札幌高等裁判所 平成26年(ネ)13号 判決 2014年6月03日
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2⑴ 1次的請求
被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して1475万9490円及びこれに対する平成21年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
⑵ 2次的請求
被控訴人国は,控訴人に対し,1125万9490円及びこれに対する平成21年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
⑶ 3次的請求
被控訴人国は,控訴人に対し,491万9490円及びこれに対する平成21年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
4 仮執行宣言
第2事案の概要
原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるからこれを引用する。ただし,原判決2頁24行目の「請求1及び2」を「1次的請求及び2次的請求」に,同行目の「請求3」を「3次的請求」に改める。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,〔判示事項〕原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決54頁7行目冒頭から25行目末尾までを次のとおり改める。
「しかしながら,検察官は,公判前整理手続において,当初,検察官の主張を根拠付ける事実として,A車両が対面信号の青色表示に従って発進した後に控訴人車両と衝突したとするAの供述の他にGやDの目撃内容を挙げ,証人Gの立証趣旨を,Gは歩行者用信号が青色であると認めて横断しようとしたときに本件事故を目撃したこととし,その後の公判前整理手続において,Gの目撃内容をAの供述を裏付ける事実関係として主張した(前記認定事実⑹ウ,エ及びカ)。このような審理経過に照らすと,Gの目撃内容は,Aの供述の裏付けとして位置づけられるものである。そして,認定事実⑹エ,証拠<省略>によれば,Gは,捜査段階では,歩行者用の信号表示が赤から青に変わってから控訴人車両のライトに気付いた旨の供述をしていたものの,その後のP代理人による事情聴取や刑事第一審の公判においては,控訴人車両のライトを見た後,信号が青に変わった旨述べ,検察官が立証を予定していた目撃内容と異なった供述をしていること,検察官は,論告において,Gが公判で供述した目撃内容を重要な証言と位置づけて主張していることが認められる。
そうすると,Gの公判供述の信用性を判断するに当たっては,その内容を慎重に吟味して検討する必要は認められるが,自由心証主義(刑事訴訟法318条)の下に,刑事第一審の裁判所がGの供述を信用してこれを主たる根拠とし,これと符合する限度でAの供述を信用することができるとして犯罪事実を認定することは,直ちに違法となるとはいえないし,上記特別の事情があるとは認められない。」
2 控訴人は,目撃供述のような初期供述をそのまま保存する必要性が高い場合,捜査官による説得や誘導は原則的に許されないと主張するが,捜査官に被疑者等の取調べにおける一定程度の裁量が認められ,他の証拠との矛盾があったり,供述者の記憶違いや虚偽供述の可能性があったりする場合に,疑問点を提示するなどして,誘導的な質問や説得をすることが許されるのは,供述内容が目撃供述であっても変わるところはない。したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
また,控訴人は,J警部補がD及びHに対する取調べで虚偽の内容の供述調書を作成し,Hの供述の経過を記載しなかったことは違法であること,I副検事がHに対し他の者との供述の齟齬を指摘することは違法であること,公訴提起の時点で控訴人が有罪との嫌疑は十分ではなく,公訴提起は違法であること,及び刑事第一審判決が違法であることについてるる主張するが,これらの点についての認定・判断は,上記のとおり補正して引用した原判決の認定事実及びこれに基づく説示のとおりであり,控訴人の主張によって左右されない。
第4結論
よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 岡本岳 湯川浩昭 石川真紀子)