大判例

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札幌高等裁判所 昭和27年(う)84号 判決

先ず職権を以て調査すると、起訴状に記載せられた本件公訴事実は、被告人の(一)額面二十万円振出人佐々木譲の約束手形一通の偽造、(二)同行使、(三)右約束手形を行使したことによつて大岡新太郎を欺罔して右同額の金員の支払を免れ不法に利益を得たという事実である。ところが、検察官は原審第五回公判期日で訴因罰条の変更請求書に基き本件訴因を右約束手形の偽造、同行使の事実と、被告人が右大岡のため保管中の澱粉を二回に亙り売却横領したという事実に変更する旨を述べ、原裁判所はこれを許可し、右変更された訴因に基いて審理判断しているのであるが、右訴因罰条の変更請求書に記載せられた各横領の事実は起訴状記載の公訴事実中に包含せられているものとは到底解することができない。尤も起訴状冒頭には「被告人は大岡新太郎から佐々木譲に馬鈴薯末粉澱粉百袋(一袋十二貫入)を一袋三千円の割にて売渡す仲介したるが現物引渡前佐々木譲より解約せられたる事実を秘匿し自己が右澱粉を受取りこれを他に売却したるに拘らず云々」と記載せられているが、これは被告人が右約束手形を偽造するに至つた動機につき事情として記載せられたものであつて、澱粉の売却行為そのものを罪となるべき事実として起訴したものでないことはその記載に徴して明らかなことである。されば、原裁判所が右横領の点について訴因罰条の変更を許し、これに基いて審理判断したのは刑事訴訟法第三百十二条第一項の規定に違反するばかりでなく、審判の請求を受けない事件について判決をした違法ありといわざるを得ない。

(後略)

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