札幌高等裁判所 昭和26年(う)829号・昭26年(う)828号・昭26年(う)827号・昭26年(う)826号 判決
二、弁護人Aの被告人久米喜代志に対する控訴趣意第一乃至第三点、弁護人Bの同被告人に対する控訴趣意第七点、弁護人Cの被告人仙北晋五郎に対する控訴趣意(いずれも事実誤認)について
原判決の挙示にかゝる原判示第二、第三事実に関する証拠中
一、被告人仙北留五郎の検察官に対する供述調書(昭和二十四年十二月八日附及び第二回)の各記載
一、被告人久米喜代志の検察官に対する供述調書(昭和二十四年十一月十七日附及び第二回)の各記載
に拠れば、被告人仙北が原判示第二の一乃至三の事実の如く同久米又はその妻仲に対しリンゴ又は酒食及び土産の餅を供与し、一方被告人久米が原判示第三の一、二事実の如く同仙北から右と同一物品を収受したことを認めることが出来る。然らば右物品の供与又は収受の行為が右原判示第二、第三事実に記載した如く被告人久米の職務に関して為されたものであるか否かにつき検討するに、原判示挙示にかゝる右第二、第三事実に関する各証拠を綜合しても、右の事実を肯認し難く、却つて、右各証拠に加うるに、
一、原審第四回公判調書中証人黒沢明、同笠原勇吉の各供述記載
二、原審第十回公判調書中被告人久米、同仙北の各供述記載
三、当審における証人小熊豊、同久米仲に対する各尋問調書
を綜合考量すれば被告人仙北、同久米間の前記各物品の授受はいずれも、右両名が同じ秋田県の出身者であることから親睦を重ね、その結果なされた純然たる社交的儀礼に属するものであることが十分認定せられるので、これを目して、原判示の如く贈賄又は収賄罪を構成するものとはいい得ない。従つて原判決にはこの点につき事実誤認の違法があるものというべく、その誤認が原判決に影響を及ぼすことは明白である。論旨はいずれも理由がある。
(中略)
被告人仙北、同久米に対する本件各公訴事実(但し同久米については、昭和二十六年八月八日附訴因変更申請書に基き訴因の変更がなされた)は、
「第一、被告人仙北は昭和二十三年七月上旬北海道増毛郡増毛町大字暑寒沢四百三十番地の住居地に許可を受けないで総坪数七十三坪の住宅を新築した廉で其の頃増毛町警察署員に臨時建築制限令違反として検挙されたので増毛署長たる被告人久米に対し右違反事件の寛大な処分方を懇願し右請託の趣旨を以て
一、同町永寿町警察署長公宅なる被告人久米の居宅に至りその妻仲に対し
(イ) 同年八月十五日頃リンゴ二貫(時価二百四十円相当)
(ロ) 同年九月上旬リンゴ二貫(時価右と同じ)を供与し
二、同年九月中旬被告人仙北の前記居宅において同久米に対しリンゴ二貫(時価右に同じ)を供与し
三、同年十月四日頃右同所において前記住宅の落成式を挙行した際同久米をも招待し酒食及土産の餅(時価六百三十円相当)を供与し
以てそれぞれ被告人久米の司法警察職員としての職務に関し贈賄し、
第二、被告人久米は増毛町警察署長警視であつて司法警察の職務を自ら行い且つ同職務を行う部下署員を指揮監督するものであるが右第一冒頭掲記の事件につき被告人仙北から便宜の取扱を受けられたい趣旨で供与されるものであることを知りながら
一、右第一の二記載の如くリンゴ二貫の供与を受け
二、同第一の三記載の如く酒食、餅の供与を受け
以てそれぞれ前記職務に関し収賄したものである。
というにある。
そこで審理の上考察するに、
前述した被告人仙北並びに同久米の検察官に対する各供述調書に拠れば、右両名間に右公訴事実の如き物品の授受が行われたことを認めることができるが、右各供述調書に加うるに前記の三個の証拠を綜合考量すれば、右授受は専ら社交的儀礼に属するものと認定するのが相当と解せられるので、被告人両名の右行為は贈賄罪又は収賄罪を構成するものとはいえない。