札幌高等裁判所 昭和37年(ラ)6号 決定 1962年5月23日
抗告人 北海道信用保証協会 代表者理事 田中時次郎
相手方 佐藤勝利
主文
本件訴状却下命令を取り消す。
本件を旭川地方裁判所に差し戻す。
理由
抗告人の抗告の趣旨及び理由は末尾記載のとおりである。
そこで判断するに、本件記録によれば、抗告人は旭川地方裁判所昭和三六年(ワ)第四四六号代位弁済金請求事件の原告として同裁判所から昭和三六年一二月九日被告佐藤勝利の住所を一〇日の期間内に補正することを命ぜられたが、同被告の転居先が不明のため期間内にこれが補正をすることができなかつたところ、同裁判所は昭和三七年一月一九日本件訴状を却下する旨の命令をなし、右命令は同年同月二九日抗告人に送達されたので、抗告人は同年二月三日即時抗告の申立をなした上、右訴状却下命令の確定前である同年四月二一日、被告の住所、居所その他送達をなすべき場所が知れないとの理由で公示送達の申立をなし、かつ不在証明書二通(内一通は旭川市長作成のもの)を提出したこと、右不在証明書によれば被告佐藤勝利は元旭川市二条通六丁目左七号に居住していたが現在は同所に居住せず、転居先も不明で、民事訴訟法第一七八条にいう「当事者の住所、居所其の他送達を為すべき場所が知れざる場合」にあたることが認められるのである。かように被告の住所を補正しないために訴状却下命令をうけた原告が該命令に対し適法な即時抗告をなした上、被告の住所、居所、その他送達をなすべき場所が知れないとの理由で公示送達の申立をなし、かつその証明がなされた場合には訴状の送達上の欠缺は補正されたものというべく、訴状却下命令は取り消ざるべきものといわなければならない。
よつて民事訴訟法第四一四条、第三八八条に従い主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 臼居直道 裁判官 安久津武人 裁判官 藤野博雄)
抗告の趣旨および理由
抗告の趣旨
原命令を取消す。
本件訴状を受理する。
右趣旨のご裁判を求めます。
抗告の理由
一、旭川地方裁判所原告抗告人被告相手方間の同庁昭和三六年(ワ)第四四六号代位弁済金請求事件について抗告人に対し一〇日間の期間を定めて訴状に相手方の正確な住所を補正するよう命令を発し同命令は昭和三六年一二月九日抗告人に到達したが抗告人に於て期間内にその補正が出来なかつたため昭和三七年一月一九日訴状却下命令が発せられた。
二、然しながら抗告人の調査によると相手方は昭和三四年一月頃まで旭川市二条通六丁目左七号に住所を有していたがその頃いずれかへ転居しその転居先が全く不明で民事訴訟法第一七八条第一項の住所、居所その他送達をなすべき場所が知れざる場合に該当することが明かであります。よつてかかる場合抗告人としては同庁の住所補正命令に対しこれに応ずることが不可能であつて抗告人はこれに代る公示送達の申立をなすの外方法がないのであります。
三、以上の理由により公示送達の要件を具備し且つ右方法をとらざるを得ない事情を看過し住所補正命令に応じないとの理由で本件訴状を却下した原命令は違法で取消しを免がれないものと思料致しますので抗告の趣旨記載の通り即時抗告の申立に及びます。