大判例

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札幌高等裁判所 昭和28年(う)424号・昭28年(う)423号 判決

所論の要旨は、被告人藤井善友が被告人藤井清三に本件麻薬を交付したのは、同被告人の診療患者に治療の目的で麻薬を施用させるためである。元来被告人藤井善友は被告人藤井清三の兼務麻薬取扱者であり、被告人藤井清三は現在その資格を停止されているとはいえ、もともと麻薬施用の経験深い内科医であり、従つて被告人藤井善友が被告人藤井清三に対する麻薬施用上の監督は看護婦等に対する監督とは著しくその趣を異にし、単に同被告人の施用申入に従つて麻薬を交付し、またその結果の報告を受ければ足りると解するから、前記のごとく麻薬施用のため被告人藤井清三に麻薬を交付したことを以て、ただちに原判決のごとく麻薬の「譲り渡し」或は「譲り受け」となすはあたらない。畢竟原判決は事実誤認の違法あるものであるというのであるが、麻薬取締法(昭和二十三年法律第百二十三号)において麻薬施用者が他人に対し治療の目的で麻薬を施用するためには、施用者自身が患者を診断し治療の目的に応じ自ら麻薬を施用するか、またはその指示の下に他人をして施用せしめることを要し、仮令その交付が治療の目的のためであるとしても、自身患者を診断しないで、他人の診断にまかせこれに麻薬を交付するがごときは業務の目的外に出るものというべく、たまたまその他人が麻薬施用の経験を有する医師であつてもその理は異ならない。しかして原判決挙示の証拠によれば、被告人藤井清三は内科医であつて麻薬施用者の免許を受けたが、故あつて免許を停止されたので、同被告人の実弟であつて医師並に麻薬施用者の免許を有する被告人善友は清三の内科診療所における麻薬施用者を兼務する旨の届出をしたが、自身の業務に追われている被告人藤井清三の内科医院まで兼務して麻薬を施用することがむつかしく、他方被告人藤井清三もその都度被告人藤井善友に施用を求めることが面倒なため、被告人藤井清三がその診断に基き何時でも患者に対し麻薬を施用することができるよう被告人藤井善友は被告人藤井清三に原判示のごとく麻薬を引渡し被告人藤井清三はその引渡を受けたことが明らかであるから、前叙の理由により被告人藤井善友のなしたる麻薬の引渡は麻薬施用者としての業務目的外の行為であつて、法律上許されないものといわねばならぬ。しからば被告人藤井善友の所為が麻薬取締法第三条第二項に、同藤井清三の所為が右第三条第一項に違反すること勿論であつて、論旨は理由がない。

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