大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和28年(う)578号 判決

職権により調査すると、被告人に対する昭和二十八年七月二十二日附起訴状の公訴事実によると被告人は常習累犯窃盗として起訴されたものであるが、更に被告人に対する同年七月二十三日附起訴状(追起訴)の公訴事実によるとその第一は同じく常習累犯窃盗として起訴されたものであつて、その犯行時は右昭和二十八年七月二十二日附起訴状の公訴事実の犯行時より前であることが明かである。そして原審は以上を併合審理をして判決をしていることはこれまた記録上明白である。

元来盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条の常習累犯窃盗の罪は反覆累行して同条所定の条件による窃盗をなす習癖といいその行為が数回ある場合でも単純一罪を構成するものであるからその同一性を害しない限りその公訴の効力は事件即ち公訴事実の全体に及びその公訴の効力の及ぶ範囲内において裁判所は検察官の請求があるときは起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならないし、また裁判所は審理の経過に鑑み適当と認めるときは訴因又は罰条を追加又は変更を命ずることができるのであつて、その効力の及ぶ範囲内の行為と認められる限りその行為についてはたとえ訴因を異にしても再度の公訴提起は許されないわけである。

ところで本件は前段説示のとおり原審は昭和二十八年七月二十二日附起訴状の常習累犯窃盗事件と同月二十三日附起訴状の常習累犯窃盗事件を併合審理して判決しているのであるが追起訴による公訴事実第一は前の常習累犯窃盗事件の公訴範囲内に属しこれに包含される単一なものであり、公訴事実も同一性を具備するものであるから、同一事件といわねばならない。それゆえ検察官において本件追起訴の公訴事実第一の窃盗と審理の対象とするを欲するならば敍上のとおり訴因追加の手続を採るべきであつて、新に公訴の提起は許されないのである。従つて本件追起訴の公訴事実第一の常習累犯窃盗事件は同一事件につき同一裁判所に二重に公訴の提起があつたものといわねばならないから、原審としては後になされた昭和二十八年七月二十三日附起訴状の公訴事実第一の常習累犯窃盗事件の公訴は確定判決を経たものでないから刑事訴訟法第三百三十八条第三号により判決で公訴を棄却し、審理の経過に鑑み適当と認めるときは検察官に対し訴因の追加を命じて審理すべきである。しかるに原審はかゝる措置を採らずこれを併合審理して判決をしたのは不法に公訴を受理した違法があるので原判決は破棄すべきである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!