札幌高等裁判所 昭和28年(う)149号・昭28年(う)150号 判決
原判決が「被告人等が村角栄一に交付した金一万円は刑法第十九条に従い没收すべきところ、これをなすことができないので同条の二により同額の一万円を被告人両名に対して追徴する」と判示して被告人両名に対し金壱万円を追徴を言渡していることは所論のとおりである。
本件は被告人両名が共謀の上原判示事実のように大西宗栄外六名に対し選挙運動の費用として最高限合計十七万円の金銭交付の約束及び現金一万円の交付をし以て選挙運動の支出をしたもので、公職選挙法第二百四十六条第四号選挙運動に関する支出規正違反の罪に該当するものであつて、同法によつて没收する途のないことは当然のことであるが、右現金一万円が被告人両名以外の者に属しないときは刑法第十九条に従つて没收することができ、そして同条第一項第三号及び第四号に記載したる物の全部又は一部を没收することができないときは、同法第十九条の二により追徴することができるものといわなければならない。
原判文は右金一万円が刑法第十九条第一項の何号にあたるか明示していないので明かでないが、右は選挙運動に関する支出の規正違反罪の組成物件であることは疑をいれないところであつて、同法第十九条第一項第三号及び第四号に該当しないことが明かである。しかるに原判決が同法第十九条の二により金壱万円の追徴を言渡したのは法令の適用を誤つたもので、この誤は判決に影響を及ぼすことが明かであるから原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。