大判例

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札幌高等裁判所 昭和38年(ネ)134号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕控訴人は、更に当時町と現業所との間に境界の争いが存することの認識ある以上、少なくとも過失があると主張する。前段後半認定の事実は渡辺・菅原にその認識のあつたことを示すものであるし、前記桜井供述・高橋第二回証言によれば、桜井の伐採が昭和三二年一月一三日に開始されて後、同月三一日の臨時町議会が町有林伐採問題を議題として開かれた当時、船越は町会議員であつたこと、桜井は作業現場において平取町財産係である高橋から境界が喰い込んでいると異議を言われたことが認められるので、船越・桜井両名も、少なくとも伐採作業開始後その終了以前に、境界についての町の態度を認識するに至つたものといわなければならない。

案ずるに、他から買い受けた立木の所有権に関し第三者から異議を申し立てられているのにかかわらず、その所有権帰属の争いの結着を待たずに、これを伐採したとすれば、その際自己の所有権を確信していたとしても、後日第三者の主張が正当であると判明した場合には、少なくも過失の責を負うのが、一般論としては当然であろう。しかしながら、本件においては、桜井・菅原の伐採立木は船越・渡辺から譲り受けたのであり、その船越・渡辺は堤防敷地内産物採取につき知事の許可を得たものであること、冒頭第一節において詳細に説示したとおりであつて、伐採者が仮境界線の内側には町有立木がないと誤信したのは、この知事の許可という行政処分に伴つて生じたのであるから、前記のような一般私人間の取引の場合とは事情を異にする。もちろん、この許可は、町有地上の立木に対しては本来行政処分としての効力を発生する筈なく、後日確定境界線に訂正された範囲外の部分(本判決附図斜線部分)については許可は無効なのであるから、ここにいわゆる行政処分の公定力を云々することはできないが、国の機関が一応国有地の境界を指示して行政処分をなした場合には、後日その範囲が変更されたとしても、またその範囲につき第三者が争つていることの認識があつたとしても、当初の範囲指定が正しくなく第三者の主張が正しいことを推測させるような客観的事情がない限り、当初の指定を正当と信じることに過失ありとすることはできないと解すべきものであり、本件の場合、その当初指定の範囲(仮境界線)は堤防敷地として本来相当である法肩の線に一致していたのであつて、右のような客観的事情ありと見ることはできない。従つて、過失ありとの主張は採用しえない。(伊藤淳吉 臼居直道 倉田卓次)

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