大判例

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札幌高等裁判所 昭和26(う)209 高裁判例

主 文

本件控訴はいずれもこれを棄却する

当審の訴訟費用は全部被告人Aの負担とする

理 由

被告人両名の弁護人長谷川毅、岩沢誠の各控訴趣意被告人Aの弁護人であつた上

田保の控訴趣意は別紙のとおりである

上田弁護人の控訴趣意について

原審において昭和二十六年一月五日同年一月十六日の公判期日を同月十一日に変

更し該期日を弁護人Bに通知することなく同弁護人不出頭の侭同日公判を開廷し同

公判廷において証人の取調をなし右公判期日に次回公判期日を同年一月三十一日と

指定し同様弁護人Bに該期日を通知することなく同日開廷して証拠調をなしたこと

は所論のとおりであるしかしながら記録によると弁護人も認めているとおり最初に

公判期日の変更決定をし九日である昭和二十六年一月五日被告人両名から弁護人B

が病気のため一月十一日の公判期日に出頭できず長期の療養を要するとのことであ

るから弁護人を選任されたい旨の申出があり診断書の写には同弁護人が脳溢血に罹

つた旨の記載があるので原審においては一月十一日の公判期日に右弁護人の疾病が

長期に亘り審理の遅延を来す虞があるから同弁護人を解任し被告人等のため新たに

他の弁護人を選任することについて意見を求め被告人等も新たに弁護人を選任せら

れたい旨述べたので国選弁護人Bを解任し(B弁護士は被告人Aの国選弁護人であ

つたのと同時に被告人Cの私選弁護人であり原審第三回公判調書に被告人等の弁護

人Bを解任しとあるのは被告人Aの国選弁護人Bを解任した趣旨と解するのである

が)被告人等のため新たに国選弁護人として弁護士Dを選任し以後同弁護士出頭の

下に公判手続を進行していることが認められる

それで刑事訴訟規則第百七十九条の五及び同第百七十九条の六による新たな国選

弁護人の選任による訴訟手続の進行は弁護人よりやむを得ない事由による公判期日

変更の請求があつた場合はじめて許さるべきものであるかどうかについて考えて見

るに右の条項は要するに被告人の利益を害することなしに極力審理の遅延を防止す

るために設けられたものであつて同規則第百七十九条の五の第一項及び第百七十九

条の六の第一項は弁護人に公判期日の変更を必要とする事由が生じた場合急速に裁

判所にこれを知らせ裁判所をして訴訟遅延を防止する措置を構じ得るよう弁護人に

直ちに公判期日変更の請求をなすべき義務を負はせたに過ぎないのであつて<要旨>

弁護人より公判期日変更の請求がない場合においても弁護人に公判期日の変更を必

要とする事由が生じそれが</要旨>長期に亘り審理の遅延を来たす虞があると思料す

るときは裁判所は職権を以つて同規則第百七十九条の五の第二項第三項の規定に従

い国選弁護人を選任し或は同条の六の第二項の規定に徒い公判期日の変更を必要と

する事由の生じた国選弁護人を解任し新たに国選弁護人を選任して訴訟手続を進行

し得るものと解するそして本件の場合は被告人等よりB弁護人が病気にて長期の療

養を必要とする故新たに国選弁護人を選任されたい旨の申出あり同弁護人の病状が

脳溢血であることを思えば同弁護人の出頭を待つて公判を開くにおいては審理の遅

延を来すことが明らかであるから審理の遅延を来すものと認めて被告人Aについて

はB弁護人の国選を解任し新たに両被告人のため弁護士Dを国選弁護人として選任

し訴訟手続を進行したのは相当な措置といわなければならないそして公判調書を調

査して見ると新たに選任せられたD弁護人は被告人等のため証人に対し詳細な尋問

をして居りこれから見れば同弁護人は予め事件につき被告人等に問いただし被告人

のための弁護権を行使するにつき遺憾のないようにしていたことが窺はれるのであ

つて裁判所の執つた前記措置により被告人の利益を害した点があるとは認められな

いから手続違背若くは不法に弁護権を制限した点はないものというべきである

然らばCの私選弁護人であつた弁護士Bに公判期日の通知をせずに国選弁護人D

が出頭しただけで公判手続を進行したことの適否についてはどうかというに弁護人

が選任されている以上これに公判期日の通知を要すること勿論であるけれども本件

の場合最初公判期日を変更した日において被告人等より弁護人Bが別紙診断書の通

り病床にあり一月十一日の公判期日には出頭できないから国選弁護人を選任された

い旨申出でB弁護人の作成した同弁護人に対する医師の診断書の謄本を添付してい

るのであつて同弁護人の諒解のもとに期日に同弁護人が出頭できないことと国選弁

護人選任方とを申し出たことが窺はれるのであり弁護人が公判期日を知りながらこ

れに出頭できないことが明らかな場合において裁判所が弁護人に公判期日を通知せ

ずに刑事訴訟規則第百七十九条の五の規定により国選弁護人を選任し訴訟手続を進

めても不当に弁護権を制限したことにはならないものというべく新たな国選弁護人

の選任による訴訟手続の進行が被告人の利益を害するものでなかつたことも先に説

明した通りであり従つて本件においては不法に被告人等の弁護権を制限した点はな

いから公判手続は適法に行われたものというべく原判決に証拠として該公判におけ

る証人Eの供述及び公判において証拠調をした被告人Aの副検事に対する供述調書

を引用しても何等手続に違背するものではなく採証の法則に違反するものでもない

所論は独自の見地に立つて原審の公判手続を論難するものであつて採用し難く論旨

は理由がない

長谷川弁護人控訴趣意について

原判決であげた証拠によれば原判示事実を認めることができるのであつて弁護人

が引用した被告人若くは証人の右認定に反する供述部分は原審が採用しなかつたと

ころでありこれをとつて原判決を論難するのは当らない

岩沢弁護人の被告人Cに関する控訴趣意第一点同Aに関する控訴趣意第一点につ

いて

要する原判決挙示の証拠によれば原判示事実をいずれもこれを認めることができ

弁護人の引用する供述部分は原審が採らなかつたところで論旨は理由がない

同弁護人のAに関する控訴趣意第二点について

しかしながら原判決には被告人Aの副検事に対する供述調書の記載の外原審証人

Eの供述をも引用しているのであつて右供述調書記載の被告人の自白のみによつて

所論の知情の点を認定したものではないから論旨は当らない

以上本件控訴はいずれも理由がないから刑事訴訟法第三百九十六条に則りこれを

棄却すへく訴訟費用の負担については同法第百八十一条第一項を適用し主文のとお

り判決した

(裁判長判事 竹村義徹 判事 西田賢次郎 判事 百村五郎左衛門)

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