札幌高等裁判所 昭和36年(ラ)32号 決定 1962年5月14日
抗告人 松田国雄
右代理人弁護士 村部芳太郎
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
事実及び理由
本件抗告の趣旨並びに理由は、別紙記載のとおりである。
本件公正証書をみると、第一条本文には債務者である抗告人が債権者たる株式会社北海物産商会に対し、昭和三一年七月三一日当時の取引残高金四百九十五万千二百十九円の債務があることを承認し、第二条中には、右債務を昭和三二年八月より同三五年七月まで毎月末日金一万円ずつ、同年八月より同三九年四月まで毎月末日金十万円ずつ、同年五月末日残金全部を支払う旨の記載があるのに、第一条但書において、「後日精算の結果金額に相違の有りたる場合は其の完済に至る迄は第二条の方法によりその支払をなす」旨の記載があることは、抗告人主張のとおりである。抗告人は、右但書の記載は第一条本文記載の金額が後日精算の結果により変更さるべきことを予定したものであるから、本件公正証書記載の債務は、具体的に一定の金額の支払を目的とするものではない旨主張するが、しかし、証書の記載全体の趣意は、むしろ、第一条本文に確認した債務の金額が精算の結果と相違した点にしても、同条本文に確認した債務の執行力には影響なく、その差額を別段の方法によつて決済することを約した点にあるものと解されるから右但書の記載があつても、本件公正証書記載の債務が一定の金額の支払を目的とするものであるというを妨げない。右説示と異る見地に立つ抗告人の主張は、とうていこれを採用するわけにいかない。
よつて、民事訴訟法第四一四条、第三八四条、第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 臼居直道 裁判官 安久津武人 藤野博雄)
<以下省略>