に「ように、同契約書は単にその場の必要に応じて徴求されるもので、雇用契約の始期と終期を厳密に規定するものではない」を加える。

(20)  原判決書16頁22行目及び17頁18行目の「10月上旬」をそれぞれ「10月上中旬」と改める。

(21)  原判決書19頁1行目冒頭から7行目末尾までを次のとおり改める。

「(8) 争点8(債務不履行又は違法行為の有無)について

(控訴人らの主張)

被控訴人Y1社は、控訴人らとの間の雇用契約に解雇に関する法理が類推適用されることから、控訴人らを雇止めすることはできず、そのことを知っていたにもかかわらず、被控訴人Y2社と共謀して、平成22年3月31日をもって控訴人らを雇止めする旨告げて、控訴人らに雇用形態の変更への同意を強要し、その意思に反して被控訴人Y2社への転籍に応じさせた。これは、雇用契約上の債務不履行又は不法行為に当たる。」

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も、控訴人らの請求のうち、控訴人ら各自と被控訴人Y2社との間において控訴人ら各自が被控訴人Y1社との雇用契約上の地位を有することの確認を求める訴えは、いずれも確認の利益がなく、不適法であるから、却下すべきであり、被控訴人Y2社に対するその余の請求及び被控訴人Y1社に対する請求は、いずれも棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決書「事実及び理由」欄の第3の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決書19頁19行目から20行目のかけての「しかしながら、」の次に

「被控訴人Y1社との雇用契約上の地位を有することは、同被控訴人との間で確認すれば必要にして十分であり、仮に被控訴人Y2社との間の紛争を解決するのに何らかの権利又は法律関係の存在又は不存在を確認する必要があるとしても、確認の対象は同被控訴人との間の権利又は法律関係の存否であって、これは別途確認されるべきものである。したがって、」を加える。

(2)  原判決書20頁2行目の「△△センタ」を「札幌△△センタ」と改める。

(3)  原判決書21頁14行目の「証人C本人」を「控訴人X1本人」と、17行目の「乙106の1(書証<省略>)、証人C本人」を「乙38、40、94、106の1(書証<省略>)、控訴人X1本人」とそれぞれ改める。

(4)  原判決書21頁22行目の「認められる」を「認められ、以上の認定を左右するに足りる的確な証拠はない」と改める。

(5)  原判決書22頁11行目から12行目にかけての「二次応対」を「二次対応」と改め、以下も同様とする。

(6)  原判決書22頁24行目末尾を改行して、次のとおり加える。

「b この点に関し、控訴人X1は、正社員と契約社員の業務内容は明確に区分することができないと主張し、その証拠として「平成21年度個人別データ(掲示用4~8月累計)」(書証<省略>)及び「勤務線表(暫定版)」(書証<省略>)を提出する。しかしながら、前者のデータは、17都道県下にある△△センタの生産性を把握し、課題を抽出し、その改善策等を講じることを主な目的として作成された資料であり(書証<省略>)、全ての正社員及び契約社員を対象とするものではなく、時間帯も限定されているから、このデータによって正社員と契約社員の業務内容の区分について検討することはできない。また、後者の表は、△△センタの勤務シフトに関するものであり(書証<省略>)、七つのグループのうち、宿直輪番及び夜勤輪番Iには正社員のみを配置していること、また、契約社員は、六つのシフトのうち、a、B、Gに主に配置した上で、これら三つのシフトには、契約社員のみではなく、正社員をも配置していることがうかがわれるから、この表をもって正社員と契約社員の業務内容が明確に区分できないことの表れであるということはできず、かえって、△△センタにおける正社員と契約社員の業務上の役割分担について検討した「△△部門の二層化受付体制に向けて(平成16年10月8日)」(書証<省略>)では、契約社員の業務上の役割が補助的なものであることが前提とされ、その明確化が企図されている。したがって、控訴人X1の上記主張は理由がなく、このほかに控訴人X1がるる主張するところについても、その主張に係る事実を認めるに足りる的確な証拠はない。」

(7)  原判決書22頁25行目の「b」を「c」と改める。

(8)  原判決書23頁8行目から9行目にかけての「そのことは、」の次に「求められる業務遂行能力の水準が異なることを意味する一方で、」を加える。

(9)  原判決書23頁14行目の冒頭に次のとおり加える。

「 証拠(書証<省略>)によると、b社や被控訴人らを含むb社グループは、従前から、社会環境の変化に応じた効率的な事業運営を指向し、様々な施策を講じていたところ、平成17年には、グループ内での人員の再配置等による有効活用、人件費の削減、変動費化を図るため、正社員を中心とする形態から契約社員、派遣社員等を活用した形態に変更していくこととし、その業務の別に応じて正社員と非正社員の配置等を区別していく旨の人員配置基本方針を定め、平成19年及び平成22年にも、人員配置の最適化を図るため、企画、戦略的業務等には正社員を、定型的な業務、端末操作等の業務には派遣社員等の非正規社員を配置することを基本とする計画を策定したこと、また、被控訴人Y1社は、平成20年10月ころまでに、同社の契約社員のうち、平成21年度中に集約・縮小を予定している業務従事者及び退職予定の者を除く全契約社員669名(控訴人らを含む。)を対象として本件雇用替えを実施する旨を決定したことが認められる。そして、」

(10)  原判決書23頁24行目の「△△センター」を「△△センタ」と改める。

(11)  原判決書24頁1行目末尾を改行して、次のとおり加える。

「 さらに、控訴人X1は、平成18年4月、f株式会社がコールセンタに勤務するパート社員約2万5000名のうち約6000名を正社員にするという方針を打ち出した際に、このことを報道する新聞記事が△△センタに掲示されたことがあり、これは控訴人X1らに正社員になれるかもしれないという期待を抱かせるに十分であったと主張する。しかしながら、前示の人員配置基本方針等に照らし、被控訴人Y1社がそのようなことをするとは考え難く、実際にかかる事実があったと認めるに足りる的確な証拠もない。したがって、控訴人X1の上記主張は理由がなく、このほかに控訴人X1がるる主張するところについても、その主張に係る事実を認めるに足りる的確な証拠はない。」

(12)  原判決書24頁5行目の「乙39(書証<省略>)、」の次に「91(書証<省略>)、」を加える。

(13)  原判決書24頁20行目末尾を改行して、次のとおり加える。

「c この点に関し、控訴人X1は、雇用契約更新に対する合理的期待の有無を判断する上では、当該契約社員の勤務する部署における雇止めの有無が重要であると主張するが、業務の消滅、業務量の減少等の業務上の都合というものが全く想定されない部署であれば格別、そうでない限り、たとえ自らの部署では雇止めがないものと期待したとしても、それを合理的なものと認めることはできないから、控訴人X1の主張は採用することができない。」

(14)  原判決書25頁7行目の「適用又は」を削る。

(15)  原判決書26頁7行目の「数名の」を「複数名の、年によっては十名以上の」と改める。

(16)  原判決書26頁8行目から9行目にかけての「複数雇止め」を「複数名雇止め」と改め、以下も同様とする。

(17)  原判決書26頁10行目の「うかがわせるもの」の次に「であり、この点は、△△センタにおいても、拠点の集約化が進んでいたことから、特に変わらない」を加える。

(18)  原判決書26頁15行目末尾を改行して、次のとおり加える。

「 これに対し、控訴人X1は、契約更新の際の説明は、契約書に基づく形式的なものであり、雇止めの具体的な可能性があると認識させるような説明はなされていなかったと主張する。しかしながら、契約更新の際に一応の説明が行われていたと認められることは前示のとおりであり、実際に、業務の消滅、業務量の減少等を理由として契約社員を複数名雇止めすることが毎年行われていたことからしても、雇用契約更新の手続が形式的、機械的なものになっていたとは認め難く、他にこの認定を左右するに足りる的確な証拠はない。したがって、控訴人X1の上記主張は理由がない。」

(19)  原判決書26頁18行目の「また、」の次に「控訴人X1において、」を加える。

(20)  原判決書26頁19行目の「いうべきである」の次に次のとおり加える。

「(なお、控訴人X1は、大阪地裁平成23年9月29日判決(労働判例1038号27頁)が本件に類似する事案について解雇に関する法理を類推適用した裁判例であると主張するが、この判決は、新規顧客の開拓や顧客の管理等の営業を行う者について、会社が前職を考慮して採用したことなどを考慮した事例であるから、本件とは事案を異にし、本件で参照するのに適切とはいえない。したがって、控訴人X1の上記主張は採用の限りではない。)」

(21)  原判決書27頁7行目の「78」の次に「、150の1ないし3。この点、○○システムのデータの変更作業まで行っていたという控訴人X2の主張は、控訴人X2自身が専らチェック作業をしていた旨供述していること(控訴人X2本人)に照らし、たやすく採用することができず、他に控訴人X2の主張を認めるに足りる的確な証拠はない。」を加える。

(22)  原判決書27頁8行目から9行目にかけての「○○システムに加えるべき変更の一覧表」を「通信建設会社から受領した前後データ」と、10行目の「同変更を○○システムのデータベースに反映した後のデータ」を「通信建設会社が○○システムのデータベースに反映(補正)させた内容」とそれぞれ改める。

(23)  原判決書27頁23行目の「加えて図面を作成する」を「コンピュータ図形と属性の形式で入力する」と改める。

(24)  原判決書28頁3行目の「図面」を「図面(写真)」と改める。

(25)  原判決書29頁6行目の「原告X2」から12行目末尾までを次のとおり改める。

「個別面談を行った旨の証人Dの証言及び陳述(証拠<省略>)があり、同証人は、平成18年2月に個別面談を行い、その際又はその直後に契約書を交付した旨陳述しているところ(書証<省略>)、控訴人X2及び控訴人X3は、個別面談はされなかった旨供述及び陳述する(証拠<省略>)とともに、同年4月の契約更新に関する電子メール(書証<省略>)を提出する。この点、確かに、上記電子メールは同年3月になってから契約書を手交したことを示しているから、同年2月ころに契約書を手交したという点に関しては、証人Dの陳述は間違いであったといわざるを得ない。しかしながら、契約書の手交と個別面談の実施とは別の事柄であり、上記電子メールは、あくまでも契約書の手交に関するものであって、個別面談の実施に関するものではないから、個別面談を行ったという点に関してまで、証人Dの証言及び陳述が信用できないと即断すべきことにはならないのであって、控訴人X2及び控訴人X3の供述及び陳述を直ちに採用することもできない。前示の人員配置基本方針等に鑑み、その後の契約更新の手続において個別面談がされていることや、控訴人X1に関して検討したところも併せ考慮すれば、この時期にも個別面談が行われていたものと認めるのが相当であり、他にこの認定を左右するに足りる的確な証拠はない。」

(26)  原判決書29頁13行目の「乙106の2及び3(書証<省略>)」を「乙38、40、94、106の2及び3(書証<省略>)」と改める。

(27)  原判決書29頁23行目の「供述」を「陳述」と改める。

(28)  原判決書30頁1行目の「記載があること」の次に「、前示のとおり、実際に業務の消滅、業務量の減少等を理由として契約社員を複数名雇止めすることが毎年行われていたこと」と加える。

(29)  原判決書30頁2行目及び12行目の「説明」をそれぞれ「実質的な説明」と改める。

(30)  原判決書30頁9行目の「供述」を「陳述」と改める。

(31)  原判決書30頁13行目の「各供述」を「供述ないし陳述」と改める。

(32)  原判決書30頁13行目末尾に続けて次のとおり加える。

「控訴人X2の場合と同様に、控訴人X3と被控訴人Y1社との間の雇用契約に係る契約書(書証<省略>)にも、退職及び解雇に関する事項、契約の更新及びその基準等の記載があることや、前示のとおり、実際に、業務の消滅、業務量の減少等を理由として契約社員を複数名雇止めすることが毎年行われていたことからしても、控訴人X3の上記各供述は容易に採用することができないというべきである。」

(33)  原判決書30頁18行目から19行目にかけての「あったものの、」の次に「全員がそうであったかはともかく、」を加える。

(34)  原判決書30頁20行目を次のとおり改める。

「、また、設備管理センタにおける図面(写真)管理グループのOPA担当及び道路管理システム担当は、前示程度の研修やOJTで対応できる業務内容であったことが推認される。」

(35)  原判決書30頁22行目冒頭から25行目末尾までを次のとおり改める。

「 証拠<省略>によると、控訴人X2及び控訴人X3が所属していた設備管理センタは、業務が縮小され、平成17年4月には44名の契約社員Ⅱが所属していたが、平成24年4月にはこれが22名まで減少したことが認められる(なお、その上部組織である設備マネジメント部門全体としては、組織の再編によって他の部署を統合するなどしたことから、所属する人数は大きく変化してはいない。)。」

(36)  原判決書31頁5行目の「適用又は」を削る。

(37)  原判決書31頁9行目の「5回されている」の次に「から、控訴人X2及び控訴人X3において雇用継続の期待を有していたとしても、あながち不合理であるということはできない」を加える。

(38)  原判決書31頁11行目の「異なって」の次に「おり、また、短期間の研修やOJTで対応できる程度の業務を担当するにとどまって」を加える。

((39) 原判決書31頁15行目から16行目にかけての「数名の」を「複数名の、年によっては十名以上の」と改める。

(40)  原判決書31頁19行目の「うかがわせるもの」の次に「であり、この点は、設備管理センタにおいても、縮小傾向にあったことから、特に変わらない」を加える。

(41)  原判決書31頁23行目の「雇用更新」を「雇用契約更新」と改める。

(42)  原判決書31頁24行目末尾を改行して、次のとおり加える。

「 これに対し、控訴人X2及び控訴人X3は、契約更新の際の説明は、契約書に基づく形式的なものであり、雇止めの具体的な可能性があると認識させるような説明はなされていなかったと主張する。しかしながら、契約更新の際に一応の説明が行われていたと認められることは前示のとおりであり、実際に、業務の消滅、業務量の減少等を理由として契約社員を複数名雇止めすることが毎年行われていたことからしても、雇用契約更新の手続が形式的、機械的なものになっていたとは認め難く、他にこの認定を左右するに足りる的確な証拠はない。したがって、控訴人X2及び控訴人X3の上記主張は理由がない。」

(43)  原判決書32頁2行目の「いうべきである」の次に次のとおり加える。

「(なお、控訴人X2及び控訴人X3は、大阪地裁平成23年9月29日判決が本件に類似する事案について解雇に関する法理を類推適用した裁判例であると主張するが、この判決が本件とは事案を異にし、本件で参照するのに適切とはいえないことは前示のとおりである。)」

(44)  原判決書32頁5行目の本文冒頭から6行目末尾までを次のとおり改める。

「以上によれば、控訴人らと被控訴人Y1社との間の雇用契約に解雇に関する法理が類推適用されるとは認められず、被控訴人Y1社による雇止めが許されないとはいえないので、控訴人らと被控訴人Y1社との間の雇用契約は、いずれも期間満了により終了すべきものであるから、被控訴人Y1社との間の雇用契約が継続していることを前提に同契約上の地位の確認を求める控訴人らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。したがって、被控訴人Y1社が、控訴人らを雇止めすることができないことを知っていたことを前提に、被控訴人Y2社と共謀して、その意思に反して被控訴人Y2社への転籍に応じさせたという、雇用契約上の債務不履行又は同契約上の地位を違法に侵害する不法行為があったと認めることもできないから、控訴人らの被控訴人らに対する慰謝料請求も、いずれも理由がない。」

2  よって、本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山﨑勉 裁判官 馬場純夫 裁判官 湯川克彦)

(別紙)

当事者目録

控訴人 X1

控訴人 X2

控訴人 X3

上記3名訴訟代理人弁護士 長野順一

同 佐藤哲之

同 佐藤博文

同 渡辺達生

同 齋藤耕

同 林千賀子

同 中島哲

同 平澤卓人

同 山田佳以

被控訴人 株式会社Y1

代表者代表取締役 A

被控訴人 Y2株式会社

代表者代表取締役 B

上記両名訴訟代理人弁護士 寺前隆

同 岡崎教行

同 宮島朝子

以上

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