札幌高等裁判所 昭和29年(う)169号 判決
原判決及び本件記録を調査すると(中略)……第一の詐欺の罪については懲役六月に、第二の窃盗の罪については懲役二年に処し、未決勾留日数中二十日を右後者の罪の刑に算入する旨の言渡しをしたこと、被告人に対する勾留状は右詐欺被告事件について発付されたもので右窃盗罪についてなされたものでないことが明かである。そこで考えてみるのに本来勾留状の効力は、その勾留状の発せられた公訴事実のみに限つて認め得べく同被告人に対する他の公訴事実についてはその効力が及ばないと解すべきものであつて、このことは国民の抑留、拘禁について特段の立法的考慮をなしている我が憲法下の法制においては容易に肯定されるのである。斯く解すると刑法第二十一条は本刑に算入し得る未決勾留日数は、その本刑が科せられる当該公訴事実について発せられた勾留状の執行による未決勾留の日数であることを要することを定めたと謂う外はない。原判決が主文において第二の窃盗罪の懲役刑に算入した二十日間の未決勾留日数は、第一の詐欺罪の公訴事実について発せられた留状の執行によつて生じたものであることは前記のとおりであるから、この点で原判決には判決に影響を及ぼす法令適用の誤があり且つ理由にくいちがいがあるものである。而して弁護人の控訴趣意は右のような法令適用の誤り乃至理由のくいちがいによつて行われた違法の未決勾留に算入を改めて判示第一の詐欺罪の本刑について適法に算入されるべきものであると主張するのであるから、この点で被告人の為に不利益を主張するものでないことは言を俟たない。結局原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。