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東京地方裁判所 平成元年(レ)18号 判決 1992年3月16日

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人が東京都港区《番地略》所在の区分所有建物・高輪中台マンションに関し、高輪中台マンション管理組合に対し納入すべき営繕維持積立金は、昭和六二年三月以降毎月額金七五〇〇円であることを確認する。

2  被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、第一、第二審とも控訴人の負担とする。

理由

【事 実】

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

第二  当事者の主張

一  請求原因

次のとおり付加、訂正するほかは、原判決「事実及び理由」二1(請求原因)記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目表一三行目の「原告は」を「星賢司は、平成三年二月二四日まで」に、同裏二行目の「管理者であり」を「管理者であつた者であり」に、同三行目「管理組合総会において」から同四行目の「者である」までを「管理組合総会の決議による授権に基づき、控訴人を除く区分所有者のために本件訴訟を追行してきた」に、それぞれ改める。

2  同二枚目裏四行目の次に、改行して次のとおり加える。

「次いで、区分所有者は、平成三年二月二四日に聞かれた管理組合通常総会において、星賢司に替わつて新たに金子義明を管理者に選任し、同人が被控訴人の地位を承継した。」

二  請求原因に対する認否

控訴人が被控訴人主張の区分所有者であること、金子義明が新たに管理者に選任されたこと、管理組合には被控訴人主張の規約の定めがあること、被控訴人主張のような給水管工事が行われたこと、控訴人が給水管工事の負担金中九万二七〇〇円を支払つたこと、営繕積立金のうち三八〇〇円を毎月支払つていることは認めるが、その余の事実は否認又は不知。

三  抗弁

原判決六枚目表六行目を削除し、同一一行目の次に改行して次のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」三1(被告の主張)記載のとおりであるから、これを引用する。

「控訴人は、被控訴人に対し、原判決言渡後である平成元年二月一〇日、原判決主文第二項において給付を命じられた元本及びこれに対する遅延損害金全額を弁済した。」

四  抗弁に対する認否

右弁済の事実は認め、その余の主張は争う。

第三  証拠《略》

【理 由】

一  請求原因について

1  請求原因(一)のうち、控訴人が本件建物の区分所有者であることは当事者間に争いがなく、星賢司が昭和六二年四月二六日の管理組合総会において本件訴訟を追行する権限を授与されたことは《証拠略》により認められ、平成三年二月二四日の同総会において星賢司に替わつて新たに金子義明が管理者に選任され、被控訴人の地位を承継したことは当事者間に争いがない。

2  同(二)及び(三)は《証拠略》により、同(四)は《証拠略》によりそれぞれ認めることができる。

3  同(五)のうち、給水管工事が行われたことについては当事者間に争いがなく、その余の事実は《証拠略》により認めることができる。

4  同(六)は《証拠略》により認めることができる。

5  同(七)のうち、控訴人が給水管工事の負担金のうち九万二七〇〇円を支払つたこと、営繕維持積立金として毎月三八〇〇円を支払つていることは当事者間に争いがなく、その余の事実は《証拠略》により認めることができる。

6  同(八)の事実は《証拠略》によりそれぞれ認めることができる。

7  そこで、同(九)の事実(控訴人の不法行為)について判断する。

《証拠略》によれば、控訴人は、営繕維持積立金及び給水管工事の負担金が建物の占有面積の割合で定められることを不合理と考え、独自の見解に基づいて、管理組合総会の決議により適法に定められた営繕維持積立金及び給水管工事の負担金の一部を支払わず、被控訴人が話し合いに応じるよう説得してもこれを一年半にわたり無視し続け、かえつて管理組合に対し訴訟提起を挑発するような言動をし、被控訴人が弁護士に依頼して本件訴訟を提起せざるを得なくしたことが認められる。控訴人の右行為は管理組合及びその管理者たる被控訴人に対する不法行為を構成するというべきである。

そして、右不法行為と因果関係のある弁護士費用としては金三万円が相当である。

8  以上によれば、控訴人は被控訴人に対し、給水管工事の負担金残金四万七三〇〇円、未払営繕積立金七万四〇〇〇円、不法行為に基づく損害賠償金三万円、以上合計金一五万一三〇〇円及び内金四万七三〇〇円に対する昭和六一年四月二一日から、内金一万四八〇〇円に対する昭和六二年七月二八日から、内金五万九二〇〇円に対する昭和六三年一一月一八日から各支払済みまで年一割二分の割合による遅延損害金の支払義務(原判決が控訴人に対し支払を命じたのと同一である。)を負う。

二  抗弁について

1  共有部分の給水管工事及び営繕維持積立金の負担割合を占有部分の床面積に応じて負担することを内容とする規約及び管理組合総会決議の内容は、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の定めに照らし合理的であり、なんら信義則に反する点は認められない。そして、区分所有法により、区分所有者は管理組合の規約及び決議の適用を当然に受けるものとされている以上、規約及び管理組合総会決議の適用を受けないとする控訴人の主張は全く理由がない。

2  控訴人が被控訴人証人に対し、平成元年二月一〇日原判決により給付を命じられた債務全額を弁済したことは当者間に争いがない。

三  結論

よつて、被控訴人の請求は、控訴人が本件建物に関し、高輪中台マンション管理組合に対し納入すべき営繕維持積立金が昭和六二年三月以降毎月額金七五〇〇円であることの確認を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は棄却すべきであるから、これと異なる原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条ただし書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 赤塚信雄 裁判官 三代川三千代 裁判官 谷口安史)

《当事者》

控訴人 甲野太郎

右訴訟代理人弁護士 泉 弘之

被控訴人 高輪中台マンション管理組合管理者 金子義明

右訴訟代理人弁護士 篠原みち子

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