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札幌高等裁判所 平成4年(ラ)42号 決定 1992年6月15日

抗告人 株式会社創和

代表者代表取締役 栗橋健夫

主文

1  原決定を取消す。

2  原決定添付別紙物件目録<省略>記載の不動産について、抗告人に対する売却を不許可とする。

理由

<一部仮名>

1  本件執行抗告の趣旨及び理由は、別紙<省略>のとおりである。

2  当裁判所の判断

記録によれば、(1)抗告人は、原決定添付別紙物件目録記載の土地、建物(以下「本件土地、建物」という。)につきなされた期間入札において入札価額五五一万一〇〇〇円で入札したところ、最高価買受人となり、執行裁判所は平成四年四月一四日、抗告人に売却を許可する旨の決定をしたこと、(2)本件土地、建物のもと所有者甲山乙男は、昭和六三年六月二日、自宅としていた本件建物裏の本件土地内で、フェンスにロープを掛けて首吊り自殺をしたこと、(3)抗告人は右事実を知らずに入札に参加し、売却許可決定後の平成四年四月一八日、現地に赴いたところ、近隣の者からその旨聞かされて知るに至ったが、右事実を知っていれば、前記入札価額で入札する意思はなかったこと、(4)物件明細書及び評価書を含め本件記録中には、甲山乙男が本件土地で自殺した旨の記載はないことが認められる。

宅地内で前所有者が自殺し、現在なお近隣者等からその事実を指摘されるような状況にあるときには、その取得者が住宅としての快適な居住使用が損なわれると感じるのにも相応の理由があるということができ、これを単に主観的事由として排斥することはできない。したがって、右のような事情は当該土地、建物の価値評価を低下させる事由というべきであり、その程度も軽微とは言い難いところ、本件土地、建物の最低売却価額を決定するについて右事情が考慮されたとは記録上認め得ない。

そうすると、右は民事執行法七一条六号の売却不許可事由に該当するというべきであるから、本件執行抗告は理由がある。

3  よって、原決定を取り消し、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 仲江利政 裁判官 河合治夫 高野伸)

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