札幌高等裁判所函館支部 昭和27年(う)89号 判決
原審は現金四万九千六百六十五円(函願地方検察庁昭和二六年(地方)第一六〇八号)は之を被告人龍野嘉七から沒収する旨判決していること及び食糧管理法には沒収の規定は同法第三十二条第二項以外にはなく右は同法第十一条第一項又は第四項に違反した場合の規定であつて本件の如く同法第九条第一項に違反した場合に関するものではないことはいづれも所論の通りである。しかし刑法総則の規定は原則として食糧管理法にも適用されることは同法第八条の規定によつて明らかであるから押収した本件犯罪の組成物件たる粳精米は同法第十九条により沒収出来ることは疑いない。しかして前記現金四万九千六百六十五円は刑事訴訟法第百二十二条第二百二十二条による右粳精米の換価代金であることは記録上明らかであつて之に対しては押収の効力が及ぶと解するのが相当である。従つて右換価代金を刑法第十九条第一項第一号第二項により沒収した原判決は正当であつて何等違法の点はない、論旨は理由がない。
(弁護人の控訴趣意)
第二点 原判決は被告人龍野嘉七に対し金四万九千六百六拾五円也を沒収する旨を宣し且適用法条を刑法第十九条第一項第一号第二項と為したり
(1) 食糧管理法を通覧するに沒収すべき事を規定したるは同法第三十二条第二項に前項第三号の場合に於て輸出若は移出又は輸入若は移入したる主要食糧にして犯人の所有し又は所持するものは之を沒収することを得云々と規定しありて其他の場合に於て沒収すべき旨の規定なし、特別法は普通法に優先して適用すべき旨の原則上食糧管理法違反事件に付ては前述の場合を除く外刑法の沒収の適用なく本件の如き場合は沒収し得べからざるものと思考す
(2) 仮に然らずとし刑法第十九条の規定の適用ありとするも本件金額は輸送したる粳精米の換価代金にして同条第一項第一号の犯罪組成物にあらざること明白なり。凡そ沒収の制度は犯人に犯罪組成物を所有又は所持せしむることが社会公安の見地より不適当なるに因由し犯人以外の者の所有に帰したる場合は沒収の必要なしと認め之が換価したるものを沒収し得べき旨の規定を為さざりしものと思考す。然るに原判決は犯罪組成物にあらざる換価金を沒収したるは違法なり。裁判例によれば之を肯定するものあるも刑法の規定の改正あらば格別なるも改正せられずして原判決の如き沒収を為すが如きは法律の規定を超越したる解釈にして違法なりと謂はざるべからざるにより刑事訴訟法第三百八十条第三百九十七条により破棄せらるべきものと思考す