大判例

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札幌高等裁判所 昭和29年(う)529号 判決

所論の要旨は、原判決が被告人の犯罪事実たる判示第二の事実の証拠として挙示する(1)被告人村上文子の司法警察員に対する供述調書及び検察官に対する第一、二回供述調書(2)原審相被告人深見定雄の司法警察員に対する昭和二十九年四月十四日、同月十五日附各供述調書並びに検察官に対する同月二十七日同月二十八日附各供述調書によつては本件のポンが果して覚せい剤であるか否かが判明しないから、原判決は理由不備か、或は理由にくいちがいがある、と云うのである。なるほど、右の各供述調書には被告人が原審相被告人深見定雄に譲渡した薬剤の品質を科学的に明らかにするものは存しない。しかし右の各供述調書には「ヒロポン」或は「覚せい剤」を譲渡し或は譲受けた旨の記載があり、普通にヒロポンと称するものはフエニルメチルアミノプロパンを含有する製剤であつて覚せい剤取締法第二条第一項に云う覚せい剤であることは公知の事実であるから、他に反証のない限り、右の各供述調書によつて、本件の薬剤が覚せい剤取締法第二条第一項第一号に該当する薬剤なりと認めることは採証の法則に反するものとは云えない。而して記録を調査すると反証はなく、却つて原審取調の菅原清吉の検察官に対する第一回供述調書司法巡査作成の領置調書謄本鑑定人穂苅保夫作成の鑑定書謄本と右原判決拳示の証拠を綜合すると原判示第二の被告人が原審相被告人深見定雄に譲渡した覚せい剤はフエニルメチルアミノプロパンを含有する覚せい剤であることが明白である。然らば原判決が判示第二の事実の証拠として前記の供述調書のみを挙示したからと云つて理由不備又は理由にくいちがいの違法があるものとすることはできない。

(裁判長裁判官 熊谷直之助 裁判官 水島亀松 裁判官 松永信和)

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