札幌高等裁判所 平成6年(行コ)6号 判決 1997年4月30日
控訴人
北海道知事(Y) 堀達也
右訴訟代理人弁護士
太田三夫
右指定代理人
久門修
同
平塚努
同
高橋良直
同
齊藤和利
同
村上秀樹
同
西川和宏
同
窪田敦明
同
樫林守
同
鎌田謙三
同
横谷茂
同
寺口広二
同
齊藤齊
被控訴人
芳賀耕一(X)
主文
一 原判決を次のとおり変更する。
1 控訴人が被控訴人に対して平成五年二月一六日付けでした公文書一部開示決定のうち非開示とした部分中、別紙記載の文書1ないし3及び5ないし10の非開示とした部分を取り消す。
2 被控訴人のその余の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを一〇分し、その一を被控訴人の、その余を控訴人の各負担とする。
事実
第二 当事者の主張
二 当審における主張
1 控訴人(予備的主張)
本件条例九条二項五号は、「実施機関は、開示請求に係る公文書に、試験の問題及び採点基準、検査、取締り等の計画及び実施要領、訴訟の方針、入札予定価格、用地買収計画その他の道又は国等の事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務若しくは事業の目的を失わせ、又は当該事務若しくは事業若しくは将来の同種の事務若しくは事業の公正若しくは円滑な実施を著しく困難にするおそれのあるものについて、当該公文書に係る公文書の開示をしないことができる。」と規定している。これを受けて通達では、本件条例九条二項五号の「「当該事務若しくは事業若しくは将来の同種の事務若しくは事業の公正若しくは円滑な実施を著しく困難にするおそれ」とは、その情報を開示することにより、現在に行われつつある事務若しくは事業又は行われようとしている事務若しくは事業の公正又は円滑な実施に重大な支障を及ぼす場合はもとより、工事単価表、用地買収計画等を開示することにより、反復又は継続して行われる各種の土木建設工事、用地買収等の事務若しくは事業の将来における公正又は円滑な実施に重大な支障を及ぼす場合をいう。」としている。
本件開示請求の対象になっている情報は、行政指導として行っているゴルフ場の開発行為に係る事前協議資料として北海道が提出を受けたものであり、このような相手方の任意の同意に基づいて提出された情報についても、個々具体的の比較考量により開示又は非開示を決定すべきであるとすると、従来許可権者と開発事業者の合意により安定的に運営してきたゴルフ場の開発行為に係る事前協議制度の実行性の確保が困難になることが予想される。
したがって、非開示とされた本件各文書の全ては、「その情報を開示することにより、現在行われつつある事務若しくは事業又は行われようとしている事務若しくは事業の公正又は円滑な実施に重大な支障を及ぼす」ことが明らかな情報である。
よって、本件各文書は、全て本件条例九条二項五号に該当する。
2 被控訴人
本件条例においては、非開示の決定又は一部開示の決定をした場合にはその理由を併せて開示請求者に通知しなければならず、この理由の通知は非開示の決定又は一部開示の決定の適法要件となっている。
控訴人は、本件処分から二年半以上経過して、新たな非開示理由を持ち出してきたが、控訴人の主張のとおり、本件文書が本条例九条二項五号に該当すると仮定しても、本件処分は、本件条例一一条一項に定める要件を満たさず、違法な行政処分として取消しを免れないことは明らかである。
したがって、控訴人の当審における予備的主張は、その内容を判断するまでもなく理由がない。
理由
一 当裁判所は、被控訴人の本訴請求は、本判決主文一項1掲記の限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決が「理由」において説示するとおりであるから、これを引用する。
1 原判決の訂正等
(一) 原判決一六枚目表末行の「第三七号証」の前の「及び」を「、」と改め、同裏四行目及び九行目の各「事前協議書」の前にそれぞれ「本件」を加え、同一七枚目表六行目の「金額」を「各支出及び収入項目の金額及び合計金額」と、同裏一行目の「公告が」を「公告することが取締役に」と、同二行目の「これを」を「右書類を」と各改め、同行目の「なっている」の次に「(同法二八三条一項、三項、二八二条二項)」を加え、同三行目の「地番のみが」から同五行目の「土地について、」までを「本件開発事業者が独自に土地登記簿・地図を閲覧する等して得た情報や測量ないし調査した結果等により、開発区域及びこれに隣接する周辺土地の所在、地番及び権利者が分かるように加工、作成した図面であって、右土地について」と、同一〇行目の各「一ないし三」(二か所)をそれぞれ「1ないし3」と、同一二行目の「明らかでないが」から同一八枚目表四行目末尾までを「証拠上明らかでないが、控訴人が当審で提出した準備書面によれば、本件文書6は、ゴルフ場のコースの配置、形状等のレイアウトが、本件文書7は、コースのレイアウトのほか、コース内の切土量、盛土量及び距離、地形の改変の状況が三枚の図面に分けて、本件文書8は、コースのレイアウトの中にコース内の排水経路やその工法等が三枚の図面に分けて、それぞれ記載されたものであり、本件文書9は、排水工標準図(漂準的なホールの集水桝・排水工・排水桝等が記載されたもの)、ティーグランド詳細図、フェアウェイ詳細図、グリーン詳細図及び排水工標準断面図の五つの図面であり、本件文書10は、コースのレイアウトの図面に開発区域内の植生等が森林・草原・その他ごとに色分けして記載されたものであるということである。」と各改める。
(二)同一八枚目表五行目の「本件条例」の前に「本件文書4の」を、同末行の末尾に続けて、「そして、同項ただし書は、さらに例外を設け、「当該特定個人情報(右括孤書によって一部除外した後の個人情報を指す。)が、法令等の規定による許可、免許、届出等に際して実施機関が作成し、又は取得したものであって、開示すべき公益上の必要が認められるもの」は非開示とすることはできないと規定している。」を各加え、同裏一行目冒頭から同一九枚目表七行目末尾までを次のとおり改める。
「本件地番図は、前記認定のとおり、本件開発事業者が独自に土地登記簿・地図の情報や測量・調査の結果等により加工、作成した図面で、開発区域及び区域外の周辺土地について地番ごとに土地の権利者名を識別できるようにしたものであるところ、そのうち開発区域外の土地権利者である個人の氏名の部分すなわち本件文書4は、開発区域外の周辺土地の財産の状況を示す個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるものが記録された文書であることは明らかであるから、本件条例八条一項本文に該当する。
被控訴人は、本件文書4にかかる情報は不動産登記法二一条により何人でも取得できる情報、すなわち、本件条例八条一項本文において開示してはならない個人情報から除外されている「法令及び他の条例の規定により何人でも取得することができる情報」(本件条例八条一項本文括弧書)に該当する旨主張する。
ところで、「法令及び他の条例の規定により何人でも取得することができる情報」は、適正な法的手続に従って誰でも容易に取得することができる情報で、一般に了知されていると認めることができることから、非開示とすべき実益がないために本件条例八条一項本文の個人に関する情報から除外されているのであるが、公文書にかかる情報が右の何人でも取得することができる情報に該当するか否かの判断にあたっては、個人のプライバシー保護の見地から厳格になされるべきであるところ、本件文書4は、前記認定のとおり、本件開発事業者が独自に土地登記簿・地図の情報や測量・調査の結果等により加工、作成した地番図のうちの開発区域外の土地権利者である個人の氏名の部分であり、土地登記簿が現在における不動産の真実の権利関係を必ずしも反映していない現状にかんがみると、本件文書4にかかる情報は、不動産登記法二一条により法務局で閲覧できる登記簿等から得られる情報と全く同一の情報であると認めることは困難であるから、「法令及び他の条例の規定により何人でも取得することができる情報」(本件条例八条一項本文括孤書)には該当しないといわざるをえない。
したがって、本件文書4は、本件条例八条一項本文に該当し、同項ただし書に該当する事情も認められないから、控訴人の本件請求のうち、本件文書4の開示を求める請求は理由がない。」
(三) 同一九枚目表八行目の「本件条例」の前に「本件文書1ないし3及び5ないし10の」を加え、同一一行目の「事業等」から同裏一行目末尾までを「九条一項本文において、「実施機関は、開示請求に係る公文書に、法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報であって、開示することにより、当該法人等の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるものが記録されているときは、当該公文書を開示しないことができる。」旨規定している。これを受けて通達では、本件条例九条一項本文の「当該法人等の競争上若しくは事業運営上の地位又は社会的な地位が損なわれると認められるもの」とは、「ア 法人等又は事業を営む個人の保有する生産技術上のノウハウ等の事項に属する情報、販売、営業上の事項に属する情報等であって、開示することにより当該法人等又は事業を営む個人の事業活動が損なわれると認められるもの イ 経理、労務管理等の法人等又は事業を営む個人が事業活動を行う上での内部管理上の事項に属する情報であって、開示することにより当該法人等又は事業を営む個人の事業運営が損なわれると認められるもの」とされている。」と、同二行目の「しかし」を「他方」と各改め、同三行目の「九条一項」の次に「本文」を加え、同六行目の「九条一項ただし書」を「本件条例九条一項ただし書三号」と、同八行目の「同項ただし書」から同一一行目末尾までを「開示することによって損なわれる法人等の事業利益等と開示することの必要性又は公益上の必要性とを比較考量して同項ただし書の要件に該当するか否かを検討したうえ、公開の可否を判断する必要があるというべきである。」と、同一二行目冒頭から同末行末尾までを「(一) 本件条例九条一項本文該当性について」と各改める。
(四) 同二〇枚目表一行目の「年商額・主要取引銀行の部分及び本件文書3」を「年商額、主要取引銀行の部分」と、同九行目の「いるから」から同裏四行目末尾までを「いることが認められるから、本件文書1のうちの年商額や主要取引銀行名は、誰でも容易に入手することができる情報であり、しかも、それらは企業に関する基礎的な情報であって、社会的に営業活動を営む法人等がその営業活動の中でも自己の信用力を示す指標として第三者に対し一般的に開示している情報であることにかんがみると、本件開発事業者が事業活動を行う上での内部管理上の事項に属する情報であるとしても、これを開示することにより本件開発事業者の事業運営上の地位等が損なわれるとは認められない。」と各改める。
(五) 同二一枚目表六行目の「右事実」から同一〇行目末尾までを行をかえて次のとおり改める。
「ところで、開発事業者と工事施工業者は、一般的に開発事業のかなり初期の段階から協定を締結する等して開発事業計画を協力して進めており、事前協議書が提出される段階では、両者の間には相当緊密な関係が形成されていること、しかも、前記認定事実に加えて、乙第一一号証及び弁論の全趣旨によれば、工事施工業者は、一般的には資金力、技術力、信用力を兼ね備えた大手建設会社に限定されていることがうかがわれることからすると、工事施工者名が開示されることによってかかる業者間に無用な競争が生じる危険性は乏しいと考えられること、開発事業者が事前協議書に工事施工者名を記載した以上、工事施工者を安易に他の業者に変更することは事前協議手続上かなりの支障を伴うことが予想されること等の諸事情にかんがみると、本件文書1のうちの工事施工者名は、本件開発事業者が事業活動を行う上での内部管理上の事項に属する情報であるとしても、これを開示することにより本件開発事業者の事業運営上の地位等が損なわれるとは認められない。」
(六) 同二一枚目表一二行目冒頭から同裏二行目末尾までを次のとおり改める。
「前記認定のとおり、本件文書1のうちの資金計画の概要及び本件文書2(収支計画及び事業費内訳書)には、開発事業者の各年度別の各支出(事業費)及び収入科目(自己資金等)の金額及び合計金額、工事施工業者の個別の事業単価や施工費、その総事業費等が記載されており、これらの情報は、本件開発事業者が事業活動を行う上での内部管理上の事項に属する情報であると認められ、本件開発事業者又は工事施工業者にとって、他人特に同業他者に右情報を知られると、事業運営上の地位等が損なわれるおそれがあると一応認められる。」
(七) 同二一枚目裏末行の「開発事業者」の前に「本件」を、同二二枚目表九行目の「損なう」の前に「競争上若しくは事業運営上」を各加え、同一〇行目冒頭から同裏一行目の「いえるが、」までを次のとおり改める。
「(4) 本件文書3について
本件文書3は、本件開発事業者の貸借対照表及び損益計算書であるが、貸借対照表は、一定時点における当該企業の財政状態を表示するもので、支払能力及び担保能力等を判定する重要な資料であり、損益計算書は、一定期間における当該企業の経営成績を表示するもので、純損益の発生原因や過程を明らかにし、経常収益力とともに企業全体の損益を示すことによって将来の経営活動に関する重要な指針を与えられるものであるから、これらの情報は、本件開発事業者が事業活動を行う上での内部管理上の事項に属する情報であると認められ、本件開発事業者にとって、他人特に同業他者に右情報を知られると、事業運営上の地位等が損なわれるおそれがあると一応認められる。
しかしながら、貸借対照表及び損益計算書は、前示のとおり、
商法上、取締役が定時株主総会に提出してその承認を求めることが要求されている文書であり、また、貸借対照表又はその要旨は、同法により公告することが取締役に義務付けられ、株主及び会社債権者は右各書類を閲覧することができることになっているのであるから、本件文書3を開示することによって本件開発事業者の競争上若しくは事業運営上損なわれる利益は少ないと考えられる。
(5) 本件文書5ないし10について
本件文書5ないし10は、前記二1(七)で示したとおり図面であり、これらの図面から計算予定のゴルフ場のコース配置及び形状等のレイアウトその他の施設設計等を確認することができるから、これらの情報は、本件開発事業者が保有する生産技術上のノウハウ等の事項に属する情報等であって、本件開発事業者にとって、計画段階で他人特に同業他者に右情報を知られると、事業運営上の地位等が損なわれるおそれがあると一応認められる。
しかしながら、」
(八) 同二二枚目裏六行目の「その内容」から同一二行目末尾までを「その内容が控訴人提出の準備書面のとおりであるとしても、その立証は尽くされておらず、本件開発事業者等が作成した「狩勝高原サホロリゾート開発事業に係る環境影響評価書(修正版)」(甲第三五号証)に添付された施設配置図、緑化計画図、造成計画図、雨水排水計画図及び農薬流出防止施設フロー等の図面によって既にその概略が明らかにされていることを併せかんがみると、これらの文書が開示されることによって本件開発事業者の事業運営上の地位等が大きく損なわれるとまでは認め難い。」と、同末行全部を「(二) 本件条例九条一項ただし書該当性について」と各改め、同二三枚目表一行目の「甲第一二号証」の次に「、第一六号証」を、同七行目の「生じたこと」の次に「(乙第一二、第一六号証は、要綱施行後の平成六年一〇月末日現在ないしそれまでの状況を述べたものであり、必ずしも右認定を左右するものではない。)」を、同裏二行目の「行っていること、」の次に「本件開発区域は、概ね東西に等高線が走り、北側から南側にかけて標高差およそ五〇メートルの穏やかな扇状地形をなす地域で、本件開発区域内には、三本の河川か東西に流れており、右関連流域の下流はサケ・マス増殖河川十勝川であり、至近下流には町の淡水魚養魚場が設置されていること、本件開発区域内の地質は、玉石混じり砂礫、礫混じりの砂質土が主体であり、本件開発区域内の植生は、クマイザサ、ススキ等の草原やシラカバ、ヤナギを主体とする貧弱なものであるが、北西部にはミズナラ、エゾイタヤ等の自然林が残っていること、本件開発事業者は、概要説明書の中で、1(1)農薬散布による被害防除計画として農薬を多く散布するグリーンやティーグランドを吸着層とする構造にし、下部に防水シートを敷いて、農薬を含んだ水を極力区域外に流出させないようにすること、(2)排水計画として汚水排水は、簡易水洗による汲み取り方式を採用して、流域河川に流出させないこと、(3)修景緑化計画として開発区域内の自然林は可能な限り残すこと等の計画方針を説明していること、」を、同三行目の「流出問題」の次に「、汚水の排水問題」を各加え、同七行目の「環境保全」を「自然環境の保全」と改める。
(九) 同二四枚目表一行目の「必要性が大きい」を「必要性が、前述した開示することによって損なわれる本件開発事業者の事業利益等よりも大きい」と、同四行目冒頭から同裏一二行目末尾までを次のとおり各改める。
「(三)結語
以上によれば、本件文書1のうちの年商額、主要取引銀行名及び工事施工者名の部分は、本件条例九条一項本文に該当する情報とは認められない。また、仮に右部分を含めて、本件文書1ないし3及び5ないし10にかかる情報が本件条例九条一項本文に該当するとしても、前述したとおり同項ただし書三号に該当するから、本件文書1ないし3及び5ないし10を非開示とすることは許されない。
本件文書4は、本件条例八条一項本文に該当し、同項ただし書に該当する事情も認められないから、本件文書4を開示することは許されない。
したがって、控訴人の本件処分中、本件文書1ないし3及び5ないし10を非開示とした処分は違法であるから、これを取り消すべきであり、本件文書4を非開示とした処分は適法である。」
2 当審における主張に対する判断
控訴人は、当審において、予備的に、本件各文書は、全て本件条例九条二項五号に該当するので、本件処分は相当である旨主張する。
ところで、本件条例一一条一項は、実施機関が公文書開示の請求に対して、開示請求に係る公文書の非開示の決定又は一部開示(当該公文書のうち非開示情報が記録されている部分を除いた部分の開示)の決定をしたときは、書面により前者の場合はその理由を、後者の場合は当該決定をした旨及びその理由を併せて開示請求者に通知しなければならない旨規定している。本件条例が、右のように公文書の非開示の決定又は一部開示の決定通知書にその理由を付記すべきものとしているのは、同条例に基づく公文書の開示請求制度が、道民の道政に対する理解と信頼を深め、地方自治の本旨に即した道政の発展に寄与することを目的とするものであって、実施機関においては、公文書の開示を請求する道民の権利を十分に尊重すべきものとされていることにかんがみ、非開示理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正かつ妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、非開示理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由付記制度の趣旨にかんがみると、控訴人が被控訴人に対して通知した本件処分に伴う決定通知書に、前述のとおり非開示の理由として別紙記載のとおりの理由を掲げたのみで、本件各文書が全て本件条例九条二項五号に該当する旨の理由付記をしていない以上、控訴人は、当審において、予備的に本件各文書が全て本件条例九条二項五号に該当するから、本件処分は相当である旨の主張をすることは許されないと解するのが相当である。
したがって、控訴人の当審における主張は、その余の点を判断するまでもなく採用することができない。
三 結論
よって、本件控訴に基づき、原判決を主文一項1、2のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九六条、八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹原俊一 裁判官 竹江禎子 滝澤雄次)