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札幌高等裁判所 昭和40年(く)42号 決定 1965年12月25日

少年 K・M(昭二三・一・二九生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、抗告申立人提出の抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は、一、一二月一〇日の本件審判の席上抗告のできることについて審判官から、何らの話がなかつたことは重大な法律違反である。二、少年は今迄に悪い事は何回かしたが、現在では充分反省しているから、父母の許での在宅保護処分の余地がないとは言えない。三、これ迄に少年は何回か八王子の家庭裁判所で審判を受け、また家庭も東京にあるので遠く札幌で処分を受け少年院に入ることになると面会や金銭面においても不便であると云うにある。

よつて本件少年保護事件記録および少年調査記録を精査すると、昭和四〇年一二月一〇日開かれた原審判期日の調書の末尾には、裁判官が少年を少年院に送致する旨の決定を告知したことのみ記載されており、少年審判規則第三五条第二項所定の、二週間以内に抗告の申立書を裁判所にさしだして抗告をすることができる旨を面前告知した事実について記載はないけれども、右は必要的記載事項ではないから、本件の場合右告知がなされなかつたものとは必ずしも断定し難いが、右審判期日には抗告申立人両名共保護者として出席して種々陳述し、右決定を面前告知された三日後である昭和四〇年一二月一三日付で原審裁判所に本件抗告申立書が提出されている本件においては、右審判手続の法令の違反があつたとしても、右保護処分決定に影響を及ぼすものとは謂えないから、右抗告はその理由がない。

次に前記記録によつて明らかである少年の生活史、殊にその非行歴および放浪性、性格及び行動傾向、生活態度、交友関係、家庭環境、保護者の保護能力の欠如等一切の事情を考察するときは、当裁判所も、少年の従来の生活態度を反省清算させるため、施設に収容し規律のある生活に服させることが必要と認めるので、原決定非行事実第五の行為地であり且少年の現在地である札幌家庭裁判所が、少年を中等少年院に送致したことをもつて、処分の著しい不当が存する、と主張する抗告理由二、および三は全くその理由がない。

よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に則り主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 半谷恭一)

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