札幌高等裁判所 平成25年(ネ)347号 判決 2014年2月04日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,20万円及びこれに対する平成24年3月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行宣言
第2事案の概要
次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるからこれを引用する。
1 原判決2頁3行目の「身体検査」の次に「(合計3回)」を加える。
2 同2頁5行目から6行目にかけての「初回の裸体検査の日」を「不法行為の日(初回の身体検査の日)」に改める。
3 同3頁26行目の「証拠<省略>」の次に「証拠<省略>」を加える。
4 同4頁26行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「控訴人は,平成11年7月27日,f刑務所の受刑生活において,ズボンの片布を不正に加工したことで軽屏禁5日の懲罰を科されたことや,平成23年7月13日,g拘置所で陰茎に異物を挿入していたことがあり,前歴,性格,挙動等からみて肛門検査等をする合理的根拠がある。」
第3当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,〔判示事項〕原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるからこれを引用する。
⑴ 原判決5頁17行目の「証拠<省略>」を「証拠<省略>」に改める。
⑵ 同7頁4行目の「反則行為」の次に「(受刑者遵守事項26条違反)」を加える。
⑶ 同8頁13行目の「における肛門検査等」を削る。
⑷ 同8頁14行目から15行目にかけての「(昭和22年法律第125号)」を削る。
⑸ 同8頁23行目から24行目にかけての「平成17年法律第50号。」を削る。
⑹ 同9頁21行目冒頭から11頁16行目の「また,」までを次のとおり改める。
「⑵ 本件各裸体検査は,反則行為をした疑いがあり調査のための昼夜居室処遇に付される者に対する裸体検査であるところ,昼夜居室処遇を受ける者は,逃走の用に供するおそれのある物品や凶器となり得る物品等(以下「不正物品」という。)を携帯したり,陰茎表面に異物を混入する自傷行為をしたりする可能性があり,不正物品の隠匿や自傷行為といった反則行為の有無を確認する必要があること,不正物品は,口内,耳孔,肛門周辺部及び陰部に挟み込んで隠匿することがあることから,検査対象者を裸体にした上で,当該部位を目視により確認するという検査をすることが許される場合がある。そのような検査が許される場合に当たるか否かの判断に当たっては,嫌疑がかけられた反則行為の内容,検査対象者の前歴,性格,挙動等を基に判断するのが相当である。
証拠<省略>によれば,控訴人は,平成11年7月27日,f刑務所の受刑生活において,ズボンの片布を不正に加工したこと(物品不正加工)で軽屏禁5日の懲罰を科されたことや,平成23年7月13日,g拘置所で陰茎に異物を挿入していたという前歴がある。そして,認定事実によれば,第1回裸体検査前に疑われた反則行為は,控訴人と同衆Kとがけんかし,受刑者遵守事項24条に違反したこと(ただし,調査後は粗暴な言辞とされ,受刑者遵守事項26条違反に変更された。)であり,第2回裸体検査前に疑われた反則行為は,控訴人が本件刑務所の職員に語気荒く放言し侮辱したことであり,第3回裸体検査前に疑われた反則行為は昼夜居室処遇中の不正洗髪であるが,それらからは,控訴人の同衆や本件刑務所職員に対する攻撃的な性格や反則行為を続けるという挙動を見て取ることができる。これらによれば,不正物品の隠匿や自傷行為といった更なる反則行為の有無を確認する必要があり,そのために本件各裸体検査をするのは相当である。
なお,」
⑺ 同12頁3行目の「⑸」を「⑶」に改める。
⑻ 同12頁3行目の「肛門検査等」を「本件各裸体検査」に改める。
⑼ 同12頁20行目の「⑹」を「⑷」に改める。
⑽ 同12頁21行目の「において肛門検査等」を削る。
2 控訴人は,控訴人が不正物品を所持しているか確認する必要がないことや,肛門検査の際の立会人が1人であっても控訴人の羞恥心や名誉感情が損なわれること等をるる主張するが,本件各裸体検査が違法と認められないことは,前記のとおり補正した上で引用した原判決の認定事実及びこれに基づく説示のとおりであって,控訴人の主張によりこれが左右されるものではない。
第4結論
以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 岡本岳 佐藤重憲 石川真紀子)