札幌高等裁判所 昭和40年(く)33号 決定 1965年10月28日
少年 D・H(昭二二・七・二三生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告申立の理由は、附添人塩谷千冬提出の抗告申立書記載のとおりであつて、その内容は、D・Hに対する強姦致傷被告事件につき昭和四〇年八月二六日札幌家庭裁判所岩見沢支部がした決定には不服であるから抗告の申立をするというにある。
按ずるに、少年に対する保護処分に対する抗告申立の方式に関しては、少年審判規則第四三条第二項は、「抗告申立書には、抗告の趣意を簡潔に明示しなければならない。」と明規しているので、これに違背するにおいては不適法とされねばならないのであるが、右にいう抗告の趣意とは、少年法第三二条が保護処分決定に対する抗告の理由となし得るものとして限定的に規定する、(イ)決定に影響を及ぼす法令の違反、(ロ)重大なる事実の誤認、又は、(ハ)処分の著しい不当のうちのいずれを抗告の理由として主張する趣旨であるかを看取し得るか又は少くともこれを容易に推知し得る程度の具体的な事実の主張や意見の開陳を意味するものと解すべく、従つて、本件における如く、ただ漫然と抽象的に原決定に対し不服であるから抗告を申立てるというだけでは、抗告の趣意の明示を欠き、いまだ以つて抗告申立の方式に関する前記規定の定める要件を具備するものとなし難いので、本件抗告申立は不適法たるを免れない。尤も、本件については、附添人塩谷千冬から抗告趣意書と題する昭和四〇年一〇月二五日附書面が附属書類と共に当裁判所宛に提出され、同日受理されているが、右は原裁判所が原決定をした昭和四〇年八月二六日から起算して、少年法第三二条所定の抗告提起期間である二週間を徒過後に提出されたものであることが明白であるから、これをもつて前記抗告申立書の不適法たることを補正するものとは解されないから、結局本件抗告は前説示の通り、少年審判規則第四三条第二項に違背し、棄却を免れない。(昭和三四年八月三日最高裁判所第二小法廷決定参照。)
よつて、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条により、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 半谷恭一)