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札幌高等裁判所 昭和37年(ラ)39号 決定 1962年7月17日

抗告人 佐藤末郎(仮名)

主文

本件抗告を却下する。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

しかし、家事調停手続の進行中において調停委員会が家事審判規則第一三三条に則り調停のために必要と認める暫定的仮処分決定を発するもこれに対して当事者は不服申立をすることは許されないものと解するを相当とする。一件記録によれば申立人村川ミワ子が抗告人外七名を相手方として原裁判所に被相続人佐藤イト死亡による遺産分割調停を申立て家事審判官安藤覚、調停委員黒田晏外一名で構成された調停委員会において調停手続が進められて来たことが認められるけれども右調停委員会に代つて家事審判官が右調停手続につき右保全処分の決定をした場合であつても右処分の性質上当事者はこれに対し抗告を申立てることができないものと解すべきであるから、抗告人の本件抗告は不適法として却下を免れない。

よつて、民事訴訟法第四一四条第三八三条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 南新一 裁判官 輪湖公寛 裁判官 藤野博雄)

別紙

抗告の理由

一、本調査に於て抗告人は相続人間に於て成立した遺産分割協議書記載条項に基づき、これ等協議の若干の修正を主張中であり、申立人は相続人全員に対しての均等分割を求めておるもので、結局該調停は整つておりません。

二、これ等不成立の原因と思われるのは、申立人等が遺産分割協議が相続人間に於て成立後、不服を申述べる原因等を調査するため該遺産物件は畑であるため、伊達町農業委員長黒田晏氏のところに参り、相談をしたものである処同氏は且亦裁判所の調停委員に指定されたので結局申立人はこの上もない便宜を計らわれる結果となつた。

三、それが故に申立人が黒田委員氏に抗告人等を無根して自己の利益のため一方的なる話をしたことが同委員の先入感となり要するに同委員は相続人全員を公平なる対照人にせず申立人を絶対的権利者である如き調停をなしたものであります。

四、そこで結果的に原裁判所はかかる決定をなされたものと抗告人は思考されるものでありますが、当の申立人村川ミワ子は第二に記載した如く均等分割を要望し飽く迄これを主張せる者に対し、物件面積八反三畝歩中約半分以上の約五反歩余の耕作を(占有含)認めたことは一体如何なる見解でなされた措置処分であるか抗告人は全たく不思議でならないものであります。

五、例えば仮りに申立人村川ミワ子が主張の均等分割の趣旨から見当しても当人には約九畝歩のみの権利者である、それがかかる決定をなされたことは正当なる処分とは考えられない。すると一体他の相続人八名は本調停成立に至る迄全員が申立人村川ミワ子に対して、その権利を何等の約束もせずに占有耕作権を認めよと原裁判所が決定されたものの、他の相続人に対する生活権の保障は原裁判所に於てなされるものか、これも出来ないとするなれば原裁判所がなされた決定は抗告人等相続人の権利に続する財産権の侵害でなかろうか。

六、従つて抗告人は原決定は納得出来ないのは勿論かかる不公平なる処置に対しては不服であります。

よつて原裁判所のなせる該決定は違法と信じられるものであるから直ちに回復されるよう、抗告の趣旨記載の如き御裁判を求むるため本抗告に及びます。

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