大判例

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札幌高等裁判所 昭和27年(う)575号・昭27年(う)578号・昭27年(う)576号・昭27年(う)577号 判決

刑事訴訟法第二百九十一条第二項によると、裁判長はいわゆる被告人の権利保護のための告知をしたうえ、被告人及び弁護人に対し被告事件につき陳述する機会を与えなければならない旨規定しているが、右機会を与えるのは主として被告人の利益のためその被告人に陳述の機会を与えるのであつて、証拠調に入る前に被告事件につき他の者の陳述を聞くことは、訴訟手続に違反するものであつて、本件につき原審第四回公判調書によると、原裁判所昭和二十七年(わ)第四八号事件の昭和二十七年四月二十五日付起訴状の公訴事実第一の十三(原判決判示事実第十五)は被告人金尚浩に対する公訴事実であるがこれにつき、被告人劉漢弼に陳述させていることが認められるのであつて、その訴訟手続が法令に違反することは所論のとおりである。

しかし、昭和二十七年三月二十九日付起訴状の被告人劉漢弼に対する公訴事実と右同年四月二十五日付起訴状の公訴事実第一の十三とは同一事実であるから、被告人劉漢弼又は同金尚浩は右公訴事実のいずれかの一方の事実を認めると当然他方の事実を認めることになる関係にあるのである。

ところが昭和二十七年三月二十九日付起訴状の公訴事実(原判決判示事実第一)には「被告人ユーハンピリは外二名と共謀の上」と記載あり、昭和二十七年四月二十五日付起訴状の公訴事実第一の十三(原判決判示事実第十五)には「被告人金尚浩はユーハンピリ及び他の一名と共謀の上」と記載あり、従つて被告人劉漢弼が前者の事実を認めたのみでは共犯者の氏名は判らないが、後者の公訴事実を認めると被告人金尚浩と同劉漢弼外一名との共謀を認めたことになるのである。原審第四回公判調書によると被告人劉漢弼は被告事件についての陳述の際右後者の事実を認めているのであつて、原判決はその判示第十五の事実を認定するに当り、証拠の標目に単に「被告人劉漢弼の当公廷における供述」としているのであるから、原判決は被告人劉漢弼と同金尚浩との共謀の事実をも被告人劉漢弼の証拠調前の被告事件の陳述中の昭和二十七年四月二十五日付起訴状の公訴事実第一の十三に関する陳述部分も証拠としているものと認められる。これを証拠とした原判決には此の点においても訴訟手続に法令の違反があるものといわなければならない。

しかし、前記違法の部分を除いた原判決挙示の各証拠を綜合すると原判決判示第十五の事実を十分認められるので、前記瑕疵は判決に影響を及ぼさないものであるから原判決破棄の理由とはならない。論旨は採用できない。

(後略)

(註。本件は事実誤認の理由で破棄)

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