札幌高等裁判所 昭和57年(ネ)56号 判決
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【判旨】
二そこで、被控訴人らの抗弁について判断する。
1 抗弁事実1ないし4の事実中、控訴人が、訴外会社にかかる後記認定の会社整理手続において、訴外会社の管理人作成の整理計画案に同意したこと及び右の整理計画に基づき、訴外会社に対して有する債権額の中一〇パーセントの弁済を受けたことは当事者間に争いがなく、また、右訴外会社にかかる会社整理手続の開始並びに爾後の経過等に関るその余の抗弁事実は、<証拠>により認められる(ただし、訴外会社の管理人提出の前示整理計画案につき、昭和五六年七月二一日札幌地方裁判所による実行命令がなされたとの事実については、控訴人において明らかに争わないから、これを自白したものと看做す。)。
2 右認定事実によれば、控訴人が整理会社である訴外会社の整理計画案に同意したことにより、昭和五六年六月二二日控訴人と訴外会社との間にいわゆる整理契約が成立したものと認められるところ、乙第四号証によると、右整理契約は、訴外会社が控訴人に対して支払いすべき本件売買代金一八三二万六六九七円の一般債務につき、控訴人において、訴外会社からその一〇パーセントの弁済を受けることを条件として残余の九〇パーセントの債務を免除することを内容とするものであることが認められるから、これが、債権者である控訴人の訴外会社に対して有する権利の変更を目的とする和解契約に該ることが明らかであつて、右契約の履行として、同年七月三一日に訴外会社が控訴人に対し、その債務額中一〇パーセントに相当する一八三万二六七〇円を弁済したことにより、控訴人の訴外会社に対する残余の債務につき免除の効果を生じたものというべく、結局訴外会社の本件売買代金債務は消滅に帰したものというべきである。
そうすると、右訴外会社の連帯保証人である被控訴人らの控訴人に対して負担する保証債務は、前示主たる債務の消滅に伴つて消滅するに至つたものといわざるを得ない。
三控訴人は、会社の整理手続が破産手続に移行した場合には債権者の整理計画案に対する同意の効力が消滅するものと解されていることを論拠として、右債権者の同意に関る権利変更の内容は、単に債務者たる整理会社の責任を限定するにとどまり、その債務自体に消長を来たすものではないとし、本件においても、控訴人の訴外会社に対する債権はなお潜在的に存在しているのであるから、右訴外会社の連帯保証人たる被控訴人らが控訴人に対して負担する保証債務の内容に何ら変りはない旨を主張する。
商法上の会社整理手続が、後に関連破産(商法四〇二条)若しくは関連和議(商法四〇一条)の手続に移行した場合における従前の整理計画案に対する債権者の同意の効力については所論のとおりであるが、会社整理手続においては、整理条件たる債権者の権利変更を法律上有効ならしめる特段の手続規定はなく、整理計画案に対する債権者の同意は全く個別的、かつ、任意に行われるものであつて、債権者は、自らの権利保護のため必要と認める場合には、整理計画案につき独自の内容を付加したうえでこれに同意することも可能であるから、多数決によつて和議条項、更生計画等を成立させる破産・和議、会社更生の手続において、債権者保護のために特に設けた保証債務の付従性の例外規定(破産法三二六条二項、和議法五七条、会社更生法二四〇条二項)を準用する余地はないものというべく、従つて、整理計画の内容たる権利変更が、その態様において整理会社の債務の全部又は一部を免除することにある場合等において、債権者が、右整理会社の連帯保証人の保証債務についてはこれを主たる債務の免除部分につき付従性を有しない債務とする旨の異議を留めるなど、特段の意思を表示することなく右整理計画案に同意したときは、民法の一般原則に従い、保証人の債務もその付従性に基づき、右主たる債務の免除の限度まで減免されるものと解すべきものである(なお、最高裁昭和四六年(オ)第三二八号同年一〇月二六日第三小法廷判決・民集二五巻七号一〇一九頁参照)。
しかるところ、本件にあつては、前示訴外会社にかかる整理手続が、その後破産若しくは和議の手続に移行したとの主張がなく、また、これを認むべき証拠は存しない。そればかりでなく、被控訴人らが控訴人に対して負担する連帯保証債務のうち、右免除額に相当する部分がその性質を変じたものと認むべきか否かについても、前示整理契約の締結にあたり、債権者たる控訴人が、被控訴人らの保証債務については主たる債務に対して付従性を有しない債務とする旨の特段の意思を表示し、被控訴人らがこれを承諾した等の事実の存在につき、控訴人において何ら主張するところがない。さようなわけで、控訴人の前示主張はしよせん採用のかぎりでない。
(石崎政男 吉本俊雄 和田丈夫)