札幌高等裁判所 昭和27年(う)663号 判決
被告人 ○藤○男
辨護人の控訴趣意第一点「不当に公訴受理」について。
本件被告人は原審第一回公判当時少年法上の少年であつて旭川家庭裁判所から罪名強姦罪刑法第一七七条の事件として検察官に送致したものであり、右原審第一回公判期日において検察官が訴因中「強いて同女を姦淫したものであり」とあるを「強いて同女を姦淫し、その際同女に処女膜裂傷の傷害を与えたものである」と罰条「刑法第一七七条」とあるを「刑法第一八一条」とそれぞれ変更し、原裁判所はこれを許可したことは所論のとおりであるが、少年法第二〇条により家庭裁判所が事件を検察官に送致するのは罪質及び情状に照し少年に対し保護処分を相当とせず刑事処分を相当と認めるからであつて、送致を受けた検察官は送致決定内容に拘束されるものではないと解するので、強姦罪罰条刑法第一七七条として起訴し被告人が少年時である原審第一公判期日において、これを前記のとおり訴因を強姦致傷に罰条を刑法第一八一条に変更するも公訴事実の同一性を害するものでもなく又不法に公訴を受理した違法はないものである。論旨は理由がない。
(中略)
同第二点(審判の請求を受けた事件について判決せず、又は、審判の請求を受けない事件について判決した)について。
論旨は強姦罪と強姦致傷とは公訴事実の同一性を害するもので訴因の変更は許されないものであるというにあるが訴因の同一性は公訴の基本的事実関係即ち重要な事実関係が同一であれば公訴事実の同一性を害しないものであると解すべきところ、本件の強姦と強姦致傷との間には強姦の事実は同一であつて、公訴の基本的事実関係は同一であるから公訴事実の同一性を害しないものであるから、原審で検察官からの訴因の変更を許可したのは相当であつて、所論のような違法はなく又訴訟手続にも違法の点はない、論旨は理由がない。
(後略)