札幌高等裁判所 昭和57年(ラ)39号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
抗告人は「原決定を取消す」との裁判を求め、その理由を別紙の通り主張したが、それは要するに、原審が強制管理開始決定をした対象建物(本件不動産)については、その決定前に、抗告人から宮沢司浩に対しこれを賃貸し、その全賃貸期間である三年分の賃料の前払を受けており、債務者である抗告人は本件不動産につき収益権を有していないというべきであるから、原決定は違法でありその取消を求めるというにあると解される。
そこで、検討するに、強制管理は債務者所有の不動産から生ずる収益をもつて債権者の金銭債権の満足にあてるといういわゆる収益執行であるから、債務者が収益権を有していない不動産又は収益の生ずる見込みのない不動産は強制管理の対象にすることはできないというべきであるから(債務者が目的不動産につき収益権を有しているなどこれらの事実については債権者において証明をすべきである)、このような不動産に対し強制管理開始決定がされたときは、債務者はこれに対し執行抗告を申立てることができると解する(収益があつても、それが少額で手続費用を償うに足りない不動産の場合も同様である)が、本件記録によれば、債務者であり所有者である抗告人が本件不動産につき収益権を有しているものと認めることができ、この判断を左右するに足りる資料はない(抗告人は、前記のように、既に原決定の前に抗告人が宮沢司浩に対し本件不動産を期間三年の約束で賃貸しその期間中の賃料全額の前払を受けたことにより収益権を有していない旨主張するが、仮にその主張のような賃貸借契約がされたとしても、所有者である抗告人は未だ右期間後の収益権についてはこれを失つていないことになるうえ、当審における抗告人および相手方各本人審尋の結果によつても、抗告人主張のような上記賃貸借契約の存在および賃料全額前払の事実を認めることはできない)。
(奈良次郎 渋川満 喜如嘉貢)