大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和63年(行コ)5号 判決 1991年8月29日

北見市寿町三丁目五番一八号

控訴人

益井愛人

右訴訟代理人弁護士

今重一

今暸美

郷路征記

佐藤哲之

石田明義

長野順一

笹森学

田中貴文

佐藤博文

北見市青葉町一三番地

被控訴人

北見税務署長 福士良明

右指定代理人

大沼洋一

亀谷和男

高橋徳友

溝田幸一

佐藤隆樹

右当事者間の所得税更正処分取消等請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は控訴人の昭和四三年分の所得税について昭和四六年三月二六日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定(但し、裁決により一部取り消された後の部分)のうち、総所得金額五六万三五五七円、納付すべき税額一万三四〇〇円、過少申告加算税一〇〇円を超える部分を取り消す。

3  被控訴人が控訴人の昭和四四年分の所得税について昭和四六年三月二六日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、総所得金額六七万四七二六円、納付すべき税額二万九五〇〇円、過少申告加算税九〇〇円を超える部分を取り消す。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二  当事者双方の主張は、次のとおり訂正、付加削除するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  右事実摘示中の「所部」を「直属」と改め、原判決二枚目裏六行目の「右」の次に「各」を加え、同三枚目表九行目の冒頭から四枚目表四行目の「(四)」までを次のとおり改め、同四枚目裏六行目の「ものの」の次に「、」を加える。

「(一) 本件各更正は、国税通則法一六条一項一号、二四条の解釈適用を誤り、違法かつ調査に値しない不十分な調査に基づきなされており、違法である。

(二) 本件各更正は、推計の必要性及び合理性がないのにされた推計課税であるから、違法である。

(三)」

二  同六枚目裏七行目から七枚目表七行目までを次のとおり改める。

「申告納税制度は、憲法の各法条から直ちに導かれる制度ではなく、一方で民主主義的納税思想に適合し、他方で租税の能率的徴収の要請に合致するという観点から、国税について納付すべき税額を確定する方式として、国税通則法一六条一項によって初めて認められた制度であり、しかも、同条一項二号及び同条二項二号は、申告納税方式と並列的に賦課課税方式をも採用しているところである。そうすると、申告納税制度の法的性格は、納税者の自主的な申告によりその租税債務が第一次的に確定するという点にあるのであって、納税者の申告行為は、課税標準と税額が各租税法の規定によって既に定まっている限り、当該納税者がこれらの課税要件事実を確認し、定められた方法で数額を確定し、それを政府(課税庁)に通知するという性質の行為であるにとどまるのである。

法律で定められた納税義務の適正な実現を確保し、課税の公平を期することは、政府(課税庁)に対する国民的要請であるところ、各税法が定める質問検査権は、正にこのような国民的要請に基づき、租税負担の公平を期するため、納税者の所得についての調査を行う権限と職責を有する税務職員に対し、国民から信託されたものであるから、国民の共同の利益を擁護する正義の実現として観念されるべきものであり、その行使が国民全体の利益を侵害する必要悪として観念されてはならない。

したがって、質問検査権の行使は、過少申告の具体的な疑いのある者や、申告に係る所得金額の算定根拠が不明確でその正否を検討する必要のある者に限られるとする理由はなく、適正な申告を担保し課税の公平適正な運用を図るため、その行使が必要であると客観的・合理的に認められる場合には、常になし得るのであり、質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、右必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、これを権限ある税務職員の合理的な裁量にゆだねているものと解すべきである。

以上によれば、被控訴人直属係官らのした前記調査は、合理的な必要性のある相当なものであったといえる。」

三  原判決一三枚目表九行目から同裏二行目の「ところが、」までを次のとおり改める。

「本件各更正は、国税通則法一六条一項一号、二四条により、調査に基づきなされたものとされている。しかし、更正の前提たる税務調査は、適法なものでなければならないのは勿論、申告納税制度の理念に照らし「調査」の名に値するものでなければならないところ、本件各更正は違法かつ調査の名に値しない不十分な調査に基づきなされているものであり、違法である。すなわち、

1  所得税法は一二〇条以下において申告納税方式を原則としており、国税通則法一六条一項一号、二四条の解釈適用を行うにあたっては、現行租税法体系の根幹をなす右申告納税方式の制度趣旨を明らかにすることが必要不可欠な大前提となる。そこで、申告納税方式の制度趣旨について述べると、

<1> 申告納税方式は自己計算・自己賦課を原則としているが、これは、まさに課税権力の抑制という自由主義の理念と課税手続における国民参加という民主主義の理念とが分かち難く結合したものであり、現行憲法の国民主権主義、徹底した自由主義の確立によって初めて可能となったものである。

<2> 申告納税制度は、憲法三〇条、八四条に定められている租税法律主義の制度と一体不可分の制度として、同条項に憲法上の根拠が求められる。すなわち、国民が自らの手により納税義務の内容を決定する以上、その履行の場面においても、政府の手によって税法を適用され課税されるより、自らの手により税法に基づいて税額を計算し納税するという方式が、憲法的要請によく応えるからである。

<3> 現行憲法は二九条において国民の財産権の不可侵を保証するとともに、一三条、三五条においてプライヴァシー権を保証しているが、現行憲法の施行と時期を同じくして申告納税方式が採用された背景には、右財産権やプライヴァシー権の保護のため、税額の確定にあたっても自らの申告によることを原則とし、国家の個人の私的領域への介入は必要最小限度にとどめるべきであるという憲法上の要請があったことは否定できない。

以上のような申告納税制度の制度趣旨からすれば、税務調査、推計課税、更正等については、例外的な場合として厳格な要件のもとに実施されなければならないことはいうまでもなく、また、これらの処分の適法性を解釈するにあたっても、単に法律の規定を技術的に解釈適用することでは足りず、憲法上の要請に基づく申告納税方式の制度趣旨に適合するように解釈適用しなければならない。

2  そこで、本件税務調査について検討する。

(一) 一般に税務調査を行うについてはその合理的な必要がなければならないと解されるところ、本件においては調査として質問検査権が行使されているのであるが、質問検査権の行使についても「調査について必要があるとき」(所得税法二三四条一項)にのみなしうるものとされている。そして、質問検査権の行使は、<1>国税犯則取締法の調査権のように令状に基づく強制調査ではないものの、被調査者に受忍義務を課し、調査に応じないときは刑罰による間接強制が認められている(所得税法二四二条八号)など種々の不利益な処分を課せられるものであり、<2>納税者が質問検査を受ける場合、これを受けない者との比較において相当な精神的、経済的負担を強いられることになり、憲法一三条、一四条に規定される個人の尊厳、法の下の平等を著しく侵す結果を招来するものであり、<3>質問検査権の行使は納税者の基本的人権(特に財産権)に重大な関わりを有し、納税者の権利が侵害される危険を多分に内包するものであるから、以上の点を考慮すると、調査について具体的かつ客観的な必要性があるばかりでなく、その必要性が質問検査でなければ目的を達しえないほどの高度のものである場合に限り許されるものと解すべきである。

(二) 納税者への調査理由の告知の納税者にこれに対する弁明、反論の機会を与えることは、質問検査権の行使が優れて権力的作用でありかつ刑罰により担保された間接強制力を有し、国民の権利、営業、信用に重大な影響を与える危険があるため、その適法性を担保する意味からしても、また、当該納税者が質問検査を拒否しても不答弁罪にならないかどうかを判断する唯一の材料を与えるものとして、罪刑法定主義、刑罰法規の明確性要請の趣旨からしても、質問検査権の行使にとって必要不可欠な要件と解すべきである。

(三) 税務調査については、まず申告を尊重するという原則が貫かれなければならず、いやしくも賦課課税方式と異ならない実態を持つものであってはならない。したがって、更正の前提たる税務調査は、可能な限り調査が尽くされたものでなければならず、いやしくも調査が可能であるのに係官の独断で一方的に打ち切った場合は、更正は許されないものと解すべきである。

(四) 以上(一)ないし(三)を前提に、本件税務調査について具体的に検討する。」

四  同一四枚目表九行目の「また」を「なお」と、同行から一〇行目にかけての「いるが」を「おり」と、同一五枚目表四行目の「原告が」から同裏六行目の「被告の調査は」までを「被控訴人のした右調査は、合理的な必要性がなく、調査理由の開示もせずに行われたものであるうえ、」とそれぞれ改め、七行目の「あって」の次の「、」を削り、同行の「言えず」を「いえず、いずれの観点からみても違法というべきであり」と改める。

五  同一七枚目裏八行目の「非合理性」を「不合理性」と改め、同一九枚目表四行目の「窺わせること」の次に「、<6>類似業者というためには、必要経費及び人件費の面でも共通性が認めなければならないところ、控訴人の売上に対する経費(経費中には専従者給与も含む。)率は、昭和四三年度で九・五六パーセント、昭和四四年度で一〇・六三パーセントであるのに対し、Aではそれぞれ一二・〇八パーセント、一二・二九パーセントであり、控訴人の経費の中における人件費の割合は、昭和四三年度で三五・八六パーセント、昭和四四年度で三四・八一パーセントであるのに対し、Aではそれぞれ四七・四七パーセント、四九・八三パーセントであること」を、八行目の末尾に次のとおりそれぞれ加える。

「控訴人の調査の結果、Aは、北見市朝日町一番地所在、当時『前川商店』(現『前川綜合食品株式会社』、以下『前川商店』という。)であることが判明した。前川商店は、スーパーマーケット形式ではなく、砂糖・味噌の計り売りをしており、控訴人と取扱商品に差異があること、店舗面積は控訴人と比較して著しく狭く、営業規模に差異があること、対面販売及び注文配達の営業形態を採っていたこと、閉店時間も夜半まで遅らせるなどの営業努力をしなければならなかったことの諸点において、控訴人とはその業態において著しい質的差異がある。」

六  同一九枚目裏二行目の「であること」の次に「、<4>類似業者というためには、必要経費及び人件費の面でも共通性が認められなければならないところ、控訴人の売上に対する経費(経費中には専従者給与も含む。)率は、昭和四三年度で九・五六パーセント、昭和四四年度で一〇・六三パーセントであるのに対し、Bではそれぞれ一二・四三パーセント、一一・九〇パーセントであり、控訴人の経費の中における人件費の割合は、昭和四三年度で三五・八六パーセント、昭和四四年度で三四・八一パーセントであるのに対し、Bではそれぞれ四三・一二パーセント、四一・四五パーセントであること」を、同行の末尾に次のとおりそれぞれ加える。

「控訴人の調査の結果、Bは、北見市東相内町一七番地所在、当時『名和商店』(現『株式会社名和商店』、以下『名和商店』という。)であることが判明した。名和商店は、北見市の郊外部に位置しているとみるべきであること、周辺の大部分は農地であり、住宅街は点在する程度であること、従業員数が多いこと、スーパーマーケット形式を採用しているものの、注文・配達が大部分を占めていることの諸点において、控訴人とはその業態において著しい質的差異がある。」

七  同二一枚目一〇行目の「争う。」の次に「控訴人主張の経費率及び人件費率は、控訴人の売上金額に雑収入金額が含まれていないこと、事業専従者については、白色申告者である控訴人と、青色申告者であるA・Bとでは取扱に相違があるのに、その点を考慮していないことにおいて、その数値自体に誤りがある。」を加え、同裏七行目の「益井」を削る。

第三証拠関係

原審及び当審記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これから引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加、削除するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  右説示中の「所部」を「直属」と、「証人」を「原審証人」と、「原告本人尋問の結果」を「原、当審における控訴人本人尋問の結果」とそれぞれ改め、原判決二四枚目表三行目から四行目にかけての「適法かつ充分な調査に基づかずに」を「不十分な調査に基づき」と、七行目の冒頭から同裏八行目の「である。」までを次のとおりそれぞれ改める。

「憲法は、国民がその総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うこと(憲法三〇条)並びに新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とすること(同法八四条)を定めており、したがって、課税要件及び租税の賦課徴収の手続は、法律で定められることが必要であるが、憲法はその内容自体を定めることはせず、これを法律の定めるところに委ねている。そして申告納税制度は、国税についてみれば、国税通則法一六条一項一号により創設された制度であって、納税義務者が納付すべき税額はその者のする申告により確定することを原則としてものの、同法二四条等により、最終的な税額の確定は税務署長に留保され、その更正のないことを条件としてその申告が承認されるにすぎない。

所得税法上の申告納税制度においても、税務署長は、所得税の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するため、納税義務者がその義務を正しく履行したか否かを調査する職責を有し、申告税額が自己の調査したところと異なる場合には、申告税額に拘束されることなくこれを是正することができるものというべきところ、税務署長がどのような場合にかかる調査をすべきかについては法の明定するところではないから、税務署長は、過少申告と疑うに足りる事情の存する申告について調査をすることのできることは勿論、申告の真実性、正確性を確認する必要性の存する場合に調査することも何ら妨げられるものではないと解すべきである。そして、所得税法二三四条の質問検査権は、右調査を行うための実効性のある制度として設けられたものであるから、税務署等の調査権限を有する職員において、調査の目的、調査すべき事項、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、調査の一方法として行使することができるものと解すべきである。」

2  同二五枚目表二行目の「収入金額」の前に「、」を加え、同行の「、必要経費は三八九万〇三〇七円」を削り、四行目の「ところ」の次に「、」を加え、同裏一行目の「また他の同業者に」を「他の同業者と」と、二行目の「低いと判断したため」を「低額であったことから」とそれぞれ改める。

3  同二七枚目表一行目の「一一月」を「同月」と、同二八枚目表五行目の「昭和四五年」を「同年」と、同二九枚目裏二行目から三行目にかけての「仕入れの状況等から」を「経営規模等から一般的にみて」と、末行の「このような」から同三〇枚目表一行目の末尾までを「実質的な調査をしたとはいえず、違法であると主張する。」とそれぞれ改め、同裏四行目から五行目にかけての「る等普通の対応をしているということはできず」を、一〇行目から同三一枚目表四行目までをそれぞれ削り、五行目の「確かに、同法」を「国税通則法」と、九行目の「させており」から一〇行目の「いうことはできる」までを「試みているのであり、調査が不十分に終わったことについては控訴人にその責任があるのである」とそれぞれ改める。

4  同三二枚目表三行目の「だった」を「であった」と、同裏末行の「これ」を「推計」とそれぞれ改め、同四三枚目表五行目の「ものの如くである」を削り、末行の「しかし、」から同四四枚目裏七行目末尾までを「ところで、被控訴人の主張する売上金額に類似同業者の平均差益率を乗じて差益金額を推計する方法は、基礎となる売上金額が確実であり、かつ、適切な類似同業者が得られる場合には、推計の確度が高く合理的なものというべきである。そして、控訴人の売上金額が昭和四三年分については四〇八五万八八〇四円であり、昭和四四年分については五〇三三万一七九八円を下回ることのないことについては前示のとおり当事者間に争いがない(当裁判所は右事実について自由が成立すると解するものである。仮に自白が成立しないと解する立場に立っても、前掲甲第三六号証の一ないし四九、第七七号証の一ないし五四、乙第三ないし第五号証、原審証人五十嵐楯臣の証言及び弁論の全趣旨を総合すると、控訴人は帳簿上右各年分の売上金額として右各金額を記帳し、原判決添付別表四の(一)及び(二)のとおり主張していることが認められるところ、経験則上納税者が売上金額について自ら過大な記帳ないし主張をすることは特段の事情がない限りあり得ず、本件において右特段の事情の存在を窺わせる証拠が何ら存在しないことに照らすと、控訴人の右各年分の売上金額は少なくとも右各金額を下回らないものと推認するのが相当である。)から、これを推計の基礎として採用する。」と、末行の「類似同業者を選定するために」を「控訴人に類似する業者として」とそれぞれ改め、同四五枚目表五行目から六行目にかけての「者の中から原告と類似する」を削り、七行目の「別表三記載の業者」を「、北見市に所在する青色申告書を提出している食料品小売業者であって、スーパーマーケット形式の営業形態をとり、酒・煙草の販売も行っている業者全員(但し、そのうちDは後記のとおり煙草の販売を行っていなかった。)を別表三記載のとおり」と改め、末行の「のために」の次に「入院して」を、「比して」の次に「かなり」をそれぞれ加え、同裏末行の「基準」を「判断」と改める。

5  同四七枚目表三行目の「取扱商品には」を「取扱商品に」と、七行目の「一〇・〇三」を「〇・三六」とそれぞれ改め、九行目の「窺わせること、」の次に「<6>昭和四三年度、昭和四四年度で、売上に対する経費(経費中には専従者給与も含む。)率がそれぞれ一二・〇八パーセント、一二・二九パーセントと控訴人(それぞれ九・五六パーセント、一〇・六三パーセント)に比して高率であり、経費の中における人件費の割合もそれぞれ四七・四七パーセント、四九・八三パーセントと控訴人(それぞれ三五・八六パーセント、三四・八一パーセント)に比して高率であること、」を加え、一〇行目の「多額に」を「多額で」と改め、末行の「あること」の次に「、<4>昭和四三年度、昭和四四年度で、売上に対する経費(経費中には専従者給与も含む。)率がそれぞれ一二・四三パーセント、一一・九〇パーセントと控訴人(それぞれ九・五六パーセント、一〇・六三パーセント)に比して高率であり、経費の中における人件費の割合もそれぞれ四三・一二パーセント、四一・四五パーセントと控訴人(それぞれ三五・八六パーセント、三四・八一パーセント)に比して高率であること、」を加える。

6  同四七枚目裏九行目の「だから」を「であるから」と、同四八枚目裏四行目の「認めさせる」を「認める」とそれぞれ改め、五行目の末尾に「更に、控訴人とAとの経費率及び人件費率の各対比については、控訴人がその主張の前提として控訴人の売上金額に雑収入金額を含めていない点並びに事業専従者の取扱を異にする白色申告者の控訴人と青色申告者のAについてその必要経費ないし人件費を対比すること自体に無理がある点において、その主張の正確性には多大の疑問がある。」を加え、六行目の「売掛金」を「売上金額」と改め、同四九枚目表二行目の末尾に「更に、控訴人とBとの経費率及び人件費率の各対比に関する控訴人の主張についても、Aの場合と同様にその理由がない。」を加える。

7  同四九枚目表九行目の「旨」を「ことを」と改め、同五〇枚目裏六行目の「によると」の次に「、」を加え、同五一枚目裏六行目の次に行を改めて次のとおり加え、七行目の「5」を「6」と改める。

「5 なお、控訴人は、その調査の結果、Aが前川商店であることが判明した旨主張し、前掲乙第六号証の一、二、当審における控訴人本人尋問の結果及びそれにより真正に成立したものと認められる甲第一二三号証を総合すると、Aは前川商店に似ていると認められる。しかし、右甲第一二三号証の記載及び控訴人の供述中の、控訴人が前川商店の店主前川信志から聴取したとする内容は、いずれも伝聞であるうえ、これを裏付ける的確な証拠がなく、右乙第六号証の一、二(青色申告決算書)の内容と、自動車の購入状況・商品棚の設置時期・レジスターの取得状況などかなりの部分において相違する(右乙第六号証の一、二は、いずれもその申告に当たり貸借対照表、損益計算書その他所得金額の計算に関する明細書が添付され、申告者は大蔵省令で定めるところにより帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録しその帳簿書類を保存していたことが推定される《所得税法一四八条、一四九条》ので、その内容は特段の事情がない限り、全体にわたり信用性があるものといえる。)から、直ちに措信することができない。

また、控訴人は、その調査の結果、Bが名和商店であることが判明した旨主張するが、甲第一三〇号証及び右控訴人の供述によっても、Bと名和商店とが同一であるとまで認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。」

二  よって、本件控訴をいずれも失当として棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仲江利政 裁判官 河合治夫 裁判官 高野伸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例