大判例

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札幌高等裁判所函館支部 昭和29年(う)44号 判決

右控訴趣意第一点(審判の請求を受けない事件について判決をし、事実を誤認し又は理由にくいちがいあり)について。

所論は、本件公訴事実は起訴状によれば、昭和二十八年十一月末頃より同二十九年二月四日迄の貸金業等の取締に関する法律違反行為を対象とするのにかかわらず、原審は昭和二十八年二月三日頃から同二十九年二月四日頃迄の同行為につき判決をしたものであるから、原判決は起訴の範囲外である昭和二十八年二月三日頃から同年十一月中頃迄の行為をも有罪と認定した点に於て(一)審判の請求を受けない事件について判決をしたものであり(二)事実を誤認したものであり(三)理由にくいちがいがあるから破棄を免れないというにある。

これに対し次のとおり判断する。

(一)について。

記録によると本件は被告人が無届で前後二十八回に亘り手形貸付の方法による金銭貸借の斡旋媒介をして貸金業を行つたという事案であるが、起訴状は本文と別表とからなり、本文には「被告人は…………昭和二十八年十一月末頃より同二十九年二月四日迄の間不特定多数人たる蝦名浩三外七名の手形所持者の依頼に応じ昭光商事株式会社代取締役為国治男外二名に対し日歩十五銭乃至二十銭で合計二十八通、額面合計六百九万二千二百七十一円の手形割引をなさしめ両者の間を斡旋媒介し以て別表記載の通り貸金業を行つたものである。」と記載し、別表には二十八回の媒介行為を(1)乃至(28)とし依頼者、依頼日時、依頼場所、割引日時、割引人、割引場所、手形(振出人、額面、支払期日、所持人)欄に夫々該当事項を具体的に詳しく記載している。(なお別表の記載によると(1)は蝦名浩三の依頼による斡旋媒介で昭和二十八年十一月末頃、(28)は同二十九年二月四日で、(1)乃至(28)は各依頼者別に見ると日時の順序に記載しているが全体としては日時の順序に記載している訳でもない。)このように公訴事実が多数の同種行為でその各行為の具体的内容は別表に詳しく記載し起訴状本文は別表記載の事実を総括して記載しているに過ぎない場合は、総括した部分の実体は別表記載の事実なのであるから本文の総括的記載部分が別表記載の事実と異なるときは本文の記載を誤記と解するのが相当である。

ところで本件別表の記載によると犯行の始期は(21)の田中徳蔵の依頼による斡旋媒介で、その日時は「昭和二十八年二月三日」であるから本文の「昭和二十八年十一月末頃より」とあるのは右「昭和二十八年二月三日頃より」の誤記と解すべく、従つて犯行の期間を起訴状本文記載の期間に限定していると解することの出来ない本件に於て、原判決が起訴状添付の別表を全部そのまゝ引用し「被告人は無届で昭和二十八年二月三日頃から昭和二十九年二月四日頃迄の間別表記載の通り貸金業を行つた。」と認定処断したのは、単に犯行の期間だけから言つても所論のように起訴の範囲外の行為を認定し処罰の対象としたことにはならない。のみならず犯行の日時は罪となるべき事実ではないし右(21)の媒介行為は別表に記載されているのであるから起訴の範囲内であることは明らかであり、且つ(21)の昭和二十八年二月三日頃から(1)の昭和二十八年十一月末頃迄の期間内に本件犯行に包含される媒介行為は一つも認定していないのであるから論旨は理由がない。

(二)について。

按ずるに、原判決はその挙示の原審公判廷に於ける被告人の自供、証人為国治男の証言、司法警察員及び検察官(第一、二回)に対する被告人の供述調書、田中徳蔵作成に係る答申書(記録31丁)を採証に供し、本件起訴状添付の別表(21)の右田中の依頼による違反事実を認定したものであるが、右各証拠によれば、同犯罪日時は昭和二十八年二月三日頃ではなく、昭和二十九年二月三日頃であることが認められるので、原判決は(21)の行為につき犯行の日時を誤認したものといわなければならない。その為、原判決は犯行の期間を十ケ月遡及して長く誤認した結果になつたことは記録上明白であるけれども、その間に違反行為があつたと認定していないのであるから右誤認は量刑及び其の他の点に於て判決に影響を及ぼすものとは認められない。論旨は結局理由がない。

(三)について。

しかし、原判決引用の本件起訴状添付の別表(21)の犯罪日時が昭和二十八年二月三日、同二十九年二月三日のいずれにしても、犯罪の成立することには何等の変りがなく、犯行の日時は罪となるべき事実ではないから、従つて前段説示のように原判決の認定日時と証拠との間に矛盾があるとしても、刑事訴訟法第三百七十八条第四号後段にいわゆる理由にくいちがいがある場合に該当しないものと解するのが相当である。故に論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 西田賢次郎 裁判官 山崎益男 裁判官 水島亀松)

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