札幌高等裁判所 昭和37年(ネ)49号 判決 1962年12月18日
控訴人 吉田竹治
被控訴人 久慈鉄也 外一名
主文
原判決を取消す。
本件を釧路地方裁判所帯広支部に差戻す。
事実
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人らは連帯して控訴人に対し損害賠償金一〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和二七年一月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払い尚原判決末尾添付の別紙に記載の文案の謝罪広告を日刊の北海タイムス全道版に普通の一段組みで連続三日間掲載せよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。
被控訴人らは適式の呼出を受けたが本件口頭弁論期日に出頭しない。
理由
控訴人が原裁判所に提出した訴状によれば控訴人が訴外加納栄等から買取つた建具類を運搬途中被控訴人両名が不法に妨害したので謝罪を求めたが応じないので、被控訴人両名に対し連帯して損害賠償金一〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和二七年一月一七日以降支払ずみに至るまで年五分の割合による利息金の支払並びに北海タイムス新聞に三日間連続引続き九行一一〇数文字からなる原判決記載内容の謝罪広告を掲載すべきことを請求するというのであつて、右訴状には訴訟物の価額金一〇〇、〇〇〇円と表示して金一、〇〇〇円の印紙が貼用されていたところ、原審は昭和三七年二月九日決定を以て本決定送達の日から七日以内に(一)謝罪広告について請求の趣旨並びに請求原因が不特定であるから、掲載地域の範囲、段組、活字の大きさ等その規模の詳細及び掲載料金(二)謝罪広告についての印紙が全然貼付されていないのでこの請求に関する印紙を追貼することの欠缺を補正すべきことを命じ右決定正本が翌一〇日控訴人に送達されたのに控訴人は補正の措置に出なかつたので、原審は口頭弁論を経ないで、控訴人の本訴請求は不適法な訴でその欠缺が補正することができない場合に該当することを理由として原告の訴全部を却下する旨の判決を言渡したことが記録上明らかである。しかし、控訴人の被控訴人両名に対する右謝罪広告の申立は特にその掲載地域、活字、紙面を明示していないけれども北海タイムス新聞の全道版に普通に用いられる活字、紙面を使用してなすべき趣旨を包含するものと解せられない訳ではないから、必ずしも請求の趣旨不明確の瑕疵あるものとは断じ難く、職権で調査すれば右広告掲載料金を知ることができ、右料金に相応する訴額につき追貼すべき印紙額を算出明示して原審が控訴人に対し補正命令を発したならば、控訴人において右補正命令による補正をしたであろうことは当審において控訴人が控訴状に貼用すべき右謝罪広告の請求部分に対応する印紙額を追貼し且つ前記新聞社の広告料金表を資料として当裁判所に提出していることにかんがみるも疑がない。本来訴訟費用としての印紙の追貼はその性質上補正を不能とする訴訟要件の欠缺事由とは解されないから、控訴人が自から主張するところから推して受訴裁判所又は裁判長の補正を命ずる正当印紙額の貼用を拒否するものと認められる場合は格別、控訴人にかような主観的意思のあることを推認することのできない本件において原審が受訴裁判所として追貼すべき印紙額を表示しないで発した前記補正決定に対し控訴人が右決定所定の補正期間を徒過したからといつて、直ちに欠缺を補正することができないものと判断し請求併合の場合における訴額の合算と増貼印紙の算定との牽連性を理由として控訴人の本件金銭賠償請求をも謝罪広告請求の訴とともに不適法として却下した原判決は不相当といわなければならない。
従つて、本件控訴は結局理由あることに帰し、民事訴訟法第三八六条第三八八条に則り主文のとおり判決する。
(裁判官 南新一 輪湖公寛 藤野博雄)