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東京地方裁判所 平成元年(ワ)16879号 判決 1992年12月21日

東京都渋谷区千駄ケ谷一丁目二〇番一号

原告

株式会社枇杷葉温圧

右代表者代表取締役

濱田久美子

右訴訟代理人弁護士

藤本猛

山梨県南巨摩郡南部町中野一四三〇番地

被告

有限会社三栄商会

右代表者代表取締役

望月寅雄

東京都世田谷区成城二丁目三五番一三号

被告

株式会社あなたと健康社

右代表者代表取締役

五来百合子

右両名訴訟代理人弁護士

三枝三重子

三吉尚子

東京都町田市本町田二〇四八番地の一四一

被告

神谷富雄

右訴訟代理人弁護士

中村玲子

山本清子

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告有限会社三栄商会は、その製造する棒状もぐさもしくは棒状もぐさと施灸用品のセットの容器、包装並びにその広告に別紙目録(二)(1)及び(2)の表示を使用し、またはこれを使用した棒状もぐさもしくは棒状もぐさと施灸用品のセットを販売拡布してはならない。

2  被告株式会社あなたと健康社は、被告有限会社三栄商会が製造し、その容器、包装に別紙目録(二)(1)及び(2)の表示を使用した棒状もぐさもしくは棒状もぐさと施灸用品のセットを販売拡布し、またはその発行する出版物に別紙目録(二)(1)及び(2)の表示を使用した広告を掲載してはならない。

3  被告らは原告に対し、連帯して金二〇〇〇万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告神谷富雄は原告に対し、金一二〇〇万円及びこれに対する昭和六二年三月末日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  請求原因

一  当事者

1  原告は、枇杷葉温圧療法のために使用する棒状もぐさ及び施灸用品の製造販売を業とする株式会社である。

2  被告有限会社三栄商会は、「お灸の製造及び販売」等を目的として昭和六二年八月二八日に設立された会社である。

3  被告株式会社あなたと健康社は、「月刊誌あなたと健康、並びに書籍雑誌の出版、販売」、「自然食品、及び特殊寝具の販売」等を目的として設立された会社であり、枇杷葉温圧療法のために使用する棒状もぐさ及び施灸用品の通信販売を業務の一部として行っているものである。

4  被告神谷は、昭和五六年一一月から昭和六一年一〇月一五日までの間、原告の代表取締役であったものである。

二  原告の商品表示

1  枇杷葉温圧療法は、枇杷の葉を快癒点(ツボ)に当てて、その上から着火した棒状もぐさを押し当てることにより、枇杷の葉とお灸の組み合わせによって、体の自然治癒力を高めて各種の疾病を治癒させる民間療法である。

2  枇杷葉温圧療法は、昭和三〇年以来原告代表者濱田久美子の元の夫の父濱田観冏が一般に紹介していたものであるが、昭和四一年頃からは、濱田久美子と当時その夫であった濱田侃とが枇杷葉温圧健康会等の名称で、この療法の普及活動に努めた。そして昭和四九年二月、「東京スポーツ」紙で枇杷葉温圧療法が紹介されたことがきっかけになり、全国から注文が殺到し、数百人程度の顧客がこの頃定着した。

3  昭和五〇年八月、濱田久美子を代表取締役として有限会社枇杷葉温圧が設立され、同社は、枇杷葉温圧療法の普及と右療法に使用する商品の販売活動を行って来たが、昭和五六年一一月に、株式会社に組織変更されたのが、原告である。

原告の販売する商品の主なものは、枇杷葉温圧セット(箱、消納筒、枕、ローソク立て、棒状もぐさ一六本、布一組、紙一組及び手引書)、補充用棒状もぐさ(一五本入りと三一本入り)である。

4  濱田久美子ら及び同人らの営業を承継した原告は、昭和四一年頃以来、右の枇杷葉温圧セット及び補充用棒状もぐさの商品表示として別紙目録(一)の(1)ないし(5)の表示(以下「原告商品表示」という。)を使用して、営業、広告を行ってきた。

三  原告商品表示の周知性

1  このように、昭和四一年頃から濱田久美子らの「枇杷葉温圧健康会」によって、昭和五〇年八月からは右濱田久美子らの営業を承継した原告の前身である有限会社枇杷葉温圧によって、昭和五六年一一月からは原告によって、それぞれ一貫して行われてきた販売及び広告活動により、遅くとも昭和六一年までに原告の商品の表示として別紙目録(一)の(1)ないし(5)の表示が、需要者、取引者の間で広く認識されるに至っており、周知性を獲得している。

2  被告らは、「枇杷葉温圧」の名称に独自性がないとか、普通名称であるとして原告商品表示の周知性を争っているところ、「枇杷葉」、「温」、「圧」はそれぞれに普通に用いられる語であるが、これを組み合わせた「枇杷葉温圧」は独自性の強い名称であり、棒状もぐさと施灸用品の名称として考えるとき、これを普通名称ということはできない。また現実の取引界においても、棒状もぐさないしこれと施灸用品を一般的に「枇杷葉温圧」と称している事実は存在しない。

四  被告三栄商会の商品表示

1  被告三栄商会は、昭和六二年頃から、その製造する棒状もぐさ又は棒状もぐさと施灸用品のセットの容器、包装並びにその広告に別紙目録(二)(1)及び(2)の表示(以下「被告商品表示」という。)を使用し、右表示を使用した棒状もぐさ又は棒状もぐさと施灸用品のセットを販売している。

2  被告あなたと健康社は、被告三栄商会が製造し、その容器、包装に被告商品表示を使用した棒状もぐさ、又は棒状もぐさと施灸用品のセットを販売し、またその発行する月刊誌「あなたと健康」に被告商品表示を使用して右商品の広告を掲載している。

3  被告神谷は、被告三栄商会、被告あなたと健康社と共謀して右1、2の行為を行っている。

五  原告商品表示と被告商品表示との類似性及び誤認混同

1  原告商品表示と被告商品表示とを対比すると、被告商品表示の「ビワの葉温灸」は、枇杷の葉を意味する「ビワの葉」と、お灸を意味する「温灸」を組み合わせたもので、同じ意味、構成である原告商品表示の「枇杷葉温圧」を言い換えたものに過ぎず、両者は類似している。

2  加えて、被告らはその商品形態、販売方法においても、被告三栄商会の商品を原告の商品と誤認混同させる行為を行っている。

すなわち、原告の枇杷葉温圧セットと被告三栄商会のビワの葉温灸セットを比べると、箱の表面のデザインと布の枚数(原告商品が一枚であるのに対し、被告三栄商会の商品は二枚入り)以外は全く同じ内容であり、また被告あなたと健康社は、発行する月刊誌「あなたと健康」の通信販売欄に被告三栄商会のビワの葉温灸セットの広告を出しているが、その内容は、被告あなたと健康社がかって原告の商品を紹介していたときと同様の広告である。

3  このように原告商品表示と被告商品表示とは、類似しているために誤認混同のおそれがあり、また現実にも誤認混同の事例が生じていて、原告はその営業上の利益を害されるおそれがある。

六  なお、本件については次の事情がある。

原告代表者濱田久美子らは、前述のとおり昭和四一年頃から枇杷葉温圧療法の普及に努めてきたものであるが、被告神谷は昭和四七年頃右療法の効果を知り、以来原告のもとで働いて、原告の事業内容、ノウハウを得たものであり、また被告あなたと健康社の代表者五来百合子は、昭和四九年二月に右療法を知り、その発行する「あなたと健康」誌を通じて原告の商品の通信販売を行い、このころは原告の最大手の取引先であったものであるが、右被告神谷と五来百合子は、被告あなたと健康社の健康用品業界において有する力をもってすれば原告を叩きつぶすことも容易にできると考え、共謀し、被告神谷において、昭和六一年八月二九日、突然原告に辞表を提出し、何ら引継ぎもしないまま同年九月三〇日に社内で退職のあいさつをした上、同年一二月六日、被告神谷や五来が発起人となって、原告と同じ営業で原告と極めて類似した商号の枇杷葉温圧本舗株式会社を設立した。これに対し、原告が抗議したため被告神谷はその営業を中止した。しかし被告神谷は、昭和六二年八月五日被告あなたと健康社に入社し、更に同月二八日、五来百合子の次男の養父を代表者にして被告三栄商会をダミー会社として設立し、原告の商品と類似の商品を製造した上、被告神谷が持ち出した原告の顧客名簿により原告の取引先を中心に販売を進め、「あなたと健康」誌においても、原告の商品を取り扱っていた際とほぼ同じ広告をして、原告とほぼ同じ顧客層を対象に名称、商品形態、広告、販売形態のいずれについても類似した商品の販売を行っているのである。

このことからしても被告らは、原告が営んでいた枇杷葉温圧療法に目を付けてこれを原告から乗っ取ろうとして、類似の名称を使用しているもので、その不正競争行為は明らかである。

七  原告の損害

1  被告三栄商会がビワの葉温灸セットの販売を開始する昭和六二年以前の原告の利益は以下のとおりである。

(一) 昭和五九年三月一日から昭和六〇年二月末日まで

売上高 一億三四二四万三六七三円

粗利 八五四二万九一一七円

棒状もぐさ売上本数 四二万四八六六本

(二) 昭和六〇年三月一日から昭和六一年二月末日まで

売上高 一億三三八一万五〇二四円

粗利 八五二六万一五五四円

棒状もぐさ売上本数 四一万四一三〇本

(三) 昭和六一年三月一日から昭和六二年二月末日まで

売上高 一億二九一五万六三〇五円

粗利 八五九五万〇七八七円

棒状もぐさ売上本数 四一万一一三九本

2  ところが、被告三栄商会がビワの葉温灸セットを販売し始めた昭和六二年以降、利益が大きく減少し、以下のとおりの営業内容となった。

(一) 昭和六二年三月一日から昭和六三年二月末日まで

売上高 八一五一万二四三〇円

粗利 五三五八万一四八六円

棒状もぐさ売上本数 二四万〇四三六本

(二) 昭和六三年三月一日から平成元年二月末日まで

売上高 八八一九万一三九〇円

粗利 五九五〇万七八六二円

棒状もぐさ売上本数 二六万二七四一本

3  このように、被告らの不正競争行為前は一億三〇〇〇万円前後の売上、八五〇〇万円程度の粗利、四二万本前後の棒状もぐさの売上があったのに、被告らの不正競争行為により、売上は八五〇〇万円前後、粗利は五五〇〇万円前後、棒状もぐさ売上は二五万本前後にまで落ち込んでしまったのであり、原告は被告らの不正競争行為により、売上で年間四五〇〇万円、粗利で年間三〇〇〇万円程度の損害を被っている。

したがって、被告三栄商会の不正競争行為開始後の損害は、少なくとも金二〇〇〇万円を下らない。

八  被告らの故意

前記六の事情に照らせば、被告らがいずれも原告の商品の存在及びその商品表示の態様を十分知悉していたものであることは明らかで、本件不正競争行為を共謀して行ったものである。

(被告神谷に対する請求)

九  被告神谷は、昭和六一年一〇月一五日原告から退職するにあたり、真実はその気がないのに、原告代表者濱田久美子の知人に対し、同月四日から同月六日にかけて数度にわたり、もう枇杷葉温圧に関する営業はやらない旨明言し、同月七日公認会計士帆足誠を介して、原告に対し一六〇〇万円の退職金を要求した。

原告代表者濱田久美子は、原告には退職金支払いの規定も慣習もなく、被告神谷が会社乗っ取りをはかった経緯等から退職金支給は不要と考えていたが、同被告が競業行為を行わないものと誤信してその要求に応じ退職金として一六〇〇万円を支払う合意をし、同年一〇月一六日頃六〇〇万円、同月から昭和六二年三月まで毎月末日一〇〇万円の合計一二〇〇万円を支払ったところで、被告神谷の不正競争行為が発覚したので残額の支払いを停止した。

一〇  右退職金支払いの合意は、被告神谷の詐欺によるものであり、原告は本件訴状の被告神谷に対する送達をもって被告神谷に対し、前記退職金支払いの合意を取り消す旨の意思表示をした。

一一  仮に、被告神谷の前記行為が詐欺に当たらないとしても、前記のように原告代表者を誤信させて一二〇〇万円の支払いをさせ、原告に同額の損害を与えた行為は、不法行為に該当する。

一二  よって、原告は、被告三栄商会及びあなたと健康社に対し、不正競争防止法一条一項一号により不正競争行為の差止めを、被告らに対し、不正競争防止法一条の二第一項、または民法七〇九条、七一九条により右不正競争行為によって生じた損害の一部である金二〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを、被告神谷に対し、契約の取消しによる不当利得返還請求として、仮にそれが認められないとしても、不法行為に基づく損害賠償として金一二〇〇万円及びこれに対する金銭の交付又は不法行為の最終日である昭和六二年三月末日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、それぞれ求める。

第三  請求原因に対する認否及び主張 (被告三栄商会及び被告あなたと健康社)

一  請求原因一の1ないし3は認める。4は知らない。

二  請求原因二の1、3は認め、2、4は知らない。

三  請求原因三の1は、原告が従前「枇杷葉温圧」の名称を使用してきたことを 認め、周知性を獲得したとの主張は争う。同2は、争う。

「枇杷葉温圧」は、枇杷の葉とお灸、指圧の組み合わせにより各種の疾病を治癒させる民間療法を称するものとして古くから民間に伝わり使用されてきたものであり、一般名称ないし品質表示にすぎないから、原告が原告商品表示と主張する表示はすべて普通名称であり自他商品識別能力がなく商品表示とはいえない。これが商品の名称として使用されても、それは枇杷の葉とお灸の組み合わせである枇杷葉温圧療法に使用される商品の内容、機能等を一般的説明的に表現したものにすぎないのであって、やはり普通名称であり、原告商品表示により周知性を獲得しているということはできない。

四  請求原因四1、2は認める。3は否認する。

五  請求原因五の1ないし3は争う。仮に原告商品表示が特別顕著性を取得して、周知になっているとしても、その類似の範囲は極めて狭いものである。そして被告商品表示の「ビワの葉温灸」に含まれる「温灸」と、原告商品表示の「枇杷葉温圧」に含まれる「温圧」とは意味が異なり、両者は類似していない。

しかも原告商品である枇杷葉温圧セットと被告商品であるビワの葉温灸セットとでは箱の表面のデザインが異なり、また右各商品は店頭で消費者が宣伝広告等の影響を受けて簡単に選択して購入するものではなく、指導講習を受けその技法を習得して購入するのが一般であるから、この点からも両表示が類似しているものということはできず、混同も生じない。

六  請求原因六は、被告神谷が原告を退職したこと、被告神谷が枇杷葉温圧本舗株式会社を設立したが、営業を中止したこと、被告三栄商会が設立されたことを認め、その余は否認する。被告神谷が原告を辞任したのは、原告代表者濱田久美子との不和が原因であり、被告あなたと健康社が「ビワの葉温灸」の紹介をして、被告三栄商会がこれを製造販売するようになったのは、優れた右療法について需要者から要望があったためである。

また被告神谷が退職時に原告の顧客名簿を持出したことはない。被告神谷は、原告代表者濱田久美子に取引先に出す挨拶状のためと断り、それまで親交のあった取引先の名簿をコピーをしたもので、一般需要者についての名簿は持ち出していない。

七  請求原因七の1ないし3は知らない。

八  請求原因八、一二は争う。

第四  請求原因に対する認否及び主張 (被告神谷)

一  請求原因一の1ないし4は認める。

二  請求原因二ないし同八については、被告三栄商会及び被告あなたと健康社の認否及び主張と同旨。

三  請求原因九は、被告神谷が昭和六一年一〇月一五日原告を退職したこと、その頃原告代表者濱田久美子と被告神谷の間で退職金として一六〇〇万円を支払う合意をしたこと、同年一〇月一六日頃から昭和六二年三月までの間に、被告神谷が原告から合計一二〇〇万円を退職金として受領したことを認め、その余は否認する。

原告代表者濱田久美子との間で、被告神谷が退職金を受領する旨の合意が成立したとき、被告神谷が原告と競業する行為はしない旨約したことはなく、また周囲の者にもそのようなことは述べたこともなく、退職後、原告の営業と競合する行為をしないことが、右退職金支給の合意の前提となっていたものではない。

原告は、昭和五五年に取締役濱田侃が退職した際一〇〇〇万円の退職金を支給した前例がある。

被告神谷は、昭和五一年ころ、濱田夫妻に懇願され当時の勤務先を退職して、有限会社枇杷葉温圧に入社し、当時種々経営上の問題があった同社の経営を立ち直らせたものであり、これを引き継いだ原告を含め、約一〇年間の期間、有限会社ないし株式会社枇杷葉温圧の役員として、経営の中心として尽力してきたものであり、右退職金額は妥当なものである。

四  請求原因一〇ないし一二は争う。

第五  抗弁(被告ら)

被告商品表示である「ビワの葉温灸」は、「ビワの葉」と「温灸」を組み合わせた普通名称である。したがって、被告三栄商会は、その商品である枇杷の葉を使用した温灸のための用具のセットに、その普通名称を、普通に使用される方法で使用しているものであるから、不正競争防止法二条一項一号に該当し、同法一条及び一条の二の適用を受けない。

第六  抗弁に対する認否

抗弁は否認する。

第七  証拠関係は、本件記録中の証拠に関する目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求の原因一の1ないし3は当事者間に争いがなく、同4は、原告と被告神谷との間では争いがなく、原告と被告三栄商会及び被告あなたと健康社との間では被告神谷本人尋問の結果によってこれを認める。

二1  枇杷葉温圧療法が、枇杷の葉を快癒点(ツボ)に当てて、その上から着火した棒状のもぐさを押し当てることにより、枇杷の葉とお灸の組み合わせによって、体の自然治癒力を高めて各種の疾病を治癒させる民間療法であることは当事者間に争いがない。

2  原告代表者尋問の結果並びにこれにより真正に成立したものと認められる甲第一二号証及び甲第五五号証によれば、原告代表者濱田久美子の元の夫である濱田侃の父濱田観間は寺院の出身であるところ、寺に伝わる秘法として、檀家や知人に好意的に、「びわ温灸」と称して枇杷葉温圧療法を施していたが、はり・灸の免許を取得してからは患者に同療法を施していたこと、濱田侃、濱田久美子夫妻はピアノ教師を生業としていたが、そのかたわら昭和三九年頃から、父と共に「びわ温灸」の普及にたずさわり、昭和四九年初め頃にそれまでの「びわ温灸」を「枇杷葉温圧」と名付けたこと、昭和四九年二月二一日付け「東京スポーツ」紙の全国版に、大きく枇杷葉温圧療法が紹介されたことがきっかけとなって、全国から注文が来るようになったことが認められる。

昭和五〇年八月、濱田久美子を代表取締役として、有限会社枇杷葉温圧が設立され、同社が、枇杷葉温圧療法の普及と右療法に使用する商品の販売活動を行っていたが、昭和五六年一一月に株式会社に組織変更されたのが原告であることは当事者間に争いがない。

前記請求原因一4の事実に前記甲第五五号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第二二号証、原告代表者尋問の結果、被告あなたと健康社代表者尋問の結果、被告神谷本人尋問の結果を合わせれば、被告神谷は濱田久美子の妹の夫であるが、濱田夫妻の依頼により、昭和五一年七月頃それまで勤務していた会社を退職して有限会社枇杷葉温圧に専務取締役として入社し、会社経営の経験のない濱田夫妻を補佐して社内の体制を整備し、販路の拡張に努めたこと、昭和五五年頃濱田侃の行為を巡って会社内部に紛争が生じ、被告神谷が一時退社したこともあったが、結局、濱田夫妻が別れ、濱田侃は独立して事業を行い、濱田久美子が有限会社枇杷葉温圧を引き継ぐこととなり、被告神谷も同社に戻るようになったこと、その後、昭和五六年一一月に有限会社枇杷葉温圧が株式会社に組織変更され、被告神谷が代表取締役に就任したことが認められる。

また、原告の販売する商品の主なものは、枇杷葉温圧セット(箱、棒状もぐさ一六本、消納筒、もぐさの枕、ローソク立て、布一組、紙一組及び手引書)、補充用棒状もぐさ(一五本入りと三一本入り)であることは当事者間に争いがない。

3  原告の商品の写真であることについて当事者間に争いがなく弁論の全趣旨により原告主張のとおりの撮影者、撮影年月日のものと認められる甲第一号証、原告と被告神谷との間では棒もぐさ出荷一覧表部分は成立に争いがなく、その余の部分は弁論の全趣旨によって真正に成立したものと認められ、その余の当事者間では全て弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第三九号証、前記甲第五五号証及び原告代表者尋問の結果によれば、原告の販売する商品の内枇杷葉温圧セットの外箱には別紙目録(一)(3)の表示が、内箱、消納筒、棒状もぐさ、紙には別紙目録(一)(1)の表示が、棒状もぐさの箱、ローソクの箱には別紙目録(一)(2)の表示がされていたこと、また手引書は「枇杷葉温圧の手引」と題されていて、その表紙には表題のほか「どなたにも安心して出来る家庭療法」との記載があり、その内容でも「枇杷葉温圧」が療法の名称であることが明らかにされていて、商品は「枇杷葉温圧セット」と呼ばれていることが認められる。

4  前記甲第一二号証、甲第三九号証、甲第五五号証、乙第二二号証、成立について当事者間に争いのない甲第九号証、甲第一一号証、乙第三号証、乙第二三号証ないし乙第二九号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一三号証ないし甲第二一号証、甲第五〇号証の一ないし三、甲第五一号証の一ないし一四、甲第五二号証の一ないし三、甲第五三号証の一ないし四、甲第五四号証及び原告代表者尋問、被告あなたと健康社代表者尋問、被告神谷本人尋問の各結果並びに弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。

(一)  前記のとおり、昭和四九年二月二一日付け「東京スポーツ」紙の全国版に、枇杷葉温圧療法と「枇杷葉温圧健康会」会長の濱田侃が大きく紹介された。その記事の中で「枇杷葉温圧」と呼ばれているのは枇杷葉温圧療法であった。

(二)  被告あなたと健康社の代表者五来百合子は、自己の体験から自然食、自然療法等の健康運動に関心を持ち、同社を設立し、月刊誌「あなたと健康」を発行する等の事業をしていたが、昭和五〇年頃、濱田夫妻から枇杷葉温圧療法を紹介され、自らこれを体験し、雑誌の読者にもテストをしてもらった上、その効能を信用し、「あなたと健康」昭和五二年一月号から三月号まで、同年五月号、六月号に枇杷葉温圧療法を紹介する記事を掲載するとともに、巻末のメールオーダー御案内の欄に「ビワ葉温圧療法セット」、又は「ビワの葉温圧療法セット」、「ビワの葉温圧用棒もぐさ」の通信販売を取り次ぐ旨の案内を掲載した。それらの記事や案内の中でも「枇杷葉温圧」と呼ばれているのは療法であり、棒もぐさ等の商品ではなかった。

「あなたと健康」誌は以後昭和六二年七月までメールオーダー御案内欄に「枇杷葉温圧療法セット」、「枇杷葉温圧用棒もぐさ」の取り次ぎ案内を掲載するとともに、しばしば記事中で、枇杷葉温圧療法の効能を推奨した。

(三)  濱田観冏は昭和五一年一月、啓明書房から「奇跡のビワの葉療法」という図書を出版して枇杷葉温圧療法を紹介した。

(四)  小学館発行の「女性セブン」誌の昭和五五年八月一四日・二一日合併号に四頁にわたり枇杷葉温圧療法が紹介されたが、その記事の中で「枇杷葉温圧」と呼ばれているのは療法であり、棒もぐさ等の商品ではなかった。

(五)  原告代表者であった被告神谷は、三津間正と共著で昭和五六年一二月、「ビワ葉療法の秘密」をKKロングセラーズから出版して枇杷葉温圧療法を紹介した。同書は、昭和六二年まで六五版増刷された。

(六)  学習研究社発行の「壮健ライフ」誌昭和六〇年九月号に四頁にわたり枇杷葉温圧療法が紹介されたが、その記事の中で「ビワ葉温圧」と呼ばれているのは療法であり、棒もぐさ等の商品ではなかった。

(七)  原告は、有限会社人間医学社発行で、発行部数約二万部の月刊誌「人間医学」に、昭和五五年四月頃から平成三年六月頃までほとんど毎号別紙目録(一)(5)の表示を含む広告を掲載したが、そこで枇杷葉温圧と呼ばれているのは治療法としての枇杷葉温圧療法であることが明らかであった。また、その広告中には、枇杷葉温圧セットの内容や価格の表示を含むものもあったが、商品である枇杷葉温圧セットが「枇杷葉温圧」と表示されているものはなかった。

また、原告は、国際自然医学会発行で、発行部数約一万三〇〇〇部ないし一万五〇〇〇部の月刊誌「自然医学」に、昭和五六年一月頃から平成三年六月頃まで別紙目録(一)(5)の表示を含む広告を掲載したが、そこで枇杷葉温圧と呼ばれているのは治療法としての枇杷葉温圧療法であることが明らかであった。

(八)  枇杷葉温圧療法は前記の他にも、地方新聞、健康関係の雑誌、新聞に紹介され、また、原告も別紙目録(一)(4)又は(5)の表示を含む枇杷葉温圧療法の広告を前記認定の他にも健康関係の雑誌、新聞に掲載した。

(九)  原告商品の売上は順調に伸び、棒状もぐさの売上でみると、昭和五二年には約一八万五〇〇〇本、昭和五三年は約二二万二〇〇〇本、昭和五四年は約二五万五〇〇〇本であった。

(一〇)  前記2のとおり原告の前身である有限会社枇杷葉温圧から独立した濱田侃は、別個に枇杷葉温圧療法の普及に努め、合わせて「枇杷葉温圧」の表示を付した棒もぐさや、「宗家 枇杷葉温圧」の表示を付した箱に納めた枇杷葉温圧セットを販売している。

5  右4認定の事実によれば、「枇杷葉温圧」は、枇杷の葉を快癒点(ツボ)に当てて、その上から着火した棒状のもぐさを押し当てる、枇杷の葉とお灸を組合わせた民間療法の名称として、健康運動、民間療法に関心を持つ人の間を中心に一応広く知られていること、この「枇杷葉温圧」という名称は、従前「びわ温灸」と呼んでいた療法に濱田夫妻が名付けたものであり、「枇杷葉温圧」という名称がそのように知られるようになったのは、濱田夫妻、原告(有限会社枇杷葉温圧を含む)、被告神谷、被告あなたの健康社が宣伝、広告、紹介に努めたことによるものと認められる。

しかしながら、「枇杷葉温圧」という名称が、枇杷の葉の上から着火した棒状のもぐさを押し当てるという同療法の態様を端的に表現していることを考慮すると、「枇杷葉温圧」の名称が相当広く知られているといっても、それは同療法を普通に表現した名称として知られているのであって、同業他社の商品や療法の普通名称から原告の商品を識別する表示として知られていたものと認めることはできない。

即ち、前記3認定のとおり、原告の販売する商品には別紙目録(一)の(1)ないし(3)の表示がされていたものであり、同4(九)認定のとおり別紙目録(一)(1)の表示がされた棒状もぐさが相当数販売されたものであるが、前記のとおり、枇杷葉温圧についての宣伝、広告、紹介においては「枇杷葉温圧」が療法の名称とされており、原告の販売する商品が「枇杷葉温圧」と表示されていたわけではなかったのであり、しかも、棒状もぐさを他のものと組み合わせた原告の主な商品である枇杷葉温圧セット中の手引書にも「枇杷葉温圧」が療法の名称であることが明らかにされていることを考慮すれば、前記のような別紙目録(一)の(1)ないし(3)の表示は、需要者にそれらの商品の用途が枇杷葉温圧療法であることを普通に表示したものに過ぎないと理解された場合も多いものと認められ、それらの表示が付された原告の商品が相当数販売されたことをもって「枇杷葉温圧」が原告の商品表示として自他識別力を有するものとも、周知であったものとも認めることはできない。

三  被告三栄商会が、昭和六二年頃からその製造する棒状もぐさ又は棒状もぐさと施灸用具のセットの容器、包装及びその広告に被告商品表示を使用し、右表示を使用した棒状もぐさ又は棒状もぐさと施灸用品を販売していること、被告あなたと健康社が、被告三栄商会が製造し、その容器、包装に被告商品表示を使用した棒状もぐさ又は棒状もぐさと施灸用品のセットを販売していること、同社が「あなたと健康」誌に被告商品表示を使用して右商品の広告を掲載していることは当事者間に争いがない。

原告と被告三栄商会、被告あなたと健康社との間では被告商品の写真であることについて当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨により原告主張のとおりの撮影対象、撮影者、撮影年月日のものと認められる甲第二号証、原告と被告三栄商会、被告あなたと健康社との間では成立について争いがなく、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第五号証及び甲第一〇号証によれば、被告三栄商会が製造、販売し、被告あなたと健康社が販売、広告する商品の主なものは、ビワの葉温灸セット(箱、棒状もぐさ一六本、消納筒、もぐさの枕、ローソク立て、布二枚、紙一組及び手引書)、補充用棒状もぐさ(一二本入りと二五本入り)であること、ビワの葉温灸セットの外箱には別紙目録(二)(2)の表示があるが、その直後に幾分小さ目ではあるが同様の陰付きの枠を伴う「セット」との表示がついていること、また、ビワの葉温灸セットの内箱には別紙目録(二)(一)の表示があること、ビワの葉温灸セットの棒状もぐさには「ビワの葉温灸 もぐさ」との、紙には「ビワの葉温灸紙」との表示がされていることが認められる。

四  原告商品表示と被告商品表示との類似性及び両者の誤認混同のおそれについて検討する

1  別紙目録(二)によれば、被告商品表示の要部は「ビワの葉温灸」という文字にあることは明らかである。

前記甲第五号証によれば、ビワの葉温灸とは、枇杷の葉を快癒点(ツボ)に当てて、その上から着火した棒状のもぐさを押し当てることにより、枇杷の葉とお灸の組合わせにより、体の自然治癒力を高めて各種の疾病を治癒させる民間療法であり、枇杷葉温圧療法と同じものであることが認められる。

「ビワの葉温灸」という表示のうち「ビワの葉」は枇杷の木の葉を意味することは明らかであり、成立について当事者間に争いのない乙第一一号証によれば、「温灸」とは、器具に入れたもぐさに火をつけて患部やつぼを加熱する療法を意味する普通名称として小型の国語辞典にも登載されている語であることが認められるから、「ビワの葉温灸」の語は、枇杷の葉を使った温灸療法を表す普通名称であると認められ、三のような被告商品の用途を普通名称で示しているものと認められる。

2  別紙目(一)によれば、原告商品表示の要部は「枇杷葉温圧」という文字にあることは明らかである。

「枇杷葉温圧」が原告の商品表示として自他識別力を有するものとも、周知であったものとも認められないことは前記二に判断したとおりである。

3  右1及び2に認定した点に考慮しつつ、別紙目録(一)の原告商品表示と別紙目録(二)の被告商品表示とを対比すると、両者はその外観において類似するものとは認められない。

また、原告商品表示の要部から生ずる「ビワバオンアツ」との称呼と、被告商品表示の要部から生ずる「ビワノハオンキュウ」との称呼とも類似するものとは認められない。

次に、原告商品表示はその商品の用途である枇杷葉温圧療法の観念を有し、被告商品表示はその商品の用途であるビワの葉温灸療法の観念を有するところ、枇杷葉温圧療法とビワの葉温灸療法は同一のものであることは前記のとおりであるから、原告商品表示の有する観念と被告商品表示の有する観念は同一であるといわなければならない。

しかし、「枇杷葉温圧」という表示から生ずる観念である枇杷葉温圧療法は、原告商品の用途を普通に表現した名称であり、この観念には自他識別力がなく、被告商品表示である「ビワの葉温灸」から生ずる観念であるビワの葉温灸療法も被告商品の用途の普通名称であってこの観念には自他識別力がないものである。そして、二つの商品表示の自他識別力のある部分が同一であるか類似であることによって他人の商品と混同を生ずるものであるから、本件のように、商品表示から生じる自他識別力のない観念が同一であっても、そのことによって外観も称呼も類似しない原告商品表示と被告商品表示とが同一であるとか類似であるということはできないものと認めるのが相当である。

したがって、原告商品表示と被告商品表示とは同一であるとも類似であるとも認められず、原告商品と被告商品との混同が生ずるものとは認められない。

五  以上のとおり、「枇杷葉温圧」が原告の商品表示として自他識別力を有するものとも、周知であったものとも認められず、また、原告商品表示と被告商品表示とは同一であるとも類似であるとも認められず、原告商品と被告商品との混同が生ずるものとは認められないから、その余の点について検討するまでもなく、不正競争防止法に基づく原告の請求は理由がない。

更に、被告商品表示が原告商品表示に類似しているとは認められないから、その余の点について検討するまでもなく、被告商品表示の使用をもって被告等の不法行為とも認められず、被告らに対する民法七〇九条、七一九条に基づく請求も理由がない。

六  次に、被告神谷に対する支払済退職金に関する不当利得返還請求及び不法行為による損害賠償請求について判断する。

1  請求原因九のうち、被告神谷が、昭和六一年一〇月一五日原告を退職したこと、その頃原告代表者濱田久美子と被告神谷との間に、退職金として一六〇〇万円を支払う旨の合意が成立し、これに基づき同年一〇月一六日頃から昭和六二年三月までの間に、原告から被告神谷に対し退職金として合計一二〇〇万円が支払われたことは原告と被告神谷との間に争いがない。

2  原告は、右の退職金支払いの合意に当たっては、被告神谷が原告と競業行為を行わない旨を明言し、そのため原告代表者濱田久美子はその旨誤信して、右合意をしたものである旨主張するが、前記甲第五五号証及び原告代表者尋問の結果によれば、濱田久美子は、被告神谷から直接に競業行為をしない旨言われたり、被告神谷と直接にその趣旨の合意をしたことはなく、退職金支払いの合意について濱田久美子と被告神谷の仲介をした公認会計士帆足からもそのようなことは言われていないことが認められ、また、右証拠中には、濱田が被告神谷が競業行為を行うつもりがないと思うようになったのは、被告神谷が原告から手を引くことが確定的になった直後頃、村上精三弁護士から「神谷はもう枇杷葉はやらないといっている」と教えられたり、もぐさの製造元の大阿久邦松から「神谷からもぐさ一万本の注文を受けていたが、もうやらないから不要になったという連絡があった。」と言ってきたことや、被告神谷の妻である神谷妙子が、同人や濱田久美子の母である太田春や妹の中川和子に、「千駄ケ谷なんかうちがやればいちころよ、だけどやらないわよ」と言っていたということを聞いたためである旨の部分がある。

しかし被告神谷は、その本人尋問において、帆足公認会計士や村上弁護士に原告に戻る意思はない旨言ったのみで、競業行為をしないと言ったことはなく、特に退職金の額を認める話の中で競業行為が話題になったことはない旨陳述していること、また、被告神谷が濱田久美子を欺岡して退職金支払いの合意をさせる意図であったとすれば、大阿久邦松、太田春、中川和子をして濱田に対し前記のようなことを告げさせるのは極めて迂遠で不自然な方法であることに照らすと、前記濱田久美子において被告神谷が原告に戻る意思がない旨の被告神谷の言を曲解したものとの疑いを払拭することができず、結局、前記証拠をもって被告神谷が濱田久美子を欺岡し退職金支払いの合意をする意図又は退職金を騙取する意図をもって、原告と競業行為をしない旨を前記の者に告げたと認めることはできない。

他に、被告神谷の原告に対する欺罔行為を認めるに足りる証拠はない。

3  そうしてみると、被告神谷と原告との間の退職金支払いの合意が詐欺に基づくものとは認められず、また原告から被告神谷に対する退職金の支払いが被告神谷の不法行為に基づくものとも認められないから、原告の被告神谷に対する退職金の返還請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。

七  よって、原告の請求はすべて理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 宍戸充 裁判官 櫻林正己)

別紙

目録(一)

<省略>

別紙

目録(二)

<省略>

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