大判例

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札幌高等裁判所 昭和33年(う)77号 判決

原判決によれば、原審は所論摘示の認定事実について刑法第二五条第二項、第二五条ノ二第一項後段を適用し、被告人に対し「懲役一〇月に処する、ただし本裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する、右猶予の期間中保護観察に付する」旨の言渡をしたことは明白である。ところが、検察官が証拠として当裁判所に提出した前科調書および各電話聴取書によつて、被告人は昭和三二年七月一七日釧路地方裁判所帯広支部において恐喝罪により懲役一年に処せられ、三年間右刑の執行猶予と同時にその期間中保護観察に付する旨の言渡を受け、同年八月一日確定し原判決言渡当時はもとより現にその執行猶予ならびに保護観察の期間中であることが明らかであるから、右保護観察期間中に本件暴行および傷害の罪を犯したこととなる被告人に対しては、刑の執行を猶予しうべきものでないこともまた刑法第二五条第二項但書によつて明らかなところであるのにもかかわらず、原判決が前記法条を適用し、被告人に対し再度刑の執行を猶予すべき旨言渡したのは、結局審理を尽さなかつた結果法令の適用を誤つたものというほかはない。原審がかような誤をしたのは原審において検察官から取調請求のあつた検察事務官作成の前科調書(一般に高度の信憑力をもつものと観られている)の記載が粗略で右保護観察に関する事項の記載を遺脱したものであつたことがその一原因であることは原審における審理の経過に徴しこれを看取するに難くないところであつて原審検察官の失態はこれを蔽うべくもないところではあるがそれだからといつて、原審の右措置を違法とする論結に消長をきたすべき理由はない、答弁書中これと異なる所論は採用し得ない。さらにまた答弁書中刑法第二五条第二項但書は憲法第一四条に違反するとの所論は、要するに、保護観察の処分を受けていることは憲法第一四条に規定する社会的身分を具有することにほかならないから、その保護観察期間中の犯人について再度の執行猶予をなし得ないとするのは、憲法の平等の原則に反するというのであるけれども、しかし、憲法第一四条にいう社会的身分とは、帰化人の子孫であるとかいわゆる部落出身者であるというがごとき生来的に決定ずけられた社会的な地位または身分を指すものであつて、ひろく人が社会において占めている地位にまでこれをおよぼしいわゆる前科者であるとか賭博常習者であるというがごときものまでこれを含むと解すべきでなく、したがつて刑罰制度の目的に応じて各犯罪各犯人毎に妥当な処置を講ずべき要請にもとずき保護観察期間中の犯人については再度の執行猶予をなし得ないこととし、初度目の執行猶予の場合に比しその処遇の条件を加重したからといつてこれをもつて憲法第十四条にいう社会的身分により差別的に処遇する違憲立法であると解すべきものでないこと、すでに最高裁判所の判判(昭和二四年新(れ)第八八号昭和二五年一月二四日第三小法廷判決参照)の趣旨とするところであるから、答弁書中のこの点の所論も採用し得ない。

(裁判長裁判官 豊川博雅 裁判官 羽生田利朝 裁判官 中村義正)

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