札幌高等裁判所 昭和29年(く)7号 決定
附添人弁護士泉功の抗告理由第一点は、原決定が少年法第七条第一項所定の少年調査官の報告がないにかかわらず、原判示第一の1乃至4の事実につき審判をしたのは、違法であるのみならず右事実はいずれも刑法各本条の犯罪を構成することが明らかであるから、同法第三条第一項第三号の事由に該当せず、然るに原決定が右所為につき同法条を適用したのは、決定に影響を及ぼす法令の違反があるものであるというのであるが、少年保護事件の目的は非行のある少年の性格の矯正及び環境の調整をはかることによつて、その少年の健全な育成を期することにあり、従つて既に保護事件の係属している少年につき、調査或は審判の結果他に犯罪事実或は虞犯事実のあることが判明し、しかもそれについて保護処分に付する必要があると認められるときは、該事実につきあらたに立件手続をするまでもなく、既に係属せる保護事件にあわせ、審判をなし得るものと解するのが相当である。しかして原判示第一の1乃至4の事実は、所論のとおり司法警察員から虞犯事実として通告されているところではないが、右事実はさきに係属せる少年に対する虞犯保護事件の審判の際明らかになつた事実であるから、上述の理由にもとづき原裁判所が該事実につき審判をしたのは正当である。尤も原決定が右各事実が刑法各本条の犯罪に該当するにかかわらず、虞犯事実であるとし、少年法第三条第一項第三号を適用したのは、法令の適用に誤りあるものといわねばならないが、右誤りはなんら決定に影響を及ぼすものではないから、これを以て原決定を取消す理由となすに足らない。論旨は理由がない。
(裁判長判事 熊谷直之助 判事 水島亀松 判事 笠井寅雄)