札幌高等裁判所 昭和30年(ラ)5号 決定 1955年6月17日
抗告人 坪田政信
相手方 札幌狸小跡路店街商業協同組合
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告の趣旨ならびに理由は、別紙記載のとおりである。
本件記録によると、抗告人と相手方間の札幌地方裁判所昭和二八年(ヨ)第一四八号動産仮処分事件につき、相手方は、担保として、昭和二十八年六月二十九日札幌法務局に金十万円(供託番号昭和二八年金第三七〇号)を供託したこと、右仮処分事件の本案訴訟において相手方は勝訴の判決を受け、その判決は同三十年二月九日当時既に確定しその訴訟の完結を見たので、相手方は、同年二月十日原裁判所に対し、右担保につき、抗告人に対する権利行使の催告を求めると同時にその取消の申立をなしたこと、原裁判所は、右申立により、同年二月十一日附催告書を以て抗告人に対し、催告書送達の日から七日内に担保権利者としての権利を行使し、その旨を同裁判所に申出ることを催告したところ、該催告書は同年二月十二日抗告人に送達されたが、抗告人は右指定期日内にその行使をしなかつたので担保取消につき、抗告人の同意ありたるものとみなされたものとして、原裁判所は、同年二月二十四日前記担保を民事訴訟法第百十五条第三項により取消す旨の決定をなし、該決定は、同年二月二十六日相手方に、同年同月二十八日抗告人にそれぞれ送達されたこと、抗告人は、同日担保権の行使として、抗告人が原告となり相手方を被告として札幌簡易裁判所に対し損害賠償請求の訴を提起し、且つ、これを証明して本件抗告の申立をなしたことが認められる。
以上の事実によると、原決定がなされた当時においてはその決定にはなんら違法のかどは存しないのであるが、該決定確定以前に、抗告人において前叙の如く権利行使を証明し本件抗告に及んだ以上、原決定は、結局失当に帰したものと解するのが相当である。しかしながら相手方提出の上申書およびその添付書面によると、前示損害賠償請求訴訟は抗告人の敗訴となり、その判決は、昭和三十年五月二十三日確定したことが認められるから、前記担保の事由やみたるものというべきであつて、この理由から前記担保はこれを取消すべきである。
されば、原決定は、その理由からは不当というべきであるが、前示理由からして結局正当であるので、本件抗告を棄却することゝし、民事訴訟法第四百十四条第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用し、主文のとおり決定する。
(裁判官 猪股薫 臼居直道 安久津武人)
抗告の趣旨
原決定はこれを取消す。
との決定を求めます。
抗告の理由
一、抗告人は相手方と昭和二十七年十月中狸小路鈴蘭燈のアーチの上部に広告放送用のスピーカを取付けることを約して狸小路一丁目から八丁目迄でスピーカを二十八個を取付けた。
二、処がこれが収去方の訴訟を相手方に提起せられるに当り相手方は一金十万円の保証を立てて前示物件の仮処分をしたのである。今回仮処分解除せられたるが仮処分のスピーカ十三個(時価金九万一千円)紛失していたのである。
三、故に抗告人は相手方に対し損害賠償の請求訴訟を札幌簡易裁判所に対し提起し担保に対し権利を行使したいですから、ここに抗告をなす次第である。