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札幌高等裁判所 平成26年(行コ)8号 判決 2014年12月19日

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  札幌南税務署長が平成23年9月13日付けで控訴人に対してした控訴人の平成19年11月15日相続に係る相続税の更正処分のうち課税価格5億5071万8000円,納付すべき税額1億4467万8900円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税額5万円を超える部分をいずれも取り消す。

第2事案の概要

1  控訴人は,年月日<省略>,控訴人の母である被相続人A(以下「亡A」という。)から原判決書別紙3<省略>不動産目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)及び同目録<省略>記載3の土地(以下「本件土地3」といい,本件土地1とあわせて「本件各土地」という。)等を相続し(以下「本件相続」という。),平成20年9月11日に相続税の申告を,同月16日に訂正申告を,同年12月24日に修正申告をそれぞれ行ったところ,札幌南税務署長(処分行政庁)は,相続税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分とあわせて「本件各処分」という。)をした。本件は,控訴人が,本件各処分には本件各土地の評価を誤った違法があると主張して,本件各処分の一部の取消しを求めた事案である。

原審は,本件各処分はいずれも適法なものであるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人はこれを不服として控訴した。

2  関係法令及び通達の定め,前提となる事実,本件各処分の根拠及び適法性に関する被控訴人の主張並びに争点及びこれに対する当事者の主張は,原判決書「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要等」の2ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,本件各処分はいずれも適法なものであり,控訴人の請求は理由がなく,いずれも棄却するのが相当であると判断するが,その理由は,原判決書「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。

2  控訴理由について

⑴  控訴人は,原判決が,札幌南税務署長が本件各土地の評価に当たり,控訴人の本件各建物の持分である2分の1に相当する部分については使用貸借通達に則って自用地として評価し,亡Aの本件建物の持分である2分の1に相当する部分について貸家建付地として評価したことを相当であるとした判断について,評価通達2によるというほかは理由を述べておらず,理由不備である旨主張する。しかしながら,上記の判断は,本件各建物が共有であることから,持分割合によるのが相当であると評価をしているのであり,それ自体相当な判断であり,理由不備でないことは明らかである。

⑵  控訴人は,①亡Aの本件各建物の共有持分が2分の1であっても,亡Aが本件各建物を単独所有している場合と同様に,亡Aの本件各建物に係る本件各土地に対する敷地利用権は,本件各土地全体に及ぶこと,②当該土地がその上の建物の賃借人の敷地利用権から受ける制約は土地全体に及ぶから,建物所有者の敷地利用権として所有権がある以上,使用貸借通達3を適用して土地の評価を行うことはできない,③ある土地所有者がその上の建物を単独所有し,当該建物を第三者に賃貸していた場合,当該土地は貸家建付地として評価されるところ,本件各土地も,上記の場合の土地が建物賃借人の敷地利用権から受ける制約と同じ制約を受けることとなるなどと主張する。しかしながら,本件各土地が本件各建物のために負担している敷地利用権は,控訴人の使用貸借に基づく部分がある分だけ,亡Aが本件各建物を単独所有している場合よりも観念的には負担の少ないものというべきであり,控訴人の主張は,本件各建物が敷地を不可分の形で利用していることを根拠として,控訴人の本件各建物の共有持分の2分の1について,敷地利用権が使用貸借であることを無視すべきであると主張しているにすぎず,採用することはできない。

3  よって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判官 佐藤道明 馬場純夫 三宅康弘)

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