大判例

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札幌高等裁判所 昭和33年(う)133号 判決

弁護人の控訴趣意第一点(審判の請求を受けない事件について判決をした違法または訴訟手続の法令違反)について原判決が刑法第五四条第一項前段にいう科刑上の一罪として起訴された本件無免許運転、酩酊運転、最高速度の制限超過運転の各無謀操縦と重過失致死の各所為を何等訴因変更の手続を経ることもなく同法第四五条前段の併合罪と認定していることは、本件記録(原審第三回公判調書)ならびに原判文に徴して所論のとおりである。所論は、これをもつて原判決には審判の請求を受けない事件について判決をなした違法があるか、少くとも訴訟手続に法令違反があるというのであるけれども、原判決は、本件起訴にかかるところと同一内容の事実をその範囲内において、すなわち、原判示第一において右各無謀操縦の、同第二において右重過失致死の事実を認定していることもまた明らかであるから、かような場合には、一罪としての起訴を数罪(併合罪)と認定してもそれは単に起訴にかかる範囲内の一定の行為事実についての構成要件的評価が検察官のそれと相違するだけであつて、これをもつて審判の請求を受けない事件について判決したことになるものと解すべきではなく、また、かような場合には、罪数的評価に変更をきたしても、そのため被告人の防禦に実質的不利益を生ずる虞があるものとは認められないので、必ずしも訴因の変更を要しないものと解するを相当とする。したがつて、以上と見解を異にしての所論は採用の余地なく、原判決には何等所論のような違法はないから論旨は理由がない。

同第二点(法令の解釈適用の誤)について

所論は、原判示第一の各無謀操縦は一個の行為であつて数個の罪名に触れる場合に該当し、これと原判示第二の重過失致死との間には手段結果の関係があるのにもかかわらず、右各所為がそれぞれ別罪を構成するものとみて、その全部に対し、刑法第四五条前段その他の併合罪の規定を適用処断した原判決には法令の解釈適用に誤があるというのである。

そこで按ずるに、原判決認定の原判示第一の事実によれば、被告人は、後藤駒之助運転の原判示自動車に後藤慶助と同乗し、原判示同人方から国鉄白老駅に赴く途中、法令に定められた正規の運転資格をもたず、かつ、当時飲酒酩酊していて正常な運転ができない虞があつたのにもかかわらず、しいて前記後藤駒之助にかわつて自ら右自動車を運転しはじめ、原判示国道に出てからは、同国道は当時最高制限時速三五粁であるのにもかかわらずこれを超えた時速約六〇粁で進行し、原判示箇所まで合計二、六粁の距離を運転して各無謀操縦をしたというのであつて、原審が右事実を併合罪として処断していることは所論のとおりである。ところで右無免許運転といい、酩酊運転といい、また時速制限の超過運転といい、具体的にはその内容を異にするとはいえ、その操縦という行為の性質上時間的にも場所的にも同一機会になされたものであることは挙示の証拠からもうかがわれるのであり、かついずれも道路交通取締法第七条第一項によつて道路における危険防止およびその他の交通の安全を図る目的から禁止されたものにほかならない無謀操縦という同種の動作に帰するのであるから、これ等は被告人の単一ないし継続した犯意の発現たる一連の動作であると認めるのが相当であつて、原判決挙示の証拠によるもそれが別個独立の犯意に出たものと認むべき特段の事由を発見することはできないのである。してみると、かような事実関係においては、右各無謀操縦を包括して一罪と認定するのが相当であつて、所論のように一個の行為にして数個の罪名に触れる場合に該当するものと解すべきでないのはもとより、独立した三個の犯罪と認定すべきではない。それゆえ、これと別異の観点から右各無謀操縦を独立した三個の犯罪行為とし、これに対し刑法第四五条前段その他併合罪の規定を適用処断した原判決は判決に影響をおよぼすことが明らかな法令の適用の誤をしたものといわなければならない。そして原判決は右各無謀操縦の所為とその余の所為とを併合罪として科刑しているのであるから、全部破棄を免れない。所論も畢竟原判決の右違法を非難するものであるから、この点に関する論旨は理由がある。

(裁判長裁判官 豊川博雅 裁判官 羽生田利朝 裁判官 中村義正)

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